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氷販売


3日後、王宮。



「陛下。アスター卿がスカーレット令嬢の遣いで手紙を届けに参りました」


部下の一人が国王にアスターが来たことを知らせる。


「なに?スカーレット令嬢からだと?」


国王は少し考えたのち「連れてこい」と命令する。


一介の令嬢が国王に手紙をよこすなど普通ならあり得ないことだし、許されないが、甘味料のこともあり、その件かもしれないと思い特別に今回は許すことにした。




「陛下。アスター卿を連れてきました」


部下は扉を3回叩き、話しかける。


「入れ」


国王の許可が出て、アスターは部屋の中へと入る。


「それで、今回はどんな用で参ったのだ?貴様も知っているのだろう?」


「はい。氷を手に入れたご報告を陛下にお知らせするよう申しつかりました」


アスターは淡々と答える。


「なっ!氷だと!?」


国王は玉座が勢いよく立ち上がる。


「はい。氷でございます」


「それは真か!?」


「はい。詳しいことは手紙に書いてあります」


「あ、ああ。そうだったな」


国王は氷という言葉を聞いて手紙の存在を忘れていたが、今アスターに言われて思い出す。


封を切り内容を確認する。



『偉大なる国王陛下。このたび、偶然雪男と知り合いになり契約することになりました……』



偶然?そこまで読んで国王は絶対に嘘だなと思う。


いや、今はそこは重要ではないと言い聞かせ続きを読む。



『私が契約した雪男は普通の雪男ではなく、とても特別な雪男でした。なんと、その雪男が作る氷はどれだけ時間が経っても溶けないのです……』



「氷が溶けないだと!?」


国王は驚きのあまり読んでいる途中に大声を出す。


'氷が溶けない?'


近くにいた家臣達は一体あの手紙に何が書かれてあるのか気になって仕方ない。


早く内容を教えてくれ、と思う。



『もちろん、この氷は普通の氷でございます。決して怪しい氷ではありません。私が契約した雪男が特別なだけでございます。そのお陰か、特別な氷ができただけです』



'特別という言葉が多いな。からかってるのか?'


国王はあまりにも特別という言葉が使われていて馬鹿にされている気がしてくる。



『ですが、氷が必要な夏の季節は私の雪男には耐えがたいものなのです。あまり作ることができませんが、私の雪男が作る氷は全く溶けないので問題はありません』


私の雪男、と強調しすぎだなと国王は私が何を言いたいのかすぐに察する。


それと、また氷が溶けないことを言ったと思う。


このあとの続きが手に取るようにわかり、国王は頭が痛くなり、額を抑える。



『あまり数はありませんが、ぜひとも国王陛下にお売りしたいと思っております。100kgを金貨200枚でどうでしょうか』



「金貨200枚だと!?」


国王はあまりの安さに驚きを隠せない。


今までは同じ量で金貨350枚した。


くるまでに氷は溶けるので実際は、3分の2の量があるか、ないかくらいの量しかない。


もし、令嬢の言っていることが本当なら今までの倍の量を頼んだとしても安いものだ。


国王はもう氷をスカーレット家から買う以外の選択肢しかなかった。


'200枚?今、国王陛下はそうおっしゃったのか?'


アスターと周囲の貴族はその言葉に反応するが、それぞれ違う反応をした。


アスターは「金貨200枚ってどんな無茶な要求をしたんだ」と不安になり、貴族達は「まさか、金貨200枚で溶けない氷を手に入れられるのか?」と期待した目で国王の言葉を待っていた。


国王が毎年頼む量を知っていたので、100kgが金貨200枚で手に入れられるとすぐに推測できた。


「アスター卿」


「はい。陛下」


国王の声が強張っている気がして、怒っているのかと思い、どんな恐ろしい罰が下されるのかと想像すると胃が痛くなる。


「スカーレット嬢に返事を今すぐ書く。すぐに届けてくれるな」


「畏まりました」


予想した未来と真逆でアスターは驚いたが、スカーレット家の騎士として無様な姿は見せられないため平静を装った。


それから、すぐ国王は返事を書き「頼んだぞ」と自らにアスターに手紙を預けた。


アスターが去ると、貴族達は手紙の内容がなんだったのか国王の言葉を待った。


新たな甘味料とジャムを流行らせた令嬢からの手紙気にならないはずなどなかった。


だが他人の手紙の内容を教えてくれなど、そんな無礼なこと言えるはずもなく、目で訴えることしかできない。


国王は貴族達に手紙の内容を教えるか悩んだが、結局教えることにした。


ここで氷のことを内緒にしたとしても、彼女のことだ、どうせ他の者達にも売る計画を立てているはずだと予想でき、それなら内緒にする意味がない。


ただ、自分の好感度が下がるだけ。


そんなことになるくらいなら話したほうが得策。


それに、今年はすでに例年の倍200kgの氷を手に入れられた。


話したところでこちらが損をすることは何一つない。


国王は今すぐスカーレット家に手紙を出したい貴族達の顔を見てほくそ笑むが、まだ会議は終わってないので終わらす気はなかった。


次の日には、スカーレット嬢が雪男と契約したことが貴族達の中で噂になった。


もちろん氷が溶けないということも一緒に。


その噂を聞いた貴族達は、ぜひ自分達に売ってくれと手紙を書き送った。




一週間後。


アスターが帰ってきた。


私は国王からの返事に満足していると、次々に私宛の手紙が届き困惑した。


机から溢れ出る手紙の量に私はアスターを見る。


「あんた。何かした?」


「いえ。私はなにもしていません」


「私はってことは誰がしたか知ってるのね」


「……はい」


「説明して」


「はい……」


アスターは王宮であったことを説明する。


自分が去ったあとのことはわからないが、と前置きしてからそのあとのことも予測して話した。


「なるほどね。よくやったわ。これでわざわざこっちから売り出す必要がなくなったわ。追加で運搬料金も請求できる。褒美に氷のスイーツ、かき氷を食べてきていいわ。オリバーに言えば作ってもらえるかいってきなさい」


「ありがとうございます。お嬢様」


アスターはそういうと急いでオリバーの元へと向かう。


かき氷を食べる前に王宮に行ったためアスターだけ、まだ食べれていなかった。


「さてと、私は貴族たちへの返事を書きますか。とりあえずまずは運搬料金をどれだけぼったくれるか考えないとな」


手紙を書きながら地図を確認しする。


距離と重さで料金をもらう。


そこまで考えで私は運搬業者が我が領地にいないことに気づいた。


今すぐ領民に募集したとしても、氷を運ぶとなったら腕の立つ者でなければ駄目だ。


盗賊たちに間違いなく襲われ奪われる。


そうなると、運べる人は限られる。


私は貴族たちの返事を全て書き終わってから、騎士とダークエルフの一部を集め、臨時運搬業者をやってもらうことにした。


残りのものは元々命じていた仕事を抜けた者たちの分までやってもらう。

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