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決意

「もう2人見てると恥ずかしいわ…」


 カリナが呆れたように言った。…そりゃそうだな。


「本来なら2人とも若いな、で済ますところだけど、タマキ数年上だし」


 カリナがニヤニヤ笑って、タマキが本当に、笑顔になって、立ち上がって雪を蹴るようにして歩き出して僕らの前に経った。

 僕もつられて嬉しくなってしまう。


「タマキ、本当に、良かったね」


 …カリナが少し、感傷を込めたように言った。


「…はい」


 タマキが少し、目を細めてうなずいた。



 ちょっと僕にはつかめてないとこもあるけど。結果、よかったのかもしれない。


 でも、まだ、大事なこともある。


「カリナも、来てくれるんだよね?」


「…あ、やっぱそうなる? 邪魔じゃない? 私」


 タマキも支援する。


「カリナさんが居ないとそもそも無理ですよ?」


「あー…、うん…、それは、そうね」


 目の前で深層への挑戦を誓った2人が、シブヤの住人の平均Lv以下だ。そりゃそうだ。

 


 カリナはここで少し真面目な顔になって、僕に尋ねる。


「ねぇ、あきらは、なんのために深層に行くの?」


「え?」


「目的。行って、何を目指すの? ジントみたいに、記憶を残して次の世界に行きたいの? ジントを倒すの? それとも、他に何かあるの?」


 …先になにがあるのだろう。でも、このままでは、何も変わらない。それは確かだ。だから。


「行って、考える」


 そう答えた。


「馬鹿ね。それでタマキごと無駄死にする気?」



「どうせ終わる。それは…わかった。だから、最後までやれることを、する」


 カリナは少し静かになって、座った膝の間に下ろしていた両手の拳を少し見つめた。


「何も知らずに死ねない…か。不思議だね。元の世界でも、いつだって、いつか終わりが来ることはわかってるのに、カウントダウンが始まった途端、焦りだす」


 そして、もう一つ。


「最後の質問。2人は、途中で片方が死ねばその時点でお別れ。このまま1層で2人で最後まで時間を過ごすこともできる」

「ぶっちゃけ、本当にその可能性は高い。それでもいいの? このまま、できるだけ穏やかに、長く過ごすという考えはないの?」


 僕は、本当はタマキの顔を、表情を見たかった。でも、それをしたら、負けだと思った。

 だから、何も見ず、答えた。


「そういう考えはない」


「…少しキャラ変わったね。あきら」


「タマキも、それでいいの?」


 タマキのほうを見た。彼女も、神妙そうな面持ちで迷いなく、でもゆっくりとうなずいた。



「ここに来て、再始動か…。楽しくなったよ。私は、またあそこに挑戦するんだ」


 …例の、40層。カリナやコクトー、そして当時の上位陣が集結して、そして、敗北した戦い。それは、カリナにも、あのコクトーにも、未だに影を残している。再挑戦。そして、今回の戦力は僕とタマキという弱小2人組だ。でも


「あきら、ありがとう」


 …唐突にお礼を言われても、動揺する。


「ん?」


「こんなことがまたできるなんて、思わなかった」


「…そっか」




「改めて、PT結成だね! 3人で一緒に深層目指すぞー」


 タマキが子どものように、演技のように、元気よく声を上げて手を振り上げる。



 …僕とカリナも、一瞬顔を見合わせたあとで、それに握ったこぶしを合わせた。

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