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甘いもの?


「だいぶ肉が落ちたわね」


ぽっちゃり体型から普通体型になる。


この世界にきて三週間。


アイリーンを手に入れてから毎朝鍛錬をしたが、私の本当の体と比べたら全然筋肉がない。


これでは自分の身を守るのは難しい。


せめて、あと一ヶ月で成人男性を倒せるくらいにはならないと。


「今日で4日。お嬢様。意外と続いてますね」


アスターは自分の鍛錬が終わると話しかけてくる。


「それはどういう意味よ」


馬鹿にした感じで言われイラッとくる。


「いえ、いつもなら2日で飽きて違うことをするので……今回はその倍続いたので」


「……」


ローズのことを持ち出されたら何も言えなくなる。


アスターが言っているのは私ではないが、この体に憑依した以上私がやったということになる。


悔しくて泣きたくなる。


こんなに頑張ってるのに、ローズのせいで全て疑われる。



ただ一つだけ言えるのは全てがローズのせいというわけではない。



「ああ。そう。せっかく美味しい料理でも作ろうと思ったのに、今のでやる気なくなった……」


私は地面に座り込み、いじけたふりをする。



本人は気づいていないが、自身の性格の悪さも疑われる要因になっているということに。



「……」


アスターはまた始まったと呆れる。


だが、ここで機嫌を取っておかないと本当に何も作ってくれなくなる。


もし仮に作ったとしても自分だけ食べられなくなる。


心の底からこんなことはしたくないが、美味しい料理のためローズの機嫌を取る。


「お嬢様はいつも頑張っていると私は思ってます。お嬢様のお陰で美味しい料理を食べれるようになりましたし、風呂に入ることで体も清潔に保てます。屋敷も見違えるほどとても綺麗になりました。お嬢様がいなければ、我々は何もできません。未熟者です。心優しいお嬢様にお仕え出来て私はとても幸せです」


アスターは頬が引き攣りそうになるのを感じながら、笑顔で言う。


私はその言葉を聞いてニヤリと笑う。


アスターの胃袋を完全にゲットしたと確信できたから。


「そう?そこまで言うならさっきの発言は許すわ。未熟者を許すのも貴族としての役目だからね」


私は鼻歌を歌いながら汗を流すため小屋へと向かう。


後ろでアスターが悔しそうな顔をしているのを想像すると余計に気分が良くなる。





「さてと、借金をどうやって返すか」


お風呂と石鹸を作って売るにしても、時間がかかる。


それに借金を返すほどの収益にもならない。


水は売るにしても高すぎたら駄目。


長期的にみないといけない。


野菜を作るにしても畑がない。


今すぐ畑を作ったとしても野菜を収穫するまで時間がかかる。


まぁ、畑は作るけど。


「困った。今すぐ手に入り、すぐ金になるものが思いつかない」


「お嬢様。せめてレディらしい格好をしてください」


オリバーが私を注意する。


私はベットで横になりながら、フライドポテトを食べていた。


元の世界でも行儀が悪いと言われる行為だ。


そんな行為をやれば、この世界の貴族としてあるまじきことだろうとわかってはいるが……


こうやって食べるのが美味しいんだよな、と思いオリバーの言葉を無視して食べ続ける。


オリバーはこれ以上言っても無駄だと判断し諦める。


一体いつからこうなったんだ?と。


昔も今も問題児であることは変わらないが、貴族の作法には人一倍気を遣っている人だった。


男爵という貴族の中で最も階級の低い家のため、作法だけは完璧にして他の貴族達に馬鹿にされないようにしていた方なのに。


本当にどうしてこうなったのだと頭が痛くなる。


男爵夫妻になんと言えば……


だが、オリバーは何故か今のローズの方が好感が持てた。


以前のローズは生理的に受け付けないくらい嫌いだったから。


「ねぇ。なんかいいアイディアない?」


三人に尋ねるも私はフライドポテトに夢中。


アイリーンは「ご主人様なら何をやっても正解だと思います」と良いことを言うが答えになってない。


アスターは話しを聞いてないのか考えごとをしている。


'全員使えないわー'


