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黒魔術殺人事件  作者: 立花 優
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第十章 カルト教団

第十章 カルト教団


 特に、不思議なのは、この薬は、ナルコプレシー(病的過眠症)とADHD(多動児)への治療薬として厚生労働省から認可されている筈であって、金田少年がそうではないかとメールの中で指摘のあった「サヴァン症候群」や「アスペルガー症候群」や、その類いの症への投与は、全く、意味の無い治療薬なのだそうです。



 これは、私のQ大学の同期で医学部を出て現在公立病院に勤務している精神科の医者の友人に、電話で直接聞いた話だから間違いがありません。



 むしろ、その友人の医師に言わせれば、後天的にせよ何にせよ、万一、金田少年がただでさえ常人の域を超えるような能力を有する事となる「サヴァン症候群」や「アスペルガー症候群」との合併症患者だったと百歩譲って仮定するのならば、更に、それに追い打ちをかけるような強力な向精神薬の、あの強力な塩酸メチルフェニデートを与えるとは、言語道断、人体実験にも等しい危険な処方だとも言っていました」



「ホントに、金田少年は塩酸メチルフェニデート:リタリンを飲んでいたんかね」



「友人の1人が、薬らしき物を飲んでいる金田少年に聞いたら、間違いが無かったそうです。……僕の、聞き込みでは、そうでした。



 それに、金田少年自身もその薬を飲むと、更に更に、能力が飛躍的に向上して、どんな難解な本でもたった1度の読書で理解できた、と友人に自慢そうに話ししていたそうですから……」



「しかし、今までの話が全部真実だったとしても、その医師と、殺された田中江美とは、何の関係も面識も無かった筈やろう?」



「ところが、これも、おお有りなんです。



 田中江美の母親は、躁鬱病の気があって、田中江美自身もたまに鬱状態に陥る事があった事から、中学2年の時に数度だけですけど高崎クリニックの門を叩いています。



 こうして、今回の事件の関係者3人が、高崎登医師と関係があった事が分かったのです」



「じゃ、その高崎医師とは、一体どんな人間なんや。孝ちゃんの考えでは、この高崎医師が今回の事件の黒幕だと、そう言いたいんやろう…」



「私のQ大学の先輩に、ルポライターの五島睦夫氏がいます。彼は、あの毒ガスで有名な某カルト教団関連の本を五冊以上出版しており、彼がそのカルト教団の取材中に、実に面白い話を耳にしたそうです。



 五島睦夫氏が、取材に回っていた時、その時は、あのカルト教団が例の大事件(毒ガス事件)を起こした直後なんですが、あの大事件後、ある有名大学の医学部の学生信者の一人がそのカルト教団を無断で脱会したそうです。



 それがこの高崎登だったそうです。



 その脱退理由が、何と、今の教祖やその側近達のやり方がまだまだ生ぬるい、と言うのが脱会の最も大きな理由だったそうで、その後、高崎登は教団に残る事を選択した信者達に、


 

「私は、もっと、もっと、もの凄い組織に加入するのだ!」と宣言して、その教団を去っていったそうです」



「あのカルト教団より、もっともっともの凄い組織とは一体何じゃ?そんなものがこの世の中に、存在するのかい?」


 

「ええ、五島氏もこの話に非常に興味を持って調査はしたそうです。


 色々な噂話は耳にしたそうですが、何しろその組織は全くの秘密結社のため、組織の名前はともかくとして、加入者数も、まして、国籍つまりその結社の本部が、日本にあるのか、それとも世界のどこか他の国にあるのかさえ、皆目、分から無いそうです」



「まるで雲を掴むような話じゃな。それで孝ちゃんの推理では、その高崎登と言う医師が、今回の事件の黒幕に違いが無い、とこういう推理なんだね」



「そうです。交通事故に遭って頭を打ち、多分それが引き金になっての後天的理由により、普通ならば先天的な病気である筈の「サヴァン症候群」や「アスペルガー症候群」の合併症と、更には「人格障害」も併発してしまった金田少年に、更に、強力な向精神薬を与えて、彼を凶暴化し野獣化させる。



 そして今回の大事件を人為的に引き起こしたのでは、と僕は考えています。


 その際、催眠術を使ったのも間違いが無いと思っています。



高崎医師は、心理療法として催眠療法をも使っていますから、催眠術はお手のものでしょうからねえ…。



ここに、もっと、面白い話もあるがです。

 本年の8月の初め、全国チェーンの某古本ショップに、催眠術関係の本を数十冊買いにきた人物がいたのです。



 で、私が、店員に鈴木昭一教師の写真を見せると、この人では決して無いと、断言していました。つまり鈴木昭一教師宅にあった催眠術の本数十冊は、別の誰かが買ったものなのです。



