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祭りの終わり

 2人が消え、場には元の5人、僕とタマキとカリナ、そしてコクトーと牧野が残された格好だ。


「やれやれ、相変わらず芝居めかした奴だ」


 今まで黙っていたコクトーが、気だるそうに背を壁にもたれさせて呟いた。…お前も大概だろ、と思うぞ僕は。


「あんた、あいつの言ってたこと知ってたの?」

「カリナさん、少しは落ち着いてください! 深手なんですから」


 怪我のことを忘れて「ジント』との会話にちょくちょく参加していたカリナが、タマキにたしなめられ、少し落ち着きを取り戻す。


「知ってたのは3割くらい…かな。ただ、意外じゃない。そんなもんかと思ってたよ」


 コクトーは壁から背を離し、後ろ手に手を組んで、散歩するかのように歩き出す。



「で? 高城はあいつの言うとおり、向かうんだろ? 深層」


「え?」


 そうか、僕は向かうの…か…? なんのために? あいつに会うため? 会ってどうするんだ?


「行くんだろ? そういう奴だから、ジントがあんなに入れ込むんだろうからな」


 そういって、頬をあげて軽く笑う。


「コクトーさん、俺たちこれからどうするんです?」


 牧野がコクトーに尋ねる。


「ん? あぁ、しばらくは変わらず、だな。時間が無い無いというが、年単位である。しばらく考えてみてもいいだろ。これからの身の振り方ってやつをな」


「正直、あんなこと聞いて、これからどうするか、わからないっすよ」


「マナブもこの世界来たばっかりだからな。いい機会と思って、ゆっくり考えるといい」


「…高城、オレも40層より下に興味がある。あいつの言ってた『複数の方法』の発見を願っている」


 そういって、コクトーは牧野の手を引き、助け起こす。


「またな。近いうちに、会うこともあるだろ。メガネ、カリナ、悪かったな。ゆっくり休んでくれ」


 そういって、牧野とともに暗がりの通路に歩を進めていく。



「牧野君!」


 去っていく牧野をタマキが呼び止める。


「佐原…」


「聞いて? ナガノの街には、3人の同級生がいるみたい。須藤さんと谷口さんと伊藤さん! …一緒に行こうよ!」

 

「そっか、須藤と谷口と伊藤…。悪いな。ちょっと落ち着いたら、きっと行く」

「3人に、よろしく伝えといてくれ。…近いうち、絶対遊びにいくって」


 そういって、手を振ってまた歩きだす。

 僕とタマキと戦った負い目もあるのだろう。


 ――ジントとその仲間のことも、コクトーと牧野の関係も、僕はまだ、知らないことばかりだ。



 その後、僕らはカリナに肩を貸す形で、ハコネの街へ戻った。

 


===


 ハコネの街には粗末だけど個室ベッド付きの部屋があって、僕らはコクトーが残した魔石もあったので奮発してそこに泊まることにした。


 カリナのベッドの脇にはタマキが居て、ヒールをちょくちょくかけ続けている。カリナはここに着いてからはすっかり眠っていた。


 回復魔法(ヒール)は怪我の程度や術者の力量にも依存するらしい。術者の力量に見合わないくらいの深手だと、時間をかけて少しずつ治療するしかないらしかった。


 僕は、久しぶりに横になったベッドの上で、「ジント」の言っていた言葉を反芻しながら、ぼんやりと天井を見つめていた。



「すごい1日になったね。高城君」


「…そうだね」


「牧野君は、残念だったね」


「…そうだね」


 僕は、何となく気のない返事しかできなかった。……「イレギュラー」「細かいことの答えはすぐ近くにある」「旅行者(トラベラー)」。……このあたりの奴の言葉が、タマキのことを指して言っていたようにしか、僕には思えなかった。


 タマキは、あの言葉を聞いて、どう思ったんだろうか。


 ――聞いても、いいのだろうか。


 聞いてしまうと、何かが壊れてしまうような、そんな気がする。


 カリナはタマキを疑っていたけど、今回の件でも、タマキに不審な点はなかった。もう、信頼していいと思う。…だからこそ、タマキ自身が話したくなるまで、待っても、いいんじゃないか。そう思う。


「タマキ、これから、どうしたい?」


「…カリナさんのこともあるし、カリナさんが安定したら、私も少し休まないと。2,3日はハコネに滞在かな。そのあとは…、やっぱりナガノ、向かってもいいかな?」


「もちろん。でもなんで? もともと行くつもりだったでしょ?」


「……高城君は、もう深層、向かうのかなって、思ったから」


「それに…、牧野君が『もう、クラスメイトとか、関係ないだろ』…って。…本当は、本当はもう、そうなのかなって。いつまでもこだわっている私が、少し変なのかな、って」


「そんなことないよ」


 …そんなことはない。そんなことないはずだ。


「…3人も、タマキと会えれば、きっと喜ぶよ」


「そうだね。…そうだと、いいな」



 そう言って、タマキは相変わらず薄暗い、空のない窓の外を見つめた。

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