勇者
あいつら3人に連れられて、通路を歩いている。
どれくらい時間が経ったのか、それとも経っていないのか、よくわからない。
あのあと、ナイフを取り上げられて、後ろで両手を何かで繋がれて、そのまま歩かされている。
刺された右手の傷口より先はもう傷口の痺れと痛みだけで、もうそれより先の感覚は、ない。
私の眼のふちには、何か汚い塊が淀んでいて、視界もぼやけていて、もう、よくわからない。
歩いているのかどうかすら…たまに、わからなくなる。
もう、道がわからない。もう、1人では、村にも帰れない…。
奴らの一人が話し出す。
「こいつの腕のケガって、治るんです?」
「治んねぇよ。いったん殺せば復活するから、そのほうが早い」
「うわ、エグい」
…嘘だ。村の傷薬でも、セニアさんの魔法でも治る。…治す気なんて、ないんだ。
「場所は?」
「4層で使えそうな場所を見つけてある。誰も立ち入らん」
「いや、…割とコレ、いいっスね。これで、待つこともなく、好きなだけできる」
「だろ?」
そういうと3人の中で一番小柄な、私の近くにいた人が、私の胸のあたりに手をまわした。
…触って、まさぐられる。 気持ちわるい…。
身を捩る。でも、腕が後ろになってるままだから、どうにもできない。
気づくんだ。
…そうか、そうか。「お勤め」って、こういうことだったんだ。お姉ちゃんも、セニアさんも、移住者のとこいって、こういうことを好き放題されて、気分が悪ければ殺されて、また生き返って、期限内同じことを繰り返される。私たちには「祝福」が、あるから。
…そういうことを、していたんだ。きっと、村の中で、私だけが、知らなかった。
みんなが、こんなことを、「仕方ない」って、諦めていたのか…?
…こんなことが、こんなことが、許されていいのか…
私を含む一行は、このままどこかへ向かって歩き続けた。言っていた「4層」の場所にでも向かうのだろう。
私は、しばらくもうなにも意識がなくって、足だけが、急かされるのに従って交互に前に出てた。
しばらくたって、ふっと意識を取り戻した。何か、揉めているような声が聞こえる…
私の耳には、なにも届かない。
濁る目を、前方に向けた。
3人の、別の移住者。
男の人1人に、女の人2人。
小柄なくせにリーダーっぽいお兄さん。長身の短剣を2本差した女性。そして、セニアさんみたいな回復術士の、メガネをかけた女の人。
男の人は、ここの3人より、少し小さい。でも、目が、違う。ヴィトの、目に似ている。
…話し合いは、決裂したのだろうか。
――少年が、逡巡したのち、諦めたように目を閉じて、静かに腰の鞘から背のわりに少し長い剣を抜く。
抜かれた剣のその黒い刀身が世界の暗い光を浴びて、少しだけ輝いた。




