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食事


「じゃあ、アスター。あんたがこれら全部切ってね」


玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、長芋を指さす。


「……!」


アスターは「え?俺が?」という顔をする。


私は頷き「そう。俺が」と顔で返事をする。


「わかりました。どう切ればよろしいのですか?」


アスターは諦めて野菜を切るため包丁をもつ。


「えっとね、にんじんはこうで……じゃがいもはこう……玉ねぎはこうで……長芋はこう……わかった?」


にんじんと玉ねぎは細切り、じゃがいもはいつも通り8等分のくし形、長芋は半月切りにする。


「はい」


アスターは見本を見ながら大量の野菜達を物凄いスピードで切っていく。


「次にアイリーン」


「はい。ご主人様」


ようやく自分の出番かと喜ぶ。


「アイリーンはアスターが切った野菜達を洗ってくれる」


「はい。お任せください」


アイリーンはそう言うとアスターが切った野菜達を水を発生させ洗っていく。


「ルネとシオン。あんた達二人は私と一緒に衣を作りましょうか」


「はい」


シオンはまさか、自分も参加させられるとは思わず驚くも、逆らえるはずもなく素直に従う。


ルネは「俺は食べる専門なのに」とぶつぶつ文句を言いながら手伝いをする。


まず大きいボールを二つ用意する。


大量に作るので、小麦粉と片栗粉を沢山入れる。


その後に水を入れて混ぜる。


水はアイリーンからもらった。


衣を作り終えると、一つにはかき揚げを作るためにんじんと玉ねぎを入れる。


もう一つは山菜と長芋の天ぷらを作るようにするので順番に入れいく。


かき揚げをシオンに、山菜と長芋はルネにやらす。


アスターとアイリーンには衣をつけたものを揚げていってもらう。


全て揚げ終わると最後にじゃがいも揚げてフライドポテトを作る。


最後に塩をまぶしたら完成だ。


「できたわね」


かき揚げ、天ぷら、フライドポテトのいい匂いが皆の食欲をそそる。


皿に装ってから食べる。


「労働の後のご飯は美味しいわ」


私がそう言うとアスターとルネとシオンは「いや、お嬢様(おまえ)は何もしてなかったじゃん!何言ってんだ!」と心の中で突っ込む。


声に出せば料理を没収される恐れがあるので口には料理を詰め込む。


グゥー。ギュルギュルギュー。


料理を食べ始めから5分。


ずっとお腹のなる音が聞こえる。


最初は無視していたが、煩すぎて腹が立つ。


「ちょっと!五月蝿いわよ!静かにしなさい」


正座座りをしてヨダレを垂らしながら料理に釘付けのダークエルフ達に文句を言う。


「……」


ダークエルフ達は無言で訴えてくる。


我々も食べたいです、と。


それに私は笑みでこう語りかける。


「ふざけんてんのか!このクソヤロー共!」と。


ダークエルフ達はあまりにも怖い黒い笑みに何も言えずに下を向く。


だが、このままでは駄目だと思った族長が殺される覚悟で文句を言う。


主人(あるじ)様。我々にもその料理を食べらせてください」


「やだ」


「何故ですか?」


自分達もエルフ達同様に主人様の部下になったのに、と依怙贔屓だと平等な扱いを求める。


「何もしなかったから」


「……?」


族長は理解できないのか首を傾げる。


「エルフ達は食材を提供し、私の部下達は料理を作った。あんた達は?」


「……」


そう言われれば何も言い返せない。


「働かざる者は食うべからず、と言う言葉があるわ」


私は有名な言葉を言うも、この世界では馴染みがないのか全員頭の上にハテナマークを浮かべる。


まじか、と思いながら話を続ける。


「まぁ、簡単に言うと何もしない者に食べる資格はないということよ。彼らが今食べれているのはそれ相応のことをしたから。逆にあなた達は何もしなかったから食べれないの。わかる?私達の領地では働かない者は料理を食べれないのよ。その資格がないの。だから諦めなさい」


「……」


ダークエルフ達は涙を浮かべて、何もしなかった自分達を後悔する。


「それでも、どうしても食べたいっていうならこの二人にお願いしなさい」


そう言ってルネとシオンを指差す。


二人は自分達には関係ないとダークエルフ達の可哀想な姿を見ながら美味しく料理を食べていたら、急に巻き込まれて料理を食べようとして開けていた口を閉じるのを忘れて、その状態のままローズを見る。


