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封印解除


「お嬢様。封印を解く方法に心当たりがあるんですか?」


今まで誰も知らない知識を知っていたので今回もそうなだと思い期待して尋ねる。


「ん?ないけど?」


「……」

「……」


二人は私の今この言葉を聞いて固まる。


そして同時にこう思った。


'こいつ/この人、絶対悪質な詐欺師だ!'


「まぁ、契約したから助けないとね。とりあえず杭は全部ぬ……うん。このままにしよう」


一本抜いた瞬間、悪臭が鼻を突く。


急いで杭を元に戻し、匂いの元を断つ。


「アスター。とりあえず、この棺斬れるか試してみて」


「……わかりました」


渋々剣を抜き振り下ろすも、強力な結果が発動し攻撃を防ぐ。


「……無理ですね」


「うん。見てたからわかる。でもなんで剣は駄目で杭は良かったんだろう?」


三人共その理由を考えるため黙り込む。


長い沈黙が続いたが、アスターが最初に口を開いた。


「多分わかりました」


「本当!?」


「はい。何故私の攻撃は駄目でお嬢様の攻撃は良かったのか。理由は簡単です。それは悪魔を助けるか助けないかの違いです」


「あ〜、そういうことね。確かにさっきの私は悪魔が出てこれないようにしようとした。つまり、助けようとしたら結界が発動するってことね。よく気づいたわ。褒めてつかわす」


「ありがとうございます」


「……」


「……」


さっきよりも重い空気が流れる。


結界の発動条件はわかったが、それはつまり悪魔を助けることはできないと物語っている。


'無理じゃね?これ絶対無理でしょう。逃げちゃ駄目だよなー。契約しちゃったし。むこうが破棄してくれないと私死ぬことになるし……あー!こんなことなら一回試してから決めれば良かった'


私は杭だらけの棺の上に寝転ぶ。


「おい!お前!さっさとしろ!契約したんだから早くここから出せ!」


ルネが叫ぶ。


「アスター。この馬鹿黙らしてくんない?五月蝿すぎて集中できない」


「どうすればいいですか?」


「……蹴ればいいじゃない?」


私は考えるのが面倒になり適当に答える。


「わかりました」


アスターは私の指示に従い、思いっきり棺を蹴り飛ばす。


その衝撃で棺の上に寝転がっていた私は地面に叩き落とされる。


「……ねぇ、何か言うことは?」


顔面から落ちたので鼻がとても痛い。


鼻血も出てくる。


「……?」


アスターは何を言われてるのかわからず首を傾げる。


「おい!その顔やめろ!なにその私何を言われてるのかわかりません、みたいな顔!ちょっと考えたらわかるじゃん!私を移動させてから蹴ればいいじゃん!何で私がまだいるのに蹴るわけ!?」


「そうして欲しいのかと思いまして……」


いい顔で答えるアスターに「こいつの顔めり込ませてぇ!」と殺意が湧く。


「そんなわけないでしょう!あんた馬鹿なの!」


「申し訳ありません。次からは気をつけます」


「……」


まだ言いたいことは山ほどあったが、今はルネを助けることを優先する。


下手すれば一生ここに住むことになる。


それだけは絶対に回避しなければならない。


「ねぇ、あんた。そもそもこの封印誰がかけたの?」


「閻魔」


「閻魔……それってもしかして地獄の王のこと言ってる?」


「そうだ」


'え?冗談でしょう……閻魔大王がかけた封印なんて解けるわけないじゃん。まじで終わったわ'


