何でも屋⑨
少女はぷりぷり怒りながら来た道を戻る。
その後ろを難しそうな顔で魔族の男が歩いていた。
「リリアム、2つの国が殆ど同じ事を言っているのだが、この前の記憶操作のやつ、やはりやるのか?」
やらないよと少女はカシムをキッと睨む。
「どう考えてもこっちの国が良くないでしょ!もう少し調べるよ!」
何をそんなに怒っているんだろうと思いつつ、リリアムの後をついていった。
リリアムは何の苦労も無さそうなあの少年王が気に食わなかった。
少しつついただけで動揺するし、あの甘ったれな感じ、一国の王としての責任はないのかとモヤモヤとする。
だが、あの王は素直だからこそ膨よかな男に騙されているのだろう。
あの男をなんとかしないとこの国にも少年王にも良くない。
このまま道を外し続けていたら、いずれ国民からのクーデターも起こらないとも限らない。
まずはあのゲルガという男について調べなければ。
とりあえず、城にいる兵士やらメイドに話を聞いてみることにした。
内容としては、ゲルガの評判について。
するとどうだろう。
何故かすこぶる評判が良い。
ゲルガのせいで色々おかしくなったのではないのか?
先程話した感じだと、ゲルガは傲慢で狡猾なイメージであった。
それを城の者に伝えると、皆首を振ってとんでもないと答える。
「ゲルガ様は皆にとても優しく、この間も私の病気の家族の事を想って休暇をくれたんですよ」
ますます意味がわからない。
では何故皆、目の下に隈が出来、活気がないのだろう。
「現在の王になってからこんな目にあってるんですよ。本当に勘弁してほしいものだ」
あの少年王が悪い。
あの少年王のせいで皆徴兵されている。
あの少年王は私腹を肥している。
などと言う言葉が山の様に耳に入る。
中にはゲルガ様は少年王の子守をして無理難題を言いつけられている、可哀想だという声もあった。
どうにも納得が出来ない。
リリアムは少し考え、ちょっと大胆な作戦を決行してみることにした。