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牧野への疑惑

 ハコネの街に到着。想定通り8時間程度だっただろうか。足はだいぶ疲れた。


 ハコネは通路が次第に大きくなっていって、ダンジョンであることが信じられないような広さに広がっている。その奥半分ほどを深さもわからない水をたたえた湖が広がっていて、通路の出口から緩やかな下りの斜面を経て湖畔まで達している。通路から斜面に向かう道の両側に石造りの建屋が並んでいる。


 ハコネもシブヤほどではないけど人の往来があって、見かけない顔である僕らを少し興味深そうにすれ違っていった。


「ようやく無事到着だね。高城君」


 学校を休みがちで体が弱かったタマキには、この道中の長さは苦痛だったと思うけど、タマキは笑顔で僕に言ってきた。


「そうだね。何事もなくてよかった」


 これからの行動について、カリナが聞いてくる。


「さて…、2人とも、これからどうする? 今日は休む? その『牧野』って人探す?」

「探したいです!」

「タマキは、そうだよね。あきらも、それでいい?」

「いいよ」


 僕も肯定した。正直疲れた気持ちはあるけど、タマキが乗り気だしね。


 僕らは、まずはハコネのギルドに向かうことにした。ハコネやナガノにも、シブヤと同様のギルドがあるらしい。ギルドは湖に一番近い場所の建物にあるらしく、僕らはそこへ向かった。


 石造りの強固そうな建物だ。扉などはなく、ダンジョンの壁がそのまま長方形の建物の形を描いているような、そういうデザインだ。


 この建物も含め街全体の建物はこの石の色で統一されており、全体がどことなく陰気な雰囲気を漂わせる。僕らはその建物に入る。僕らは名前とシブヤから来たこと、目的を告げてギルドの人に牧野のことを聞いてみた。



「マキノ マナブさんねぇ……。いるね。確かに。1週間くらい前に登録した人だよ」


 ギルドで番をしていた、小柄で小太りな男性が答えてくれた。タマキが少し焦ったような口調で問いかける。


「その人の今の居場所ってわかりますか!?」

「……さぁねぇ。ギルドではそこまでは関知してないからねぇ」


「…登録したときの担当はあんた? よかったら覚えてること、教えて?」


 カリナが冷たい目で問い詰める。この目に見られると誰でも少し萎縮してしまうだろう。


「わかった、わかったよ。そうだねぇ。身長の高い若い短髪の男だったかな。……そうそう、妙なこと行ってたよ。ギルドの素材の下取りに、『通信機器』が出たら教えろ、と」


「通信機器?」


「……具体的に何を指してるのかはわからないけどねぇ」


「それ以外に、何か特徴はなかったですか?」

「…うーん…、特に目立ったことはなかったねぇ。あ、でも1人だったのは珍しいかな。新人は誰かに連れられてここまで来ることが多いからねぇ」


「そうですか…。『通信機器』が見つかったときの連絡方法とかは?」


「特に言ってなかったよ。ここにたまに顔を出すつもりなのかもしれないねぇ」


 やりとりは手詰まりだ。これ以上は情報が得られそうにない。背を向いた僕にギルド員が声をかける。


「あ、そうそう…、『通信機器』には何か心当たりあったりするかい?」


 ――通信機器、僕らが拾ったルーターもそれにあたるか。


「……えぇ、シブヤからここに来るまでに、モバイルルーター? みたいなのを拾ったんで、これは『通信機器』っていえるかもしれませんね」


「……そうかいそうかい、彼が探してるのも、そういうもんかもしれないねぇ」


 ギルドではそれ以上の情報を得られなかったので、僕らはギルドから出た。少し離れたところで、唐突にカリナが声を上げた。




「あきら! この、馬鹿!!!」


 唐突に傍らのカリナがマジ顔で激怒していて、僕はビクッ!となった。


「…えぇぇえ? 僕、何かしたっけ?」


「話の流れ的にも不自然だし、ヤバい可能性がプンプンでしょ!? どうしてこう馬鹿なの」


 牧野探しに積極的なタマキまで、カリナに同意する。


「まぁ、そうだよね…」

「タマキ、この馬鹿に説明してやって」


 話を振られたタマキが少し疲れたようにため息を1つついて、僕に話しだした。


「彼もここに来て間がないだろうし、『通信機器』が出現するかどうかなんて、1人でわかるかな?。スマホとかならわかるんだけど、『通信機器』って指定するのも謎。……それに、私たちの拾ったのが、お目当ての物だとしたら、あまりにもタイミング良すぎない? まるで、私たちが拾ったことを知っているみたい」


 タマキはまた言葉を続ける。


「そして最後に、ギルドに下取りされた『通信機器』を確実に入手したいなら、お金を握らせてでもギルドの人に依頼するよね? 情報共有とか取り置きとか横流しとか」


「あっ…」


 そこまで考えが及ばなかった。


「でっ…、でもさ、これで牧野とつながる糸口になるなら、それもいいんじゃないの? それに、このモバイルルーター、使えないし、手に入れてもしょうがないんじゃないかな?」


 カリナが冷たく答える。


「…『牧野』って奴に『通信機器』の調達を依頼した人物がいるとすれば、あんまり関わりたくない連中の可能性が高い。……電源切れなのはわからないけど、この世界、バッテリーとか別口で手に入れている可能性だってある。電源切れだからって、なんともならないとは限らないね。……変な奴らとつるんでいて、ギルドの人もグルなら、2,3日以内に私たちのところにお客さんが来るかも。素行の悪い連中を連れて」


「…牧野君は、そういう人ではないと思うけどね…」


「わからない。ここに来て、人格が変わる人は多い。誰だって、裏の顔が出てくる。あの世界では出せなかった真実の顔なのかも、しれないけど」


 カリナが言った。




読了ありがとうございます。

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