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海 2


「まさか、その気持ち悪いのをとってこいと言っているのですか?」


アスターは正気かこいつ、といった顔をする。


ルネとシオンはその言葉に同意するように激しく頷く。


アイリーンだけは「ご主人様が言うならどんなに気持ち悪い見た目でも、きっと美味しいはずだ」と信じて疑わない瞳をする。


水の妖精と言っても海の妖精ではない。


海の生物には詳しくないため、アイリーンは紙に描かれた気持ち悪い生物を見たとき一瞬魔物かと勘違いしてしまった。


「そうよ。いやなら無理にとは言わないわ。魚だけ取ってくればいいわ。これは私とアイリーンで食べるから」


すっごい美味しいのに、あぁ、もったいないな、と馬鹿にするような顔を嫌な顔をする3人に向ける。


「あぁ、今まで食べてきたのとはまた違った美味しさがあるのに食べられないなんて……」


残念ね、と言い終わる前に3人は「お任せください!大量に取ってきます!」と叫んで海の中へと我先にと入っていく。


「ハハッ。それでいいのよ」


3人の態度の変わりように満足して気分がよくなる。


「ご主人様。私は何をすればいいでしょうか?」


アイリーンが尋ねる。


「それじゃあ、アイリーンには普通の魚を取ってきてもらうかしら。量は私たちが食べるぶんだけでいいわ。頼んでもいいかしら」


断らないとわかっていてそう問いかける。


「はい。お任せください」


アイリーンは自分だけ他のことを頼まれたのが嬉しくて、張り切って魚を取ろうと海へと入っていく。


食べるぶんだけでいいと言われたのに、気づけば大量に取ってしまったため、あとで後悔することになった。


「うん。頼んだよ」


私は笑顔で見送り、アイリーンの気配が遠くなるのを確認すると横になる。


「さてと、しばらく休むか」


木の下に移動して食材が集まるまでの間、影で休むことにした。




1時間後。


'このクソ女!俺たちには食材集めさせたくせに、自分は呑気に昼寝など!?ふざけんなよ!もう許せん!今日という今日は後悔させてやる!'


ルネとシオンは海から出て、言われた通り捕まえた生き物を自慢しようと海から出て陸に上がると、気持ちよさそうに不細工な顔で寝ている主人を見つけ殺意が湧いた。


アスターに関しては'うん。いつも通り不細工だ'と安心して笑ってしまう。


少ししてアイリーンが大量の魚を水魔法で捕まえて出てくる。


その光景をみたルネとシオンは私にしようとしていたことを一旦中止して、自分もそれくらい余裕で捕まえられると挑発した。


アイリーンはフッと鼻で笑った後、その喧嘩を買うことにし、口喧嘩が始まる。


もし、ここに私がいなければ3人は魔法で喧嘩をしていただろう。




'……うるせーな'


海の中で魚たちと泳いでいると争っている声が聞こえ、急に視界が歪みだした。


聞こえてきた声はよく知っている声だった。


すぐにこれが夢でアイリーン、ルネ、シオンの3人が現実世界で喧嘩しているのだとわかるが、起きたくなくて夢の中にいようとするが、煩すぎて無理矢理夢の中から叩き起こされた。


クソが!と思いながら目を開けると、小さい子供と2匹の鳥が遊んでいるだけにしか見えなかったが、何を言っているかわかると「ギャップがやばいな」と思った。


遠くから見れば美少年が鳥と戯れているだけだが、近くで内容を聞きながら見ると美少年の顔を被った悪魔が黒い鳥と一緒に水の塊に怒っている姿は命の危険を感じるくらい恐ろしいものだ。


「長生きすると悪口の種類が豊富だな」


命の危険を普通なら感じるが、3人が私を殺すことはできないので慌てることなく呑気に変な感想が口から出る。


「起きて最初に言うのがそれですか?頭みてもらった方がいいのでは?」


ただの感想を言っただけでひどい言われようだ。


アスター自身は今のを悪口と思ってないのか、いつもと変わらない表情だ。


もし悪口だとわかった上での発言なら、笑いを堪えている表情だったはずなので、今回はそういう意図はないのだろう。


「私の頭が正常になったら困るんじゃない?」


訳:美味しい料理がこれ以上食べられなくなるかもよ。異常だからこそあんた達にない発想力があるのよ。


「確かにその通りですね。お嬢様は今が一番魅力的ですね」


訳:これからも頭がおかしいままでいてください。


「でしょう。私もそう思うわ」


訳:頭しばかれたいのか?


