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変身魔法


「おい!いくらなんでもこの契約内容は不当すぎるぞ!」


契約書を読み終わったルネが怒り狂う。


契約のやり直しを要求する。


「ん?そう?じゃあ、無理やり納得してもらうしかないわね」


私が契約破棄しない限りはルネは言うことを聞くしかないが、ずっとこの調子では困る。


今のうちにどちらが上かしっかりと教える必要がある。


「外に出て大声で叫んでお前が復活したこを閻魔大王に知らせるわ。今度は閻魔大王の近くで封印されるかもしれないわね。そうなると自由は二度と訪れなくなるかもしれないけど……」


「喜んでお仕えいたします」


人間に仕えるなど屈辱だという表情を隠すことなく頭を下げる。


ルネは私のことを殺したいほどムカついているが、閻魔大王に自分の居場所をバラされるのは困るため仕方なく契約を飲むしかなかった。


「よし。それじゃあ、早速命令するわ。このダンジョンにある宝、仕えそうな魔導書や武器を持ってきて。全て屋敷へ持って帰るから」


「畏まりました」


そう返事するとルネはダンジョンに隠された宝や魔導書などを一歩も動かずに魔法を使って一瞬で私の前に出した。


私は目の前に現れた物の一つ、大量の(きん)が視界に入ると目を輝かせ喜んだ。


これで当分の間従業員達の給料の心配、男爵家の金銭面を心配しなくて済む。


'新たな使い魔に大量の金。ただの魔物退治だったはずなのに、思わぬ収穫だったわね'


金の重さに本物だと確信し、笑いが止まらなくなる。




「さてと、帰る前にあんたの姿をどうするか決めないとね」


笑いがおさまると私はルネの方を向く。


「それはもう決めました。こんなのはいかがでょうか」


そう言うとルネは変身魔法を発動させ外見を変えた。


本来の背から10cmほど低くなり、腰まであった黒髪が短くなった。


顔も少し幼くなったが、はっきり言ってそれ以外大した変化はない。


ルネのことを知っている者が見たら絶対に気づかれる程度にしか変化してない。


「却下。あんたふさげてるの?それのどこに変化があるわけ?あんたが悪魔だって気づかれないようにするって言ったでしょう。そもそも何で人の姿になってるの?あんたがなるのはそれ以外なのよ。わかった?」


私はルネのふざけた変身に腹を立て睨みつける。


「はぁ?俺様は悪魔の王だぞ!高貴な存在だ!そんな俺様がなぜ……」


「契約」


「……はい。喜んで人以外になります」


「あ、それとその俺様ってのやめて。むかつきすぎてあんたの髪を全部むしり取りたくなるから」


私はルネの頭を指差しながら言うと、ルネは慌てて髪を守るように両手を頭の上に置き「わかりました」と不服そうに返事をする。


「それじゃあ、さっさと決めて帰りましょうか」




三時間後。


「ちょっといつまで泣いてんの?あんた一応悪魔の王なんでしょう?たかがそれくらいで泣かないでよ」


「たかがそれくらいだと!?これのどこがたかがなんだ!俺様は悪魔の王だぞ!それなのにこんなちんちくりんな姿にさせやがって!この悪魔が!!」


契約内容も忘れタメ口に「俺様」と言ってしまう。


それほど今の姿が嫌だった。


時は遡り数分前。


なかなかルネの姿が決まらず、全員が苛立っていた。


ルネは自分が悪魔であるという主張をするためツノや羽を隠そうとしなかった。


それは駄目だと言ってもやめようとしない。


アスターが見かねて「こんなのはどうですか?」と土に絵を描くも「気に入らない。俺は高貴な存在だぞ」と言って何度もダメ出しする。


それが二時間以上も続きいい加減我慢の限界に達した私はアスターから木の棒を受け取り、黒い鳥を書いた。


ただし、かっこいい鳥でなく、デブで不細工な手のひらサイズの鳥を。


元の世界ではぬいぐるみにしたら可愛らしいと言って買うものがいるかもしれない程度の絵。


私はルネにこれになれと命じた。


ルネはそんなのになるくらいならアスターが描いた絵の方になると言ったがもう遅い。


嫌だと言ったのはお前だ。


自分の愚かさを呪いやがれ、と思いながら私は一言こう言った。


「契約」


この一言でルネは大人しく従った。


「はい」


本当に嫌そうな顔で私の描いた鳥に姿を変える。


この姿になってからルネはずっとシクシクと声を出して泣いていた。


そうして今に至る。


「悪魔はあんたでしょう?そもそもあんたが、あれは嫌、これは嫌って言って時間をかけるからいけないんでしょう。お陰でどれだけ時間を無駄にしたと思ってるの?恨むんなら私じゃなく自分を恨みなさい」


私がそう言うとルネはそれ以上何も言わくなった。


本来の姿より今の姿の方が愛らしく、ルネという名前にあっていると思うが当の本人は気に入らないみたいだ。


私が泣くルネに鬱陶しくなって泣くなと言うまでは、ただ悔しそうに泣き続けた。





時を少し遡って、ルネの封印が解けた頃の地獄。



「……ん?なぜ今になって封印が解けた?いや、それよりも一体誰があの封印を解いたのだ?」


閻魔は5000年前にルネにかけた封印が破られたのを察知した。


一体何があったのか本当は今すぐにでも確認に行きたかったが、現在地獄は魔族に攻められている真っ最中だったので抜け出すことができない。


閻魔が地獄から消えたとわかれば魔王が見逃すはずがない。


そのため閻魔はこの場から動くことができない状況だった。


「クソッ!よりによってこのタイミングか!一体だれがこんなことを。せめて魔族じゃないことを祈るしかないか」


万が一魔族だった場合、地獄の一つ獄炎を纏めていた悪魔が向こうの戦力になる。


考えただけでも頭が痛くなる。


現在、獄炎を纏めている悪魔は悪魔達の中では強いが悪魔の王の一人として恐れられていたルネよりは弱い。


地獄でルネと戦えるのは閻魔を含め獄氷の主で悪魔の王の一人、ゼンだけ。


自分達が負けることはないとわかっているが、このままでは地獄がめちゃくちゃになり、死んだ魂を守ることができなくなる。


閻魔はある決断をする。


本当は嫌で嫌で仕方ないが、こうなった以上文句を言っている場合ではない。


「私だ。悪いが力を貸して欲しい」


閻魔は天界、神々の王として崇められるルミナスに助けを求める。


「アイツの封印が解けた。誰がその封印を解いたのか。今どこにいるか調べて欲しい」


どんな対価を要求されるのか考えただけでも頭が痛くなるが、地獄がめちゃくちゃになるよりはマシだと思った。

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