私は二人の視線に気づきニコッと笑いかけ、こう語りかける。


「あんた達、どうする?あげる?」


二人は私の問いかけに顔を横に向け、聞こえてないフリをする。


ダークエルフ達のお腹の音と懇願する目を無視して食べ続ける。


それでも諦めようとしないダークエルフ達に「もしかして、俺のものを貰おうなんてこと思ってないよな」と二人は圧で語りかける。


悪魔の王と冬の王の圧にダークエルフ達は耐えられず、子鹿のようにプルプル体を振るませ泣きながら諦める。


'うん。やっぱね。そうなると思ってたよ'


彼らのやり取りを見て予想通りだと声に出さずに笑う。


'はぁ。笑った。笑った。おかわりし……よ……はぁ!?'


おかわり用に残していた大量の天ぷらがなくなっていて驚きを隠せない。


一体誰が?


そう思い、周囲を見渡すとアスターとアイリーンの頬がリスみたいに膨らんでいることに。


まさか……


「二人共。私のおかわり用にとってたの食べたわね。またあなた達が食べたのね」


ホットケーキのときは許したが今回は許さない。


今回も許せば、またこの二人は絶対やると確信しているから。


「……」

「……」


二人はローズの後ろに般若の顔が見え、黙って正座をし反省する。


「一週間」


それを聞いた二人は、そんな……と項垂れる。


たった一言で私の意図を察したようだ。


甘いものが大好きな二人が一週間もおやつ抜きは堪えたようだ。


それでも何とか日数を縮めようと「三日」と言おうとする。


だが私がそれより早く二週間と言おうとすると「一週間我慢します!」と宣言する。


そんな私達のやり取りをを見ていたルネは、二人の姿が愉快でゲラゲラと笑う。


暫く放っておいたが、なかなか笑いが止まらないので右手でルネの頭を掴み「うるさい」と一喝する。


ルネが黙るとポイッと投げ捨てる。


それを見ていたシオンは悪魔の王をあんな風に扱うなんて、なんと命知らずな人間なんだとある意味感心する。



グゥー。


おかわり用が食べられなかったせいでお腹が鳴る。


むくれても料理が戻ってくるわけじゃない。


それなら早く屋敷へ戻って何か食べた方がいい。


私はエルフとダークエルフ達にスカーレット領に行く準備をするよう命じる。


暫く待つと先に準備を終わったダークエルフの一人が近づいてきた。


「あの、お嬢様」


「なに?」


さっきボコったダークエルフの一人に話しかけられ驚く。


私のことを恐れていたし、今も体を小刻みに震わせているくらいだ。


怖くて仕方ないはず。


それなのに話しかけてくるのは、それ相応の理由があると思い顔だけダークエルフの方に動かす。


「あの、その……」


ダークエルフはなかなか離そうとせず、ずっと同じ言葉を繰り返す。


「言いたいことがあるならさっさと言いな!」


最初は黙って待っていたが、10分も待たされさすがに苛立つ。


ダークエルフは私に怒鳴られ「ヒェッ」と情けない悲鳴を上げる。


「あの、その……」


「あぁ?」


「あの、我々も食材を出せば料理を食べられるのでしょうか?」


「まぁ、そうね」


今回はただダークエルフ達に序列を教えるためにわざと与えなかっただけで、領地に戻ればちゃんと与えるつもりだった。


「実とかでもですか?」


「もちろんよ!」


私はダークエルフが何か果物の実を持っているのかと思い、逃げないよう肩を掴む。


新たなジャムを作るための実が手に入ると思うとつい嬉しさのあまり顔を近づける。


「ギャッ!悪魔……」


ダークエルフは詰め寄られたときのローズの顔が怖すぎて気を失う。


「……誰が悪魔じゃ!このクソヤロー!ていうか、何気を失ってやがる!さっさとおきやがれ!」


私はダークエルフに連続ビンタをお見舞いする。


目を覚ますまで何度も。


仲間もエルフ達もそんな私の姿を見て「悪魔だ。間違いなく、あの人間は悪魔だ」と全員そう思った。


絶対にこの人間だけには逆らわないと改めて誓う。


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