戦う聖女
翌朝
カリナは僕とタマキに本日午前の重点項目として「タマキの近接戦闘能力の向上」という絶望的な宣言をした。
「そもそも今のタマキって、支援魔法かけたあとは、誰か傷つくまで暇でしょ」
「えぇ……、まぁ、そうです…ね…」
タマキも、この「プリーストを全否定する発言」に絶句して言葉を失っている。
「タマキ、『プリーストは後衛』とか思ってない?」
「え、えぇ、イメージ的には、そうかなって思いますけど…」
「違う!! 全ては『この世界でどうか』で考えて」
「……というと?」
「この世界、プリーストでも何でも、剣でも槍でも銃でも装備できるから。挙げ句、プリーストだからって力のステータスが上がらないとか、誰もよくわからない」
「私としては、攻撃力も防御力も、そこまで職業に依存しない。神無き世界の聖職者よ」
「は、はぁ…」
タマキももう生返事だ。
それにしても今、「銃」って言ったか? いや、ギフトに入ってることはありえるのか? ありえるのか…。
というわけで、隊列としてタマキの護衛用にしていた熊をむしろタマキの後ろに配置して、タマキを前面に押し出す。
昨日はタマキを守るモンスターを1匹配置しろと叫んでいたけど、「タマキが即死しないレベルになった」ことで、先生の方針転換なのね。
その後、モンスター出現のたびタマキは杖を振り回し、ワニに噛まれ、自身のヒールで回復する。その様子を見ながらタマキを盾に僕やテイムしたワニが攻撃をしかけるという構図となり、午前中をひたすら戦闘に費やした。
「満足満足。3層でここまで安定して戦えるとは思わなかった」
カリナがそう発言したのは、4匹のワニが同時に出現してPTが恐慌して、すんでの思いで殲滅した後だ。
タマキは立ち上がることもできず横になったまま自分にヒールをして、足の怪我を癒やしている。
カリナは息一つ切らさず、いつもどおりだ。鬼教官め。
午前中一杯死闘? を繰り返し、僕とタマキはLv9に上昇した。カリナは相変わらずLv28だ。
どうやら、高Lv帯のLvアップ条件は非常に厳しいようだ。
「よし、これで一旦終わりね。シブヤに戻って一泊して、明日定期市覗いてから出発ね」
カリナが訓練の終了宣言をして、撤収準備をはじめる。
「いよいよだね〜」
タマキはほんとうに嬉しそうで、その顔を見てるとこっちまで嬉しくなる。
僕らは3層を後にして、来た道を戻ってシブヤまで戻る。道中でギフトボックスが1個。
『
■ステータス
・高城あきら(あきら) モンスターテイマー Lv9 ※Party Leader
・佐原珠希 プリースト Lv9
・橋本桂里奈 シーフ Lv28
■新規スキル
特になし
■テイミングモンスター
ワニ * 2
熊(タマキ護衛) * 1
■ギフトボックス回収 * 1
・500mlペットボトル スポーツドリンク * 1
・350ml缶チューハイ * 1
・排水口ネット
・鉈 * 1
・紙粘土
・木綿豆腐 * 2パック
』
ギフトボックス内の鉈は、カリナの提案でタマキに装備させる。ちなみに、危ないから「普段はカバーかけてしまっておけ」との指示付きだ。
カリナが言うには「杖で魔力が上がってるという事実が経験上ない」とのこと。鉈を持って襲ってくる聖職者とか、どこのホラー映画だよ。
でも、午前中の荒療治でタマキも少し前衛の感覚が身についているし、護身の意味でも良い結果だろう。
無事シブヤに帰りつく。僕らは手持ちのアイテムから適当に価値がありそうなものを市場の掲示板に貼り出す。
「ギルドに出すよりは、市場で交換できたほうがいいから。そのあとギルドへの売却を考えましょう」
カリナの提案に僕らは従い、少し長めの付箋を作って掲示板に貼り出し、翌日の定期市にて販売。
瓶に入った回復薬を2個と毒消しを1個。タマキが居るから回復には多少ゆとりがあるけど、何かのために持っておいたほうがいい。
その後、ギルドでハコネへの地図を購入。
もともと僕とタマキがハコネに向かうと聞いたときには反対していた受付のリカさんも、カリナと一緒に行くことを知って、笑顔で送り出してくれた。
目的は僕とタマキのクラスメイトである「牧野 学」の捜索。ハコネまでは順調にいって8時間程度の道のりだ。
地図は手書きのものをギルドがさらに手書きで複製している。少し乱れはあるし、分岐も必ずしも目印があるわけではなく、時折遭難し音信不通となる者が出るらしい。道中は迷子にも注意が必要だ。