ベットの上で大の字になるながら、借金返済方法を考える。


頭を使うとお腹が空く、するとフライドポテトを食べる。


それを繰り返していると皿いっぱいにあったフライドポテトが一瞬でなくなる。


'……甘いの食べたい'


塩分の取りすぎ。


アイリーンがいるため塩はタダで無限に手に入る。


海水も出すことができるから。


こっちの世界にきて甘いものを一回も口にしてない。


塩分の取りすぎで余計に欲しくなる。


コーラもビールも飲みたい。


ケーキが食べたい。


こういうとき、この世界にきてしまったことにどうしようもなく嫌気がさす。


向こうならコンビニやスーパーに行けば絶対に手に入るのに、ここではどちらも手に入らない。


その事実が腹ただしくて許せない。


知識はあっても作るには時間がかかる。


ん?でもケーキなら作れるんじゃあ……


'そもそもこの世界では甘いものは何があるの?料理がクソならスイーツもクソなんじゃあ……'


そこまで思いつくと借金返済方法は簡単に思いつく。


アスターとオリバーはまた悪い顔しているなとわかり、顔を見ないよう逸らす。


アイリーンはご主人様が楽しそうで今日も一日平和だなと思っていた。



「ねぇ。甘いものって高値で売れるかしら?」


私はオリバーの方を向く。


「それはもちろんです。砂糖なんて一袋で買おうと思ったら金貨50枚します」


私は「金貨50枚」と言う言葉にに驚きすぎて固まる。


この世界の一袋は3kg、金貨一枚は1万円をさす。


つまり1kgが約17万円する。


詐欺だ。絶対詐欺だ。


そんな金誰が出すんだ?金持ちしか無理じゃん。


絶対ど田舎の男爵家では買えないじゃん。借金もあるし。


「他の甘味料は?」


「ありません」


「?」


私は何度も瞬きをしてオリバーを見る。


「ありません」


もう一度はっきりと言う。


「……本当に?」


「はい。ありません」


私は三度目の正直で教えるのではないかと疑い聞いたが返事は一緒だった。


その言葉を聞いて私は喜んだ。


喜びのあまり部屋中を飛び回った。


二人からは変な目で見られたが、アイリーンは一緒に飛び回ってくれたので良しとした。


「お嬢様。なぜ喜ぶのですか?」


砂糖以外の甘味料がないということは、自分達は一生甘いものを食べれないということなのに、喜ぶ理由がわからず困惑する。


死ぬ前にどんなものか食べてみたくなるのが普通なのではと。


「そんなの決まってるでしょう。他の甘味料を全て独占できるからよ」


そうすれば借金を返し、遊んで暮らせるだけの大金が手に入る。


億万長者になれる!


小説には甘いものが出てきていたが、まさかこの世界では砂糖しか甘味料が発見されていないとは知らなかった。


これは良い誤算だ。


最初は高値で貴族達に売り付け、少したら価格を下げ平民達にも食べれるようにする。


そうして甘いものの虜にさせ国中、いや大陸中から金が私の元に落ちてくる。


'いい!すごくいい!素晴らしい!自分でいうのもなんだが、天才すぎる!'




「……おい、甘味料のことを聞けよ」


「無理。あの顔のときは話しかけたくない。そんなに知りたいならお前が聞け」


「嫌だ。俺だって話しかけたくない。知り合いだと思われたくないし」


この部屋には三人の人間と妖精王しかいないのに、アスターとオリバーはここにはいない人達の目を気にする。


「……待つか。どうせ教えてくれるだろうし」


「確かに。そうだな……なぁ、本当に甘味料を手に入れられると思うか?」


「にわかに信じられないが話しだけど、ここ最近のお嬢様の言葉は信じれると思うぞ」


「確かに」


「……」


「……」


「なぁ、あの人はお嬢様だと思う?」


「いや、別人だと思う。お嬢様の体だが中身は違う人だと思うけど……」


それを証明する証拠がない。


人が変わることは稀にあるらしいが、ローズに関しては信じられない。


変わったというより別人が体を乗っ取った、と考えた方が納得できる。


まだそうと決まったわけではないが、二人はローズのことを疑った目で見ていた。




そのときの私は二人に疑われているなんて思いもせず、元の世界のスイーツを食べれるかもしれないと嬉しくて喜びの舞を踊っていた。

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