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コクトウ ヒカリ

 牧野とタマキは割と楽しそうに話をしている。正直、何か元の世界の男が出てきてタマキと仲良く話をしている状況は面白くないぞ。


「あきら、嫉妬してる場合じゃないから。周囲警戒。ほんとはタマキにもあいつと距離取ってほしいけど」


 カリナに釘を刺される。


「え? 街の外なの?」

「あぁ、うん、外にも安全な場所があってさ、そのへんで過ごしてる。すぐだよ」


 そういってハコネの街をでて通路を歩き出す。



 いくつか通路を曲がる。そして、少し開けた場所にでる。通路が少し膨らんだような形をしている。広さは学校の教室くらいだろうか。「高瀬」の姿はない。


「ここ?」

「あぁ、ここ」

「高瀬君、は?」


 答えが一瞬無くなる。


 「きゃっ!!?」


 カリナはそれを察して素早く前進しタマキの胴に腕を回して後ろに引張り、牧野と距離をとった。


 タマキはカリナの腕がみぞおちくらいに入ったのか背を曲げてゴホゴホと咳き込んでいる。


「やっぱりか…」


「やっぱ警戒されてたか、ギルドのおっさんにはもう少しうまいことやるよう言っとくべきだったな」


「…牧野、どうして」


「いや、別に危害を加えるつもりとかはねぇよ。お前らが無事で、再会できたことはホントに嬉しいし」


 牧野は少し片足で地面をこするような仕草をしながら言った。


「拾ったんだろ? 『通信機器』。たぶんモバイルルーターとかだと思うけど。上からの命令でさ。素直に渡してくんないかな」


 僕が少し黙っていると、カリナが話しだした。


「あきら、黙って渡して。命より大事なものなんて、無いんだから」


 『黙って渡す』ことには、同意していたはずだ。


 でも、牧野とタマキが仲良さそうに話していた姿が脳裏に浮かんで、素直に従うことが、僕には、前の世界と同じように、牧野への敗北を認めることのように感じた。


「……『断る』と言ったら?」


「あきら!? 何言ってんのバカ!!」


 牧野が舌打ちをする。


 そして、向こう側の通路の暗がりから、小さな人影が現れる。



「…断っても、いいんだぜ」


 少女のような姿。学ランのような上にスカート。不釣り合いな大剣を背中に差した出で立ち。


 フラッと、まるで軽い、よろけるのを愉しむような、足取り。


 少女はカリナの方を向いて言う。


「なぁ、『探索者(エクスプローラー)』のカリナ。そうだよな?」


 少女はカリナのことを『探索者(エクスプローラー)』と呼んだ。知り合いだろうか。


「コクトー…」


「懐かしいな、本当に。時間が経ったものだ」


 僕は恐る恐るカリナに聞いてみた。


「…カリナ、知ってる人?」

「…昔ね。後で、話すから」


 カリナは僕の質問を流して、「コクトー」とよんだ少女に向き直る。


「…あんたの相手をする気なんてないから。ルーターはすぐ渡す。それでいい?」


 少女は左腕を背中に回して留具を外し、右手にて大剣を構え、軽く振り回した。


 本来相当な重量がでる大きさだろうが、少女の前では、片手でもまるでおもちゃのステッキでも振りまわしているような軽やかさだ。


「それだと、つまらないだろ? たまには、本気で戦わないと」

「…あんたみたいに、人と戦う趣味はないわ」


「そうそう、そこの『高城』のせいで機嫌が悪いとかじゃない。お前を見ていたら、少し体が疼いたからな。ルーターだって別にオレが欲しいわけじゃないしな」


 カリナはこいつと戦うと相当苦しいのか、舌打ちを一つして少し後ずさる。



「高城君、あの娘…、Lv36 職業ソードマンだって」

「36!?」


 解析魔法(アナライズ)したタマキが告げる。カリナはLv28。相当に分が悪いはずだ


「カリナさん、逃げたほうが!」

「絶対に、逃げられない。あいつが『戦う』と言うなら…」

「誰なんです!? あの娘…」

「昔一緒の作戦で戦ったことがあってね。『第2旅団』というPTのリーダーやってたの。あいつ。…参加した面々でも最強クラスだった。化物」


「紹介感謝する。カリナ。そこの2人、安心しろ。ちょっと遊ぶだけだからな。殺したりはしない」


 少女「コクトー」は僕とタマキを向いて笑顔で言う。そして立ち尽くしていた牧野に向かって指示を飛ばす。


「マナブ、お前はその2人と遊んでろ。殺すなよ。お前の訓練にもなる。オレはこの女とPvPする。『高城』、ルーターを人質にするみたいな下らない真似はするなよ。即座に2人とも殺すからな。離れた安全なとこにでも置いとけ」


 身勝手すぎる。…でも、戦う以外の選択が見つからない。


「あきら、タマキ、もうあいつの言うとおりにしよう。逃げられないし、逃げても不興を買うだけ…。殺されは、絶対にしないから」


 こうして、僕らが望まない戦いが始まった。

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