ラッキースケベといえばお風呂と相場がきまっています
目を開いて凍り付いた。
俺は風呂の中にいる!しかも裸の女性と一緒!
さらに胸に挟まれている!でかい!
何このラッキースケベ。神様が急いでいたのはこれのせいか?
やってくれるぜ、神様!
あ、女性の顔がこっち向いた。
目をつむっているがかなり美人だ。
「私は諦めが悪いんですからね」
何のことだろうか?
女性が目を開く。
目が合った。
互いに見つめ合ったまま、時が過ぎる。
「あの・・・ソータ?」
女性が震えるように声を出す。
俺の名前はここでもソータなのか。
言葉はわかