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追放されたxx

 もうだいぶシステムの話でお腹いっぱい感あるんだけどね…。


「事故があった後ね、転校して離れた別の学校に行って、普通に卒業して、大学に入って、そこも卒業して、普通に会社に就職したよ。…高校や大学の頃のことは、あまり覚えていない。…充実してなかったんだろうね」


 タマキの7年。3人の同級生は自分たちの境遇を悲しんでいたし、それは当然の反応ではあるのだけれど、突然同級生を全て失ったタマキだって、よほど辛かったはずだ。


「上京して就職したんだけどね。あんまりうまくいかなくって。わからないことに取り組むのが怖くってさ。暗闇の中で恐る恐る手を伸ばしては、何かにぶつかって怒られる。そんな日々だったよ。だんだん、誰にも相談できなくなって。頭もなにかいつもギリギリまで砂が溜まっていて今にも溢れそうな感じでね。激務でもないのに、限界だった。出社できなくなって、そのままやめちゃった」


 なんというか、もうタマキはこちらの感情への配慮がまるで無くって、聞いている人が嫌になり反応もできないような話をどんどんしてくる。

 

「やめた後はしばらく1人で暮らしてたんだけどね。……次の行動をしなければいけないんだけど、その理由もよくわかんなくなって。ある時部屋でお酒を多めに飲んでさ、衝動的に△※×■▲□…」


 もうなんか最後は僕の頭が理解を拒んだ。



「気がついたら、病院のベッドに居てね。入院してた。そこからはホントに、ずーっとぼーっと過ごしていて」


「でね、あるとき、お父さんが、『SS』のことを教えてくれたんだよ。同級生がいるはず、って」


 カリナはここに来てタマキに話しかけた


「ちょっと待って、そんな理由で娘をこんな世界に?」


「そうだよね。普通は、無いよね。でも…、たぶん回復しない私の姿を見て絶望したんだろうね。それで、もしかしたら何か変わるきっかけになるかもしれない、って期待したんじゃないかな。そもそも中の様子とかそんなに知らないってこともあるだろうし」


「お父さんは、ツテを頼ったのかお金払ったのか知らないけど、特別に私をSSにログインできるよう手配してくれた。期間は最大で2週間。1週間が1サイクル20年で、元の世界に戻るのに1週間。合計2週間」


「戻るときには記憶の処理が大変みたいで、今の所ログアウトは世界の終了のタイミングになるの。私がこの世界で死んでしまっても同じ。その場合も20年経過後に自動ログアウトすることになる」



 ……そうか。僕が例えばタマキと仲良くなって、仮に付き合ったりしても、世界が終わるときには僕の記憶は無くなり、タマキは元の、タマキにとって苦痛でしかなかった場所に戻るのだ。…僕と永遠に別れて。


 ――ひどすぎないか。僕の異世界転生は。見渡す限りバッドエンドしかない。なんで、なんで他の物語は、こんなじゃなくって、みんな幸せそうだったのだろう。


 見るからに気落ちしているであろう僕にタマキが話しかけてくる。


「ねぇ、高城君」


「…うん」


 ちらっとタマキの顔を見た。何かこの会話が始まってから、初めてタマキの顔を僕は見たのかもしれない。


 タマキの顔は、僕とは対照的で、凄く晴れやかな笑顔だった。


「高城君は、私が当日学校を休んでたこと、知ってた? 知らなかった?」


 ……これだ。正直、知らなかった。出席とかの時に聞いてはいたのだろう。でも、頭に残っていない。


「…知らなかった」


「やっぱりそっか。知ってて聞かないのか、そもそも知らないのか、どっちなんだろうって思ってた」



「…ごめん」


「謝ることじゃないよ。一人の女子が欠席したかどうかなんて、興味なかったんだよね」



 …冷たい人間なんだろうか。僕は。


「牧野君は、知っていたと思うよ。ああいう状況だから聞かれなかったけど」


「…そっか」


 僕は、消え入るように小さく、返事をした。



「…あるところにケーキ屋さんがありました」


 不意にタマキが変なことを言い出す。


「?」


「みんな財布を持って入っていきます。ショーケースにはいろんなケーキがあります。モンブランとか、ショートケーキとか、シュークリームとか、タルトとか。まぁ、なんでもいいんだけど」


「お店に入ったみんなは、どのケーキがいいかな、あれもいいなこれもいいなと選びます。ふと隅っこの棚が1つ空っぽです。あぁ、今日はあのチーズケーキは売ってないのか…ってなります」


「…何のたとえ?」


「高城君はお金も電子マネーも持っていないんだよ。いや、少なくとも『持っていない』って思ってる。だから、ケーキは好きなのに、毎日毎日、店を、店内を羨ましそうに見ながら素通りする。だからチーズケーキが売ってないとか、全くわからない」


「そう…かもね」


 わざわざこんな例え話を使ってまで言うほどのことか、とも思いながら、僕は肯定した。


 タマキがここで少し語気を強めて言った。


「違うよ。全然違う」


 なんだそのノリツッコミみたいなのは……。


「そもそもお金で買われるケーキじゃないし。一方的に選ばれる側とかありえないし。フェミニストさん激怒案件だよ」


「そこか」


 少しクスッとなってしまう。タマキも何か楽しそうだ。


「こっちも、もちろんそっちを見てる。どんな人なのか、どんな良いところ、悪いところがあるのか」


 …深淵を見る者は、また深淵からも見られているのだ。みたいな言い回しが頭に浮かんだ。


「高城君はね、もし、お金がなくても、良いところを一杯持ってる。私にはわかるよ」


「え?」


「最初のメガネの件、自分の剣よりも私の杖を優先したところ、…杖はすぐ使わなくなっちゃったけどね。私がみんなと違う時期に来ていた理由を聞かなかったのも、私から言うのを待ってたんだよね。…牧野君にルーターを渡すのを断ろうとしたのは、牧野君に黙って従うとカッコ悪い、と思ったのかな?」


 …色々と見透かされていて恥ずかしい。そうだよな。タマキは内面は7つ年上なんだもんな。見た目は同じくらいになってる…みたいだけど。



「…さて、色々話したけど、まだ、私と深層に行きたい?」



 …僕と一緒に進む。残りの時間をそのことに使うって、彼女は決めてくれたんだ。



 ――僕はタマキを見て、頷いた。

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