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妙な声

作者: 亜紋 正吉

祖母からラジオを直してほしいと言われた。


祖母は機械オンチで、何かというと私に操作方法など尋ねてくる。


今回も例に漏れず使い古しのハンディラジオが動かなくなったそうだ。


年月が経って変色したそれを手に取って色々といじり回してみる。


動かない。それどころかノイズすら聞こえない。


電池切れかと思って買い置きのものと交換すると、間もなく音が聞こえ出した。

しかしイマイチはっきりと聞こえない。


音量の調節つまみを操作してみるが何故か音が大きくならない。

これは本格的に壊れたかと思って何気なくラジオを耳に近づけてみた。




ーーードコダ?




ギクリとして耳からラジオを離した。

間違っても番組のナレーションなどではない、暗く沈んだ重苦しい声だ。


何となく嫌な感じがしたが好奇心に負けて再びラジオを耳に近づけてみる。



ーーードコダ?

ーーードコダ?

ーーードコダ?

ーーードコダ?

ーーードコダ?

ーーードコダ?

ーーードコダ?

ーーードコダ?

ーーードコダ?

ーーードコダ?



重苦しい声はずっと同じ言葉を繰り返している。


何を探しているのか。

人を探しているのか。

物を探しているのか。

何故探しているのか。



()()()()()()()()()()()()()



頭の中を答えの出ない疑問がぐるぐると回って気分が悪くなってきた。


もう限界だ。

ラジオのスイッチを切ろうと思った瞬間、声が途切れた。

息をするのも忘れて耳を攲てた。





ーーーーー()()()()()()





それまでの重苦しいものではない、生々しい粘ついた泥のような喜悦を滲ませた声。


反射的にラジオを床に叩きつけていた。

衝撃で電池が外れて音が止まった。


叩きつけた音に驚いてやって来た祖母に「うっかり落として壊してしまった。今度新しいのを買ってくる」と誤魔化してラジオを回収し、袋に入れて金槌で念入りに砕いてから捨てた。


あの声が何だったのかはわからない。

今のところ私にも祖母にも何も起こっていない。


しかしそれ以来、私はラジオというものが少し怖い。

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