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暗黒の魔法

 「さて、と。授業を始めるにあたって、一つ言っておかなきゃいけないことがある。」

 今までとは違う空気を纏ったアラン。

 その口から紡がれた次の言葉は、生徒たちにとっては青天の霹靂であった。

 「お前たちの教科書のすべてに書いてある、音楽と魔法の定義なんだが・・・根本的に間違ってるぞ。」

 「「「「・・・⁉」」」」

 教室内に、ざわめきが渦を巻く。

 この人は一体何を言っているのかと。

 中には、非難めいた眼でアランを睥睨するものまでいる。

 「先生、それってどういうことですか?」

 一同の疑問を代弁して、アウルが口を開いた。

 「どうもこうも、俺が今言ったとおりだ。お前たちの言う音楽と魔法の定義は、実際には違うんだよ。」

 そう言うと、アランは生徒たちに背を向け、チョークを手に取ると文字を書き始めた。 


 ―――音は魔法を含蓄するものなり。音楽魔法とは即ち、音楽の含蓄する魔法を魔力で高めることなり。―――


 「よっと・・・これがお前たちの今まで習ってきた定義だろ?」

 アランはその文字をチョークで小突いた。

 

 音はそれそのものに魔力が内包されている。 音楽魔法とは、音の含む魔力を、自身の魔力で高めることである。


 リラスト魔法学院音楽科の誰もが知っていることであり、魔法と音楽を学ぶド基礎なのだ。

 教科書の一番最初のページに書いてある、最も重要なことなのだ。

 それが・・・間違っているとでもいうのか?

 「間違っている、では語弊があるな。この定義はもともとある複雑な定義を、万人に理解できるように簡略化したものだ。ようは、分厚い辞書の中から大事な項目だけを抜き出してまとめたものだと思ってくれて構わない。ただ、俺が言いたいのは、その簡略化した内容が、音楽魔法のあるべき姿の要点にそぐわないことなんだよ。」

 アランは、やれやれと頭をかいて続ける。

 「音楽魔法は、音楽の持つ魔力を高めるものではない。意図的に制御するものだ。お前たちも知っての通り、音楽の内包する魔力は、確かに人の精神深層下部に働きかける。だがそれは、魅了という形でしか表されない。お前たちが今学んでいる音楽魔法は、他者の精神支配を目的とするものだ。・・・かつての第二次サルン戦争でも、音楽魔法は相手の精神を崩壊させる目的で悪用された。今お前たちがこの他社の精神を犯す目的での魔法を学んでいることは、第三次サルン戦争が勃発した場合に、お前たちを魔法使いとして送りだすためだ。―――あんまりこんなことは言いたくなかったんだがな。おまえたちも、それくらいの覚悟を持って、この学校に入ってきているはずだ。」

 アランは、ちらりと薄色の髪の少女を見つめる。

 だが、彼女は俯いたままアランと顔を合わせることはなかった。

 「―――話を戻すが、精神支配における音楽魔法は、魅了の面にしか働かない音の魔法を制御して、様々な面で効果を発揮させるものだ。喜怒哀楽はもちろん、嫌悪感、幻覚、精神崩壊、等々、お前たちの魔力の振るい方次第でどんなものにだってなる。」

 「ということは、あくまで音楽魔法は、戦争のためにある、ということですか?」

 アウルが恐る恐る口をはさんだ。

 「ああ、そうだ。というか、この学院自体、第三次サルン戦争を懸念して、魔法使いを育成することを目的に建てられたものだ。おまえたちだって、それくらいはわかったうえでこの学校に入って来てるんだろ?」

 「それは、そうですけど・・・」

 「ま、そう暗くなるな。たしかに、魔法は暗い力だ。だけど、それを生活に役立てている奴だって、この学校の卒業生には大勢いる。つーか、まともに魔法使いんなったやつなんて、数えるほどしかいない。だから、あんまし気にすんな。ただし、これだけは忘れるなよ。」

 アランは、声のトーンを落とす。

 「魔法は、お前たちの力の使い方次第であること。それから、魔法の発展の歴史を忘れちゃいけないこと。」

 キーンコーンカーンコーン。

 その時、授業終了を告げるチャイムが鳴った。

 「お、終わりだな。じゃあ次の時間は、その魔法の歴史について教えてやるよ。」

 そう言うと、アランは教室を後にするのであった。

 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませて頂きました! 私はこっちが好きなのでこの続きが読みたいです。 なんかこのまま放置しておくにはもったいない気がします。 もし時間がある時でいいので連載再開の時は教えてくださいねd(≧▽…
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