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了承


「ありがとうございます。お父様。それでお願いがあるんですが……」


「なんだ?」


「陛下に氷を売る許可をください」


「もちろんだ。好きなだけ売りなさい」


陛下から取れるだけ取れ、と笑う。


「ありがとうございます。お父様」


「それで、次の話だが……」


男爵は咳払いをし、話しを最初に戻す。


「はい。エルフとダークエルフ達のことですよね」


「そうだ。何故、彼らが我が領民になることになったのか教えてくれ」


「そうですよね。簡単に言うとお金になるからです」


「金に……?」


「はい」


「なら、許可しよう」


男爵の目が変わる。


「ありがとうございます!」


「それで、どう金になるのだ?」


「エルフ達には畑仕事をしてもらいます。彼ら以上に作物を上手に育てれる者はいないでしょう。間違いなく失敗することはありません。来年には大量の作物が収穫できます」


「なるほど、確かにエルフ達ならあの荒地を畑に変えることができるだろうな」


自分達だけでは来年に作物を収穫できない。


現にまだ半分の荒地を綺麗にできていない。


「はい」


「なら、ダークエルフ達は?」


男爵は彼らはどんな金に変わるのかと期待した目で私を見る。


「彼らは丁度、エルフ達と戦争していたのでついでに連れてきただけですね。まぁ、でも狩りは上手ですし、戦闘力も申し分ありません」


「そうか……」


男爵は悩む。


ダークエルフはエルフと違って人間に有効的ではない。


あまりいい噂を聞かないから悪いイメージしかない。


金になるからと言って本当に迎え入れてもいいのか判断がつかない。


「それに何より、エルフもダークエルフも食と住さえ与えれば問題ありません。住といっても森でいいので家を作る必要もありません。何より給料を払わなくていいので、タダ働きしてくれます」


「認めよう。彼らも今日から私達の大事な領民だ」


給料を払わなくていい、タダ働き、という言葉を聞いた瞬間、男爵はダークエルフも領民として認めることにした。


「ありがとうございます。さっそく彼らに知らせてきますね」


「ああ。頼んだぞ」


「はい。お任せください」


そう言うと私は部屋を出て、まずダークエルフ達の元へと向かう。


「金か……」


男爵は全員出ていくとそう呟く。


「今度はいくら陛下からぶんどるつもりなのだろうか」


国王に氷を売る許可を出した瞬間、ローズの顔が恐ろしくなった時のことを思い出す。


「それにしても、本当に全く溶けないな。この氷は」


部屋中を埋め尽くす氷を見て男爵はニヤつく。


シオンさえいれば、働かなくてもどうにかなる。


夏だけ氷を国中に売ると仮定して考え収益を予想すると、余裕で10年分の売り上げを超える気がする。


その事実に頭が痛くなるが、嬉しさの方が勝り狂ったように声を出して男爵は笑った。





「主人様」


ウィンターが私に気づく。


他のダークエルフ達もその声で私に気づいた。


ダークエルフ達は許可を貰えたのか気になり、私の言葉を待つ。


「お父様から許可を貰えたわ。みんな。今日からよろしくね」


私がそう言うと歓声が上がった。


「ありがとうございます。これから誠心誠意、お嬢様に尽くすことを誓います」


族長が代表してそう言うが、口元の食べかすがついているのを見て、絶対料理が美味しすぎてまた食べたいからそう言っているのだとすぐわかる。


だが、悪いことではない。


美味しい料理を与え続けさえすれば、彼らは私を裏切ることは決してない。


「そう。期待してるわ。そういえば、まだ族長さんの名前聞いていなかったわね。教えてくれるからしら?」


「ランタナでございます。さん、はいりません。ランタナと呼び捨てしてください」


「わかった。ランタナ」




ダークエルフ達の元を離れると、今度はエルフ達がいるところへと向かう。


彼らにも許可をもらったことを教えなければならない。


遠いな。


ここ数日歩きばっかで疲れた。


もう歩きたくない。


そう思うが、イメージのためにも自分から会いにいがなければならず、重たい足をなんとか一歩、一歩、少しずつ前に向かっていく。


「……やっと、ついた」


疲れすぎて眠たくなる。


瞼がくっつきそうだ。


'お嬢様。すっごい不細工な顔してるな'


眠気と戦っているローズを見て、アスターは「うん、いつも通りだ」と頷き、大して何も思わずそばにいた。


もちろん、主人公であるアスターの顔は疲れなど微塵も感じさせないほどイケメンだ。


「……エルフ達はどこに?」


私はエルフ達の姿が見当たらず周囲を見渡す。


少ししてオリバーがいないことにも気づく。


どこにいったんだ?


見える範囲にはいないので近くにいた領民に声をかけ、彼らがどこにいる尋ねる。


「あ、オリバー様達なら向こうに行きましたよ」


「向こう?」


領民の指差した方向を見る。


「わかった。ありがとう」


私はお礼を言ってその場を離れる。




「オリバー」


「お嬢様」


「どう?彼らは?」


エルフ達はちゃんと言うことを聞いといるか尋ねる。


「とても素晴らしいです。さすがエルフとしか言いようがありません。我々が戸惑って中々進まなかった土を耕す作業は、彼らにとってはできて当然なのか、あっという間にほぼ終わりを迎えています」


オリバーはエルフ達の働きぶりに感心した。


「そう。なら、人間は石と草刈りを担当し、土の耕しはエルフにやってもらいましょう。野菜を植えるのは全員で。それでいい?」


「わかりました。それで、植える野菜は何にしますか?」


「それはエルフ達と話してから決めるわ。何ができて、何ができないか。専門家に聞いてから決めないとね」


「……そうですね」


オリバーはローズの顔を見て嫌な予感がした。


'エルフの皆さん。お気の毒に……'


エルフ達のこき使われる姿が簡単に想像でき同情する。


「とりあえず、族長様と話してくれるよ。お父様から許可をもらえたから、今日から領民になったって教えないといけないし」


「エビネ様なら、あそこにいます」


「ありがとう。言ってくるわ」


私はオリバーの視線の先にいるエビネを見てそう言う。


'エルフの族長エビネって言うんだ。知らなかった。そういえば、私名前聞いてなかったな……'


あとで全員の名前をちゃんと聞かないとな、と聞かなかったことを反省する。


「族長様」


オリバーから名前を聞いたから知っているが、私は聞いていないからいきなり名前で呼んだら驚くかと思って聞くまでは今まで通り呼ぶことにした。


エルフの族長にタメ口呼び捨てをしないのは、一応対等な立場で契約をしたからだ。


ダークエルフ達には悪いが、これはエルフの族長が自らそうしなくていいと言わない限りやめるつもりはない。


「お嬢様」


エビネは私に声をかけられ急いで近づいてくる。


「お父様から許可をもらいました。今からエルフの皆さんはスカーレット家の領民となりました。改めて、これからよろしくお願いしますね」


私は手を差し出す。


「はい。こちらこそよろしくお願いします」


エビネは私の手を掴み、しっかりと握る。


「そういえば、まだ名前を聞いていませんでした。教えてもらえますか?」


「これは失礼しました。もちろんです。儂はエビネと申します。エビネとお呼びください」


「わかりました。エビネと呼びます」


言われた通り呼び捨てで呼ぶ。


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