王命?
「じゃあ、次は私の番ね」
「ああ」
「あなたに、ここにくるよう命じた人は国王陛下?」
(え……?)
私の言葉を聞いたアスターは驚いて目を見開くが、会話に入ってくることはなく、ただ成り行きを見守った。
「ああ。そうだ」
アランもアスター同様、質問を聞いて驚いたが、誤魔化すことなく素直に認めた。
「どうして、わかった?」
アランは次は自分の番だというように質問する。
目をキッとして、凄むような顔をするが、ボコボコになった顔でカッコつけられても、笑いが出そうになるだけで全く意味がない。
私とアスターはアランのそんな表情を見ても、なんとか笑わないように耐えるが、どうしても肩が小刻みに揺れてしまう。
(なんだ?こいつら肩なんか震わせて?寒いのか?)
アランは急に肩を震わせ始めた私たちを見て心配になる。
「ただの勘よ」
嘘。
本当は推測した。
と言っても半分は勘だから、あながち嘘でもない。
アランが敵でないのなら、フリージア領を助けたい人物が誰か考えればいい。
本人が直接来ずに人を送る理由。
この二つから簡単に答えは導けれる。
その中で最も権力、地位、名誉が高い人物を最初にあげただけ。
「勘だと……?」
アランは私の答えが気に入られないのか、納得いかない表情をする。
(そんな顔をしても、嘘は吐いてないわよ。本当のことも言ってないけどね)
私はわざとらしく笑って、この質問にはこれ以上答えないと表情で訴えてから、こう言った。
「それで、国王陛下はなぜあんたをここに来るよう命じたの?」
「王命を言うと思うか」
例え拷問されても絶対に話さない、とアランは真っ直ぐとローズの目を見て宣言する。
「そう」
予想通りの答えだ。
なら、この後の対応は決まっている。
「アスター」
「はい」
「この男をフリージア領から追い出して」
「かしこまりました」
アスターはアランをフリージア領から追い出そうと、首根っこを掴もうと近づく。
「は?ちょ、え?待った、待って!」
アランはアスターに首根っこを掴まれ慌てた。
「アスター」
私が名前を呼ぶと、アスターは手を離し、アランを解放する。
「いきなり、何するんだ!俺はここには王命できてるんだぞ!そんな俺を追い出すつもりか!」
アランはアスターから解放されると、声を荒げて抗議した。
慌てすぎて敬語でなくなっていること、一人称が変わっていることにも気づかない。
「ええ。そうよ。何か文句ある?」
悪びれずに言う。
「なっ……!」
「大体、あんた王命だって言ったけど、証拠は?あるの?」
ないとわかってて言う。
秘密裏に人を送るくらいだ。
バレるのを恐れているのに、王命だとわかるものをアランに渡しているはずがない。
例え、本当のことだとしても証明できないのなら意味がない。
嘘と変わらない。
言うだけなら、なんとでも言えるのだから。
「それは……ない」
(でしょうね。知ってる)
私はアランの言葉を聞いて、顔がにやる。
そんな私の表情を見ていたアスターは「うわぁ、人に見せられないほど悪い顔してる」といつものことだけど、相変わらず酷いなと思っていた。
「だが、あなたは先程私に『ここにくるよう命じた人は国王陛下か』と尋ねたじゃありませんか。あなたの口で言いいましたよね。それこそ、何よりの証拠じゃないですか」
「アスター」
「はい」
「私、そんなこと言ったけ?」
「……!」
「……!」
私の今の発言を聞いた二人は同じように、目を見開き、口をポカンと開け、あまりに堂々と嘘を吐くので驚きを隠せなかった。
「……いえ、言ってません」
アスターはすぐに我に返り、これは全てフリージア領民を助けるためだ、と言い聞かせ嘘を吐く。
「なっ……!」
アランはアスターの言葉を聞いて、この状況では、自分に絶対に自分に勝ち目がないと悟った。
そもそも力で貴族令嬢にも勝てないのに、仕えている騎士に勝つなど無理だ。
その上、口でもとなるとアランにできることなど何もない。
フリージア領から無理矢理追い出されるしかない。
もし、方法があるとするなら、それは王命の内容を話すことだけ。
だが、それは決してやってはいけないこと。
だが、それを言わなければ任務を遂行できない。
アランはどうするのが正解かわからず悩むが、答えは最初から決まっていた。
「……わかりました。話します。王命を」
その言葉を聞いた私はニヤッと笑い、水魔法で椅子を作り、座って話しを聞く体勢に入った。
「私が命じられた任務は、フリージア領の様子を確認し、敵を排除し、陰で復興を手助けすることです」
「……」
(おい、おい、おい。冗談だろ。いや、冗談だって言ってくれ)
アランの言葉を聞いて私は呆れて何も言えなくなる。
敵を排除するまではわかるが、その後の陰で復興を手助けするが意味がわからない。
どうみても一人では無理だ。
アランという男が、とてつもなく仕事ができ、頼りになる信頼のおける人物だとしても、一人ではできることに限りがある。
(国王がそんなこともわからないなんてことあるか?)
はっきり言って、ふざけているとしか言いようがない任務を命じた国王の意図がわからず混乱する。
小説を読んだ限り国王陛下は立派な人だった。
明らかに設定とアランから聞いた話しが矛盾している。
となると考えられる答えは一つだけ。
「ねぇ、その命令、本当に陛下から言われたの?」
「当然だろう」
アランは私の質問が気に食わなかったのか、顔を顰める。
「本当に?」
私はもう一度尋ねる。
「ああ」
アランはうんざりしながら投げやりに返事をする。
「本当に陛下の口から直接命じられたの?」
「え?あぁ、それは……」
「やっぱり、違うのね」
アランの歯切れの悪さで誰がこんなふざけた命令を下したのかわかった。
「あんたに国王からの命令だって言ったの、王妃ね」
私は確信を持って言う。
「はい」
まるで全てを見ていたかのように言う、私の姿にアランは驚きを隠せない。
噂で聞いた話し以上に謎だと感じた。




