激動の幕開け
―――あくる日。
それは、突然の出来事だった。
一時間目の授業でのこと。
「えー、つまり。この音化式は重音のバランスによって決まるわけであります。皆さんが知っているように、音楽の魔法というものは、大変繊細なものになっているわけであります。」
いつものように、でぶっちょ先生が、前で講義をしている。
サナは、今日も死んだ魚のような目でその様子を見ていたわけだが・・・
その目が、驚愕に見開かれることとなる。
「―――その重音のバランスを決めるのが、あなた方の個々人の―――うっ・・・!」
突然、講師は胸を押さえ、苦しそうに呻く。
「ど、どうしたんですか⁉ 先生‼」
「大丈夫ですかっ!」
教室にどよめきが走る。
講師は、胸を押さえたまま、脂汗を大量に流して・・・そのまま前のめりに倒れ込んだ。
ドサ・・・
鈍い音が、床に冷たく木霊する。
・・・
一瞬の静寂。
だが、生徒たちは現実を認識する。
「「きゃぁああああああああああああああああっ!」」
「「だ、だれか、来てください‼」」
ダムが壊れるようにして、悲鳴が爆発する。
その日、この事件は、学校内を大きく震撼させた。
この講師が、悪い生活習慣が原因で心筋梗塞になったことは、後日、全校集会で知ることとなった。
これが、サナにとっての、激動の幕開けである。