笑顔で会話をするも実際は罵り合っていた。


「それより早く止めてください。私は早く美味しいものが食べたいです」


妖精王、悪魔の王、冬の王の覇気が漏れはじめ空気が重くなる。


アスターは自分では止められないため早くどうにかしろと言う。


「……」


え?あれを私が?それはあんたの仕事でしょう?と目で訴えかけると即「嫌です」と断られる。


「止めてくれたらあんたの量倍にするわ」


「お嬢様の手を煩わせるわけにはいきません。彼らのことは私にお任せください」


訳:絶対倍にしろよ!


笑顔なのに睨まれてる気がするが私は気にせず「ありがとう」とお礼を言ってから、また目を閉じる眠りにつく。


アスターが入ればさらに喧嘩になるとわかっていたからだ。


その予想は当たり、結局口喧嘩が終わったのはそこからさらに1時間後だった。





「やっと終わったか」


うるさかったのが急に静かになり目を開けると4人がどこにもいない。


少し前まで声が聞こえていたため、いたのは間違いない。


一瞬でどこにいったのかと周囲を見渡して4人を探す。


「ん?本当にどこいった……!?」


言い終わると上から何かが物凄いスピードで落ちてきた。


そのせいで全身に砂がかかり、砂の化け物に一緒で変身してしまう。


目元の砂だけ払い落とし何が落ちたのかと確認するため目を開けると、顔は魚、顔からしたは人間のようだが肌の色が光る水色。


全身テカテカの魚人がそこにいた。


'うわ!キッモ!'


私は思わずそう思った。


「うわ!キッモ!」


魚人が私をみながら言う。


'ん?もしかして、いま私を見て言ったのかな?こいつ?'


顔を歪める魚人と目が合うと「うわ!目が腐る!」と言って魚人は自分の目を手で隠す。


'このクソキモ生物が!こっちは心の中で留めておいてやったと言うのに!クソッタレ!そっちがその気なら容赦しねーからな!'


元の世界では美人だと、いろんな人から褒められていたため、例え今の容姿が不細工でも、人間ではない生物に罵られるのは許せず、魚人の心をへし折ると決める。


「はぁ?目が腐る?自分の顔見てから言えや!テカテカして気持ち悪い体に、魚のくせに表情がコロコロ変わりやがって!こっちの方が目が腐るわ!クソが!」


「それはこっちのセルフじゃ!ボケ!お前の方が全身砂まみれで、髪はワカメのように気持ち悪くうねって、目は鋭く、悪魔のような顔つきのくせに!鏡を見るのはそっちだろ!」


「はぁ?ふざけんな!誰のせいでこうなったと思ってんのよ!あんたが上から降ってきたからこうなったんでしょう!人に迷惑をかけたくせに、謝罪するどころか化け物呼ばわり?いい度胸じゃない!こっちにきな!ボコボコにしてやる!」


「上等だ!俺に喧嘩を売ったこと後悔させてやる!」


「負けた方が化け物!異論ないわね!」


「ああ!ない!」


あっという間に話が進み力勝負で不細工を決めることになった。


2人は自分が負けるはずないと思っているので、力で勝負する方法に納得する。


「「お前の方が絶対化け物だ!」」


2人共、そう叫びながら互いの顔をぶん殴る。




互いにいま自分の姿がどうなっているかわからないため、相手の方が化け物だと信じて疑わなかった。


もし、ここに鏡があり自分の姿を見ていれば間違いなく悲鳴を上げ、この姿は誰がどう見ても化け物だと認めていただろう。

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