何でも屋①
ーーーカシムの古城。
外壁には様々な蔦が絡まり、本来の色が見えなくなるほど埋め尽くされ、周囲から隠される様に木々も生い茂っている。
何も知らない者が見れば、ただの廃墟の様だ。
そんな城の内部に魔法陣がひかれ、2体の人影が現れた。
「リリアムはあの場所が好きだな」
魔族の男が隣の少女に声を掛けつつ歩き出す。
「わたしがいたところだし、なんか気になるんだもん。
カシムが見つけてなかったら死んでたかもしれないし」
花籠を持った少女が魔族の男を追いかける。
2人は転移された大広間を抜け、食堂の方へと脚を向ける。
今は昼時、カシムは一緒に昼食を取ろうと先程までリリアムを探していたのだった。
長めの廊下を過ぎ、質素な扉を開ける。
すると、2人用としては広めな長いテーブルと椅子が2脚。
何も置かれていないテーブルには白のクロスが掛けられている。
自分達の座り慣れている椅子に腰を下ろし、カシムが指を鳴らす。
厨房の扉が開き、奥から温かい料理を持った人形が出てきた。
人形は器用に料理を置いていき、ナイフやフォーク、スプーンを並べる。
仕事を終えると再び厨房の方へと戻っていった。
「それではいただこうか」
「いただきまーす」
食べている時はお互いに無言である。
リリアムはお喋りをしたいのだが、昔行儀が悪いと怒られて以来、カシムを真似して食事を取る様になった。
彼は彼で音を立てず、綺麗に皿の物を平らげていく。
生まれた時からこうだった……らしい。
食事を終え、ナプキンで口元を拭うと、再び指を鳴らす。
人形が食器を片付け、紅茶を置いて行った。
ここでようやく口を開く。
「それで、何かわかったのか?」
「ぜーんぜん、手掛かりのかけらもないよ」
彼女は自分が何処から来たのか、何者なのかということを調べている。
若干5歳の子供であるが、頭が良いのだろうか、それ以上の行動力がある。
カシムとしては、自分の知識となる様教育するにはどうしたらいいのかと言う具体的な方法がわからなかった為、世界中からかき集めた本をリリアムに読んで聞かせたり、読ませたりしていた。
因みに本は読めるが理解はしていない、というのがカシムクオリティーである。
なので質問を受けたところで自分で調べてみろと彼女自身に丸投げをしていた。
それが彼女の教育上、功を奏したのかもしれない。