プロローグ
「なあアル! アルが王様になるなら、俺はアルを陰で助ける役職に就く!」
「それは頼もしいな。楽しみしているよ、リヒト」
二十歳を迎えた第一王子アルシュレイにとって、そう言ってはにかむ弟――第五王子リヒトルディンはずっと守るべき存在だった。
王族は白銀の髪に深い蒼の瞳をしているというのに彼だけは蒼い黒髪に明るい翠の眼をもっており、ほかの王子たちから「出来損ない」などと揶揄され、酷い扱いを受けることもあったからだ。
しかし彼は心を折ることなく、心優しく快活で真っ直ぐに育っていく。
それはアルシュレイにとって衝撃的で、同時に尊敬すべきものだった。
だからだろうか。八歳の差があれどリヒトルディンが親友とまで呼べる存在になるのに時間は掛からず、肩を並べて歩くのもまた当たり前になっていった。
だから自分が倒れるそのとき――リヒトルディンが巻き込まれてしまう、それだけはなんとかしなくては、と。霞む意識を必死で保った。
逃げろ。それだけを伝えるために。
お楽しみいただけますように。