 それを、鈴木昭一教師宅の書斎や金田少年宅にこれ見よがしに積んで置いておいた。と……どうです。と、すれば正にあのメールの内容そのものの情景がうまく演出できるでしょう。



 つまり、あのメール自体は、結局、多少の作り話があったととしても、そのほとんどが真実だったのではなかったのかと僕は思っています。



 ただ、唯一違う事と言えば、金田少年を鈴木教師が催眠誘導したと言うところです。鈴木教師ではなかったのです。



 高崎登医師こそが、本当の教唆犯だったのです。



 例えば、不思議な事に、鈴木教師が各社に送ったメールアドレスはY社のメールアドレスを使用していましたね。



 鈴木教師はN社の光ファイバーを利用しており自分固有のメールアドレスを持っていたのにそれを使用しなかった事や、金田少年が事件後、解剖手順や特殊な薬品名を鈴木教師宛のN社のメールアドレスにでなく、Yメール上での鈴木教師のメールアドレスに送っているんですよ。



 このYメールは、大手の検索エンジン内で、誰でも簡単に作る事ができます。



 つまり、別の第三者が鈴木教師に成り代わって、メールアドレスを取得する事も簡単にできるがです。ここにも、僕が、鈴木教師も被害者の1人なのではないかと断言する、大きな理由があるがです。



 ちなみに、高崎医師が加入しているとされる秘密結社の名前ですが、「黒い鳥」とか何とか言うらしく、どうも古来から延々と語り継がれてきた黒魔術をその教義の中心に据えているらしいのです。ただし、フリーメイソンや、薔薇十字団とは、関係が無いとか。



 金田少年は何故、あんな猟奇的な殺人事件を起こしたかも、この黒魔術が根本にあるとすれば、その回答は、簡単にできるではありませんか?



 今まで述べてきたこれらの事を全て総合したらどういう結論に至るでしょう。

 どうです、僕の推理は正にビンゴでしょう」



「そ、そうかそこまで調べたのか。


 うーん、こりゃ、完全なスクープやなあ。


 で、孝ちゃんは直ぐに警察に今の情報をたれ込むつもりかね、それとも疑惑の医師の報道として、まず紙面に載せて相手の反応を見るつもりなのかね?」



「いや、どちらにしてもまだまだ時期尚早です。高崎医師のアリバイも確認したいし、それに高崎医師の本当の素顔もまだ僕自身が見ていません。



 本当に、高崎医師が、そのような黒魔術に染まった人間なのか、僕自身が確信が持て無い限り、今までの話は単なる僕なりの推理に過ぎませんよ」



「そうか、まああまり正面から顔を突っ込むと、下手をすると返り血を浴びる事になるかもしれんから、十分に、気を付けて行動しろよ。



 特に、その高崎医師の今回の事件の動機が、その秘密結社と関係しているのならば、なおさら危険な事この上ないからな。



 それと、これは最も根本的な疑問なのだが、一体、その秘密結社に属していたとされる高崎医師は、何故生きたままの美少女を、例え自ら手を下さなかったとしても、金田少年を利用してまでして、あんな猟奇的・残虐的な行為に及ぶ必要と言うか、どんな動機があって、生体解剖したのだろうか?



 これについて、孝ちゃんどう考える?



 これが、今の今まで殺人教唆犯とされていた鈴木教師なら、田中江美に対しての可愛さ余って憎さ百倍だったというのが本心やろうから、その動機はまあ理解できるんやけどのう……」



「その点は、僕も充分に考えました。確かに叔父さんが言われるとおり、あまりに常軌を逸した行動であるだけに、その判断には大変に迷ったところです。ただ、高崎医師も、やはり独身であり、数度だけ診療した、田中江美の美貌に熱を上げていたと言う感触を僕自身は得ています。



 また、Q大学の先輩のルポライターの五島睦夫氏によれば、そもそも高崎医師の入会している秘密結社は、黒魔術によって猟奇的な事件を乱発し、日本ひいては世界の制覇を夢見ている団体らしいそうで、今回の事件はまさにその最初の第一歩だったのではないのだろうか?とそう言っていました。



 現実に、この事件以降、連鎖的にこの日本列島では、猟奇的犯罪が多発しているじゃありませんか?」




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