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両親


一週間後。


「あとは仕上げだけね。アイリーン。お願いできる」


水を流すための作業が終わった。


あと数日かかるかと思ったが、ホットケーキが効いたのか次の日から作業が進んだ。


もちろん。まだ不完全だが、今は水さえ流さればそれでいい。


「はい。お任せください」


アイリーンは水を発生させる。


水は騎士達が掘った地面から溢れることなく緩やかに流れ出す。


これで川の完成だ。


「ありがとう。アイリーン」


妖精王が作った水は本人が消さなければ絶対に消えない。


これでこの領地の水不足を解消するための準備が整った。


今からは下水道を作る。


下水道がどういうものかは知っているが、さすがの私でも作る知識はなかったので、オリバーに頼んでこの世界の歴史の本を全部出してもらった。


その中に一冊だけ下水道のことが書かれてる本があり丸一日かけて理解した。


それから一週間かけて下水道の設計図を書いた。


その間に騎士達には荒地を畑にするため雑草や石をなくしてもらっている。


この荒地を農地に変える。


今年は無理だが来年には他の領地から高値で食料を買わずに済む。


それに領地民に職を与えることで、ローズのイメージを払拭することができる。


今だけ我慢すればあとの暮らしは快適になる。


そのためにもこの領地を潤さなければならない。


民を雇うのはもう少しあと。


今は使用人や騎士達が毎日いい匂いをさせ、清潔な体をしているのはローズのお陰だと植え付ける必要がある。


それに男爵の許可なく領地民を雇うわけにもいかない。


私が変わったと証明して、さらに裏切り者を追い出さなければならない。


やることが多すぎて頭が痛くなるが、私は笑いが止まらなかった。


そう遠くない未来で金の心配をすることなく遊びまくれる自分を想像できたから。



畑と下水道を一変に進め、更にグレイにバレないようメープルウォーターを集めシロップとシュガーを大量に作った。


それと石鹸も。


これで借金を半分に減らせるはず。


あとは男爵夫妻の帰りを待つだけ。


運命の日は刻々と迫る。


やれることは全部やり、準備も完璧だ。


そうして男爵夫妻が帰ってくる前日、私の思った通りにことが進んだ。


追い出した騎士達が男爵夫妻に会いにいき、私に不当解雇されたと訴えた。


自分達の悪いところは何一つ言わずに。


それを聞いた男爵は呆れてしまう。


男爵夫人は騎士達に謝り、一緒に帰ろうと言う。


騎士達はその言葉を聞いてニヤリと笑う。


出来の悪い娘より、長年働いてきた自分達を信じる夫婦に笑いが止まらなかった。


お詫びと称してお腹が空いていると訴え大量に料理を平らげた。


借金があることは知っていたが、もうすぐ男爵家は潰れ自分達は他の領地で騎士として雇ってもらう手筈になっているのでどうでもよかった。


騎士達は夫婦を心の中で馬鹿にした。


それが騎士達にとって最後の温かい料理になるとは知らずに。




男爵夫妻が皇宮から屋敷へと帰ると、雰囲気が変わって驚いた。


使用人達の晴れやかな顔、騎士達の体つき、そして何より清潔な体。


一体自分達が留守にしていた二ヶ月で何があったのかと。


だが一番驚いたのは……


「お帰りなさいませ。お父様、お母様」


問題児だった娘が使用人の男物の服をきて出迎えたことだった。


「ローズなのか?」


男爵は目の前にいるのが娘だと信じられず尋ねる。


無理もない。


ぽっちり体型の娘がが帰ってきたらモデル体型になっていたのだから。


「はい」


「どうして使用人の服を着てるの?」


美しい物に目がないローズがボロボロの服を着てるのが信じられない。


借金があろうが関係なく、どんどんお金を使っていたのに。


「動きやすいからです」


「そう……」


いい顔をしてそう言う私に二人はそれ以上何も言えなかった。


そんなとき二人の後ろにいた追い出された騎士達が咳払いをした。


「あっ……」


そこでようやく男爵は私を叱ろうと思っていたことを思い出した。


「ローズ。彼らを不当解雇したそうだな。なぜそんなことをしたんだ」


諭すように話しかける。


「お父様。それは誤解です。私は不当解雇などしていません。彼らはなるべくしてそうなったのです」


私は淡々と言う。


「どういうことだ?」


双方の言い分が違い混乱する。


彼らから話を聞いたときはローズならやりそうだと思ったが、今目の前にいる彼女は落ち着いていて貴族としてのオーラを感じる。


そんなローズが言うのなら事実かもしれないと思い始める。


「彼らは私の指示を背き、あろうことか私を侮辱したのです」


「なっ!それは本当か!?」


「はい。本当で……」


「それは誤解です。旦那様」


元騎士団長が膝をつき私の話を遮り口を開く。


'あーあ。騎士が貴族の話を遮るとか終わってるわね'


私は冷めた目で元騎士団長を見下ろす。


後ろにいたアスターも同じような目で見下ろしていた。


アスターは元騎士団長達がローズを侮辱する発言をしたとき共にいて聞いていたので知っていた。


本当は「お嬢様は何もわるくありません」と言いたかったが、ローズに「明日は何も言っては駄目よ。お口チャーック」と言われていたので我慢していた。


「私共はそんなことを言っておりません。本当です。信じてください」


元騎士団長は頭を下げて信じてくれと懇願する。


戻し騎士達も同じように頭を下げる。


男爵夫婦は悩む。


いつもなら彼らの話しを信じるが、今日はできなかった。


どっちを信じるべきか決められなかった。


どうするべきか悩んでいたそのとき、ローズがこう言った。


「私は彼らを陥れてなどいません。男爵家の名に誓います」


私がそう言うと彼らも対抗するように元騎士団長がこう言った。


「私達も騎士の名に誓って嘘ではありません」


そう言って元騎士団長はしたり顔で私を見るが、すぐに顔を強張らせた。


'なんだあの笑みは?まるで悪魔のようじゃねーか'


元騎士団長は急に不安になった。


罠に嵌められた気がして。


「お互い誓いを立てるのなら仕方ありませんね」


私がそう言うと元騎士団長は杞憂だったかとホッとするがその次の言葉を聞いて顔を青くする。


「では、決闘しましょう。それでどちらが正しいのか決めましょう。私が勝てばあなた達が悪い。逆にあなた達が勝てば私が悪かった。それでいいわね」


「えっ!いや、それは……」


決闘になったらアスターが代わりにやると思い、元騎士達は言葉を濁す。


アスターには絶対に勝てないとわかっているから。


「ああ。心配しないで。代わりは立てないから。私がやるわ。ただし、私に負けるような騎士はこのスカーレット家にはいらないから」


「お嬢様。今ならまだ引き返せますよ。我々も自身の誇りのために手加減はできませんよ」


元騎士団長は相手が私だとわかると一瞬で態度を変え強気の発言をする。


「ちょ、待ちなさい」


男爵が止めるが、私は被せてこう言った。


「構わないわ。私も自身の誇りをかけて戦うから。後悔しないでね」


そう言うと、男爵の方に向き直り審判を頼む。


「そういうことなりましたので。お父様。審判をお願いしますね」


「……わかった」


双方が納得して決闘する場合、例え男爵でも止めることはできない。


何故こんなことに?と後悔しながら訓練所へと向かう。


使用人や騎士達も勝敗の行方が気になり一緒に訓練所へと向かった。


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