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道中

 ハコネへの道中はおおよそ8時間。1時間5キロで進むとすると、大体道中40キロ。直線距離ならもっと少ないのだろう。


 僕ら3人は、カリナを先頭にゆっくりと進んでいく。


「このダンジョンって、どれくらい広いの?」

「だいたい四辺数十kmくらいじゃないかって、言われてる」


 それでも相当な広さだ。とても人手で作れるダンジョンじゃないだろう。カリナは続けて話しだした。


「1層は広い方。深い層にいくと、少しずつ狭くなってる印象がある」


「カリナさんって、深層に詳しいですよね。前は結構潜ってたんですか?」


 聞いたのはタマキだ。カリナの様子的には、なんとなく触れてほしくなさそうな気配がしていたけど、タマキは率直だな。


 出発して30〜40分。このあたりは大きな吹き抜けのような構造となっていて、数十メートルはありそうな円柱形の大穴の周りにそって階段が下方へと伸びていた。


 元の世界では、こんな風景をみることはまず無いだろう。



 ――こんなに下っても2層につかない、というのがおかしいんだよな。1層と2層は、単純に深さではなくって、あくまで別フロアが「専用の階段」によりワープできるだけ、という考えがしっくりくるのかも。


「……何年か前までは、結構強豪のPTに所属しててさ」


 僕らは少し応答に困って、カリナの次の言葉を待った。


「深層も目指してた。リーダーのLvは35くらいだったかな。5層の『ベースキャンプ』で暮らしてた。あぁ、『ベースキャンプ』っていうのはね。この世界の人のうち、深層と脱出を目指して行動する人たちの拠点となってた街」


「……『なってた』?」


「今は、どうなってるかわからない。数年行ってないし、その時のメンツも大半やめちゃったからね」


 ――やめてしまった理由が、「40層」なんだろうか。


「……前に言ってた『40層』に関係ある話?」


 僕は、聞いてはいけないようなことだけど、恐る恐る、聞いてみた。


「……まぁ、そうね…」


 円柱形の吹き抜けの底にたどり着く。ここは円形の広間になっていて、丁度円の中心を挟んで向かい側に、黒い通路がぽっかりと穴を開けていた。



「高城君、あそこ! なにかいるよ」

 

 僕たちの右手、壁の近くで、犬のような姿の生物が何頭か集まり、我先にと獲物にかじりついていた。


 カリナが一瞬で僕らに指示を飛ばす。


「2人とも戦闘態勢! あきらはモンスター召喚! タマキは一旦後ろへ!」


 指示を受けて僕は「モンスター収納」のスキルを解除してワニ*2、熊*1のモンスターを呼び出す。ワニを前衛に、熊はタマキの護衛に回す。訓練ではタマキを前衛に置いたりしていたけど、本戦では別だ。そして一番違うのが、カリナの位置取り。前衛においたワニと同一ラインに位置している。カリナ初の本気モードである。


 モンスターの集団で、こちらに気づいた奴からバラバラとこちらへと駆けてくる。


 「対象はウルフ数体。強さはワニと同等。注意して!」


 カリナはワニと接敵して一瞬動きが鈍った瞬間に刀を突き立てて排除する。もう1体のウルフがワニと接触してもつれるような戦いをはじめる。3体目はワニ斜め前に出ていたカリナにジャンプして襲いかかり、カリナはもう一本の短刀を抜き出して一瞬で中空のウルフの喉笛に突き刺す。


 カリナは最後に来た1匹を(恐らく)あえて見逃し、中衛の僕に流す。飛びかかってくるウルフを僕はショートソードを横に構えてその勢いを殺す。一瞬離れた姿勢からウルフはすばやく態勢を立て直し再度こちらの右半身側に飛びかかる。僕は体をよじれさせて回避したが、右腕を牙が掠め赤い線が腕に走る。


 ――ぐっ…


 着地したウルフに対し、着地点を見切っていたタマキが鉈を力任せに振り下ろす。鈍い音がして、ウルフの体が動かなくなる。


 カリナはその間に接戦となっていたワニの支援に入り、こちらも一撃で刺殺する。



 結局僕は1匹も仕留めずに戦闘終了となったのはちょっと寂しいけど、とりあえず戦闘終了だ。


 タマキのLvが10に上昇。タマキは接戦を繰り広げた2匹のワニにヒールをかけていた。


 カリナがウルフが集まっていた場所に近づく。


「人だね。可哀想に」


 僕とタマキが近寄ると、ウルフが集まっていたところには元人間だったようなナニかが散らばっていた。


 カリナは慣れているのか、死体には触らないようにさっくりと荷物や服を調べる。


「誰だか、わかります?」


 聞いたのはタマキだ。僕にはなんというか、死人を漁るように見えて、少し嫌な気分になった。


「わからない。特定できるアイテムがない。恐らく途中の階段から落ちたみたいね」


 カリナは凄惨な死体にも動じる様子はない。タマキは遠巻きに口を抑えて目を背けていた。


「荷物は少し探ろう。何かあるかもしれないし」


 カリナは近場にあった小さな鞄を探っている。やっぱり僕にはまだ抵抗があって、カリナに尋ねてみた。


「こういうの、日常茶飯事?」

「…そうね。よくあること。助け合い。生き残った人が、生き延びないと」


 薬を2,3、魔石の欠片を2個ほど見つけ、回収してまた歩き出す。円形の広間から出口に向かう。出口の先はまた他と同じような石畳の道が続いている。僕らはギルドで手に入れた地図を頼りに歩いていく。


 交差路では、大きめの石や木片に紙が貼り付けられてある場所が多い。アルファベットが一文字記載してある。それが地図の交差路と対応していて、なるべく旅行者が道に迷わないような工夫がしてある。これが出来上がるまでにも、多くの苦労があったことだろう。


 通路中で骸骨姿の敵と遭遇。ゲーム的にはスケルトンといった名前だろうか。茶色い骨格にボロボロの長剣。カリナが言うにはそれほどの強さはないらしく、カリナの短剣の前には敵ではなかった。戦闘終了後、奴らが持っていた剣を見てみたけど、とても実用に耐えれそうにはない。自分で使うのはやめておこう。実戦で折れても困る。


 突如、大きな広間に出る。広間の中央部分は床が大穴となっていて底も見えない。数十m離れた向こう側とこちら側の岸に橋が架けてある。もうこれ元の世界で作ろうとしたらどこで作っても費用に見合わないだろう。


 橋には手すりができていて、それは金属の細工が施された形をしていた。


 橋のまんなかには大きめなギフトの箱がある。僕らは駆け寄ってそれを向こう岸まで運ぶ。それなりに大きめだ。いつもいつもくだらないものが多いけど、見つけると少しワクワクしてるのは否めない。


 タマキが箱を開けて、入っていたのはこんな感じ。


 ・スノーボード

 ・ジャージ上下

 ・モバイルルーター

 ・フローリング掃除シート

 ・ごま油 1瓶


 もう油とか要らないし。でもカリナが言うのは、フライパンも出るときは出るから、油も需要はあるとのこと。スノーボードは2人に「次元収納」とかいうスキルがあるとはいうものの、限度もあるので置いていくことにする。


 モバイルルーターはここで外部とつながる予感もしないし、そもそも電源ボタンを押しても何も反応がない。バッテリー切れか、それともそもそも壊れているのかわからない。電源さえあれば外と通信できるとでもいうのだろうか。


 僕らはこの広間で仮眠を取って、また歩き続ける。足にだいぶ疲れが出てきたが、僕らはハコネへたどり着いた。

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