封印したのが閻魔だと知り諦める。


これはどう頑張っても無理だ。


「契約は無しにしましょう。破棄して」


「嫌だ」


即答する。


「はぁ?さっさとしなさいよ!」


「絶対に嫌だ!」


「閻魔がかけた封印なんて人間が解けるわけないでしょう!諦めて!私は帰るから!」


「絶対嫌だね!契約破棄なんて絶対しない!もし、仮に解けなくてもお前はずっとここにいることになるだろ」


「ちょっと!さっきの嫌がらせの仕返しのつもり!悪魔のくせに幼稚ね!」


私はすぐにルネの思惑に気づく。


契約破棄してもらえなかったら私はこのダンジョンから出ることができない。


少しずつ弱っていく私を見て嘲笑うつもりたんだと。


「何とでも言え!お前は終わりなんだよ!」


ルネは高笑いをする。


耳障りな笑い声に私は殺意が芽生え、本気で殺したくなる。


「お嬢様。私が殺せば契約は無効になるのではありませんか?」


アスターは剣を構え許可を待つ。


「いや、大丈夫よ。こうなったら、助けるしかないもの。少し大変な思いをするかもしれないけど、本人が望んだんだから仕方ないわ」


「……」


アスターは私の顔を見て剣をしまう。


手助けは必要ない。


ルネはきっと助けられる。


ただ、あの顔を見るに絶対碌なやり方ではないと悟る。


アスターは心からルネに同情し、手を合わせる。


「おい。クソ悪魔。お望み通り今から助けてあげるわ。ただ、この方法は相当な痛みが伴うの。だって、閻魔大王を騙さないといけないからね。死ぬ気で耐えるのね。あんたが望んだことなんだから」


そういうと私は残りの杭を全部棺に打ち込む。


もう打ち込むところが、どこにもない状態になると手を止める。


打ち込んでいるとき悪魔が何か言っていたが全部無視した。


疲れたので休憩のため休む。


その間にアスターにどうするつもりかと聞かれたとので、「杭を打ったらさっき穴が開いたら全部打ち込めば棺から出せるかと思って、とりあえず試してる」と伝える。


「でも、よく今度は打ち込めましたね。悪魔を助けようとしたら結果が発動するのに……」


アスターはそこまで言って気づいた。


まさか……!


アスターは恐る恐るローズの方を向くと、満面の笑みを浮かべている彼女を見て「あ、これ助けるつもりじゃない。運が良ければ助かるくらいのつもりでやっているんだ」と気づいた。


イカれてる。


そう思うもこれ以外の作戦が思いつかないので黙って見守る。


「じゃあ、そろそろ抜くか」


私は立ち上がり杭を抜いていく。


打ち込む時より抜かれる時の方が痛いのか、悲鳴を上げた。


だが、本人が望んだことだとその悲鳴を聞き流してどんどん杭を抜いていく。


全部抜くと、杭のおかげで99%穴の棺になった。


残りの1%は杭と杭の隙間で穴が開かなかったところだ。


普通こうなったら壊れるのに、閻魔の封印がかかっているせいか壊れない。


穴だらけの棺のせいで中身は丸見えだ。


顔を確認しようにも全身包帯でグルグル巻きにされ、大量のお札を貼られているのでどんな格好をしているのかさわからない。


プッ。


私はおかしくてつい吹き出してしまう。


こんな状態にされていたのに、あそこまで上から目線で人に助けを求めていたのかと思うと笑いが止まらなかった。


アスターも同じなのか、隣で肩を震わせ静かに笑っていた。


「おい!笑うな!殺す!絶対に殺してやるからな!」


ルネは今の自分の格好を見て笑われていると瞬時に気づき怒鳴りつける。


「どうやって?今のあんたは私に手出しできない。それに封印が解け自由な身になったあんたがどうやって私を殺すの?あんたは私と契約したでしょう。それも血判までした」


「チッ……!さっさと助けろ!」


「もちろん。喜んで」


私はルネの両足を掴み棺から出そうと引っ張る。


「うっ……!やめろ!今すぐやめろーっ!!」


ルネはあまりの痛さに叫ぶ。


目は覆われて見えないが、何が起きているのかは簡単に想像できる。


外に出すため足を引っ張られるも、杭と杭の隙間の棺の蓋に股間が当たり外に出られない。


閻魔の封印のせいで力を加えなければ壊れることはない。


この程度では壊れないとわかった上でさっきの仕返しのために、わざと股間に当て壊そうとしていると悟る。


そしてその予想はローズの言葉を聞いて当たっていると確信する。


「やだね。我慢しな」


そう言って私は足を引っ張り続ける。


その間もずっとルネはやめるよう求めてきたが全て無視した。


この光景を見ていたアスターは顔を真っ青にしてこう思った。


'悪魔の中の悪魔だ。あの人こそ悪魔の王に相応しい'


棺が壊れるまでの間、ルネの叫び声が部屋中に響いた。


その間、アスターは何故か自分の股間を痛く感じて無意識にその場所を手で守っていた。


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