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3人のともだち

「珠希!? あれ、珠希じゃない!!?」


「え? え…ほんとだ!」


 見知った制服の3人の女子はこちらに駆けてきて、タマキを囲む。


 …相変わらず僕の存在感は薄いな。これでも同級生なんだぞ。悔しいから言われるまで黙ってるけどな。


「珠希…だよね!? 珠希もここに来てたんだ?」


 タマキに語りかけたのは3人のうちでももっとも長身の「谷口 杏奈(タニグチ アンナ)」だ。僕の知ってる限り、タマキとは一番仲が良かった…と思う。その他の2人は「須藤 恵梨香(スドウ エリカ)」と「伊藤 朱里(イトウ アカリ)」だ。よく僕が名前を覚えていたもんだ。


「アンナ! 良かったーー! 3人とも本当に」


 そう言ってタマキは少し目頭を拭う。


「ほんとだよ! 3人大変だったんだから」


 そういって、谷口は他の2人に目配せする。他の2人も笑顔だ。


「あれ…? そっちのって、高城くん?」」


 谷口さんがようやく僕に気づく。


「…あ、どうも、久しぶり…」


 僕は実に地味な返事をした。しょうがないだろ。話したこと無いし。


「なーにー? 2人一緒に旅してたの? 仲良しー?」


 突っ込んだのは須藤さんだ。割と流行りものとかうるさそうなタイプ。苦手なタイプだな。


「違うよ! べつにそういうんじゃ…。ここのカリナさんと3人だったし…」


 …タマキ、そんなに否定しなくてもいいぞ。…否定しないでおねがい…。


「カリナさん? 多分2人に比べてこの世界の熟練者ですよね!? 2人をありがとうございました!」


 谷口さんが体育会系っぽい挨拶をする。この子、こういう感じなんだよな。さっぱり系。ショートカットな髪型に運動神経抜群。部活のバレー部で活躍している姿をするとドキドキする。


「あ、別に…」


 突然威勢のよい話の振られ方をしたカリナが少し焦りながら地味な回答をする。


 …あ、カリナは僕と割と同類だ。少しクスッとする。


「3人はどうして一緒に?」


 須藤さんが返答する。


「あ、たまたま…ね。ワタシと朱里がここ来てすぐ会えて。ナガノについてからアンナと合流して。ほんとたまたまだよ」

「珠希は?」


「あ…、私はね、だいぶ前にここに来てて…結構苦労したんだけど、最近高城君とこのカリナさんに会って…、そうそう、ハコネで牧野君とも会ったよ!」


「え? 牧野もいんの? バスケ部の?」


「そうそう、その牧野君!」


「良かったねぇ朱里〜♪ 牧野もいるってさ〜」


「…からかわないでよ」


 答えたのは「朱里」と呼ばれてる伊藤さんだ。


「あれ? で結局牧野とは一緒じゃないの?」


「あ、牧野君とは結局別れちゃって…、でも、3人がナガノに居るってのは伝えたから。近いうち行くって、言ってた」


「そっか…。一緒に来てくれたらよかったのにね」


「ちょっと色々忙しいみたいで…ね…」


 …嘘ではないな。嘘ではない。あのコクトーの下では暇ではあるまい。



 女子が4人も集まると、会話は盛り上がるもので、僕とカリナ次第に4人から距離感を感じて、物理的な距離も少しだけ離れた。


 爪弾き者2人の中で、カリナが僕に言う。


「あきらは別に同級生なんだから、会話に混ざればいいのに、どうして私と同じ距離感なのよ?」


「いや、そういうけどさ…正直無理だろ…」


「あきらの学校での立ち位置がわかるよ…可哀想にねぇ…」


 そういってカリナはニヤッと笑った。つられて僕も、ちょっと笑ってしまう。少し辛いことでも、いたずらっぽく笑ってくれる人が居た途端、それは小さな幸せになったりするんだ。



 …そして、その話になったんだ。


「あれ…、そういえばあの日って、珠希、学校休んでなかったっけ…?」


 言い出したのは伊藤さんだ。谷口さんがそれに同意する。


「あ、そうだ。体調不良とかで休んでたよね!? あれ? …じゃぁあのバスにも乗ってない…?」


 本当に、本当に、タマキがそれを言われた途端、痛々しいほど、硬直したのが、わかる。


 そして、声を絞り出す。


「あ…うん」


 須藤さんが、タマキに畳み掛ける。


「え? それって、どういうこと? バスの事故っぽいのは、ここに来るのには関係ない…ってこと?」

「ねぇ珠希、…珠希は、いつまで「元の世界の記憶」があるの?」


「え…えぇ…」


「教えて? 事故のことは知ってるの? …どこで知ったの? 私たちは、どうなったの?」


 結局、クラスメイトと会うと、こうなることがわかっていたんだ。僕も、そしてきっと、…タマキも。


 僕は、タマキを気遣うふりをして、波風を立てないように、嫌われないように振る舞って、結局「最もタマキが傷つく」選択肢を選んだのだろうか。


 会話を静止しようとした僕の服の裾を、カリナが無言で掴んだ。


 …もう、彼女たちのためにも、止めるべきじゃない、というサインだ。


 もう、タマキは両手を自分の胸を抱くように両手を交差させて下を向いたまま、ピクリとも動かなくなっていて。…僕は、それを見ている時間が永遠のように感じた。


「…珠希、私との仲でしょ? 隠し事は…なしだよ」


 谷口さんがそうタマキに語りかける。いたずらを隠す子どもを、諭す大人のように。



 タマキは、そして、静かに語りだしたんだ。

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