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2.魔王との対面

少し気になってる部分があるので後ほど文を少し変更する場合があります


 どんどん前へ前へと進んでいく社長の後ろ姿に俺は恐る恐る話しかける。


「あ、あの~」

「はい、何でしょうか」

「いや、社長は何だか落ち着いていらっしゃいますね?俺なんか、急なことで驚いたままでして……あ、ははは」


 確かな足取りで真っ直ぐ進む社長は俺の方を見向きもしなかったが、正直に自分が思っていることをぽつりとこぼす。

 現に今も、ただ社長の後をついて行っているだけだがもの凄く怖い。

 だって、先程まで社長室にいたはずなのに謎の光りによって来たこともない廃墟らしき場所になっているのだから。恐怖を抱いてしまうのは仕方がないだろう。

 それに、社長は何か知っているはずなのに俺に一切情報をくれないため不信感が募ってしまう。

 

 果たしてこのまま社長について行っていいのだろうか。

 もし、このままついていったら俺は――。


 そんな風に考えていると、社長はある扉の前で足を止め俺の方へと振り返る。


「……佐藤さんの不安は計り知れないものだと思います。ですが、今はどうか私を信じてください」


 社長はそういうと、扉を開き先に入るように促してくる。

 信じて良いのか分からないが、今の俺はこの場所がどこかもわからない。どこかに逃げれるわけでもないため黙って社長の指示に従い扉の先へと足を動かす。

 不安が募っていたが、いざ扉の先の光景が目に入れば俺は思わず声をもらしてしまう。

 

 「わっ……」


 扉の先は壇上がある神秘的な広い部屋だった。

 廃墟とは思えないほど綺麗なスタンドガラスがあるのに加え、壇上には立派な玉座のようなものがある。それにそこにはかなり大きめな白い毛糸玉のようなが置かれていた。

 あまりの異質さにただただ眺めていることしか出来なかったが、社長はそんな俺を置いて真っ直ぐと壇上の方へと歩いて行く。

 俺も慌てて後に続くように歩けば社長は壇上の前までいき、ゆっくりと口を開く。


「シロハさん、こんにちは」

「えっ?」


 まるで壇上に誰かいるような口ぶりで話しかけているが、生憎俺には玉座のようなものと、その上にある白い毛玉のようなものしか見えていない。

 見えない何かがいるのかと思わず喉を鳴らしてしまうが、しばらくすると玉座のようなモノにある白い毛玉のようなものがもぞもぞと動き――――ひょこりと幼い少女が顔を見せる。


「!?」


 その様子にいれは無言で驚いてしまう。

 幼い少女は目を擦りながらパチパチと複数回瞬きをすると、人と思えないほど美しい金色の瞳をぱっちりと開く。


「ん~……あれ?ルリおねぇちゃん?」

「あら、睡眠中でしたか?」

「えっと、すこしだけ……えへへ」


 驚く俺をよそに社長は幼い少女に声をかけ、少女は恥ずかしそうにはにかみながらゆっくりと壇上から降りてくる。

 背丈は大体120㎝ぐらいだろうか。毛玉のように見えていたのはどうやら少女の髪の毛らしく、真っ白な髪は腰の辺りまである。

 壇上から降りれば社長にくっつ少女。社長もその少女と親しい仲なのか、少女と視線を合わせるためしゃがんで頭を撫でていた。

 

 まるで年の離れた姉妹を見ているみたいだな、なんて思いながら二人を眺めていると、幼い少女の目が俺を捉える。

 

「あれ……?そのひと、だあれ?」

「あぁ、こちらは私の社員ですよ。シロハさん」

「しゃいん?」

「えぇ」


 社長は視線を少女に合わせている状態で俺に「自己紹介を」と視線を送ってくる。

 突然の出来事にいまいち頭の理解は追いついていないが、俺は恐る恐る少女と視線が合うように屈み、胸元にある名刺を取り出す。


「ご挨拶が遅れました。私、株式会社マオウカンパニーで勤めております、佐藤武と申します」


 スッと名刺を少女に渡せば「タケシ?」と首をかしげながらマジマジと俺の名刺を見ている。

 初めて誰かに名刺を渡した訳じゃないがあまりにも名刺をマジマジと見ているものだから、「子供ように渡す名刺を作るべきだった」と考えてしまっていた。すると、社長がゆっくりと立ち上がり口を開く。


「佐藤さん。この方はシロハさんです」

「! あっこんにちは。えっと、シロハっていいます。シロハってよんでくれるとうれしいです。よろしくおねがいします」

「あっ、こちらこそよろしくお願いいたします」

「えへへ」


 社長の言葉に反応した少女、シロハちゃんはぺこりとお辞儀をすると可愛らしい笑顔を向けてくる。

 その子供らしい笑顔に思わず俺も笑顔になってしまうが、「ぱんっ」と手を叩くような音で意識を戻される。


「さて、自己紹介も終わりましたし、佐藤さんには仕事をしていただきましょう」

「あ、はい。…………って、えっ!?仕事!?いや、それよりも先に会社に戻ることが先じゃないですか!あぁ、そうだ。シロハちゃん、ココどこだかわかる?もしかして、君も迷子かな?大丈夫、今社長……じゃなかった。えっと、瑠璃さんもいるから安心してね。そうだ、まずは警察に連絡しておいた方がいいかな?えーっと携帯は……」


 一人焦りながらこの場から脱出するために、ゴソゴソとポケットを探ればスマホが出てくる。

 急いで警察に連絡をしようと電話をかけるが――なぜか繫がらない。

 不思議に思い電波を確認するが、そこには――。


「……圏外?」


 その文字を見た瞬間俺は血の気が引いてしまった。

 最悪の事態だ。この状況を打破するためにも俺は社長に今の状況を簡潔に伝え意見を求める。


「社長、ココ電波無いみたいです。どうしましょう!」

「……ええっと、一度落ち着いてくださいな。ここがどこかも含め説明いたしますから」

「へ?」


 困ったように笑いながら思ってもいなかった回答が返ってきて俺は情けない声が出てしまう。

 しかし、社長はそんな俺を馬鹿にする様子もなくしっかりとした口調で話を始める。


「まず初めに。今私達がいる所は、いわゆる魔界です。そして()()()()()魔界を統べている魔王が、こちらのシロハさんです」

「……は?」

「? 何か質問がありましたか?」

「いや、いやいやいや!?質問しかありませんよ!魔界って……は?それに魔王?何言ってるんですか!」

「では、自分の目でお確かめになるとよろしいかと。多分あちらの窓から景色がよく見えると思いますよ」

「っ!」


 俺は思わず口調が崩れるのも気にせず思いっきり突っ込んでしまうが、社長はそれでもふざけた言葉を撤回する気はないみたいで俺に窓を覗くよう指示を出す。

 俺はすぐさま窓を覗きに行くが俺の目に映ったのは――。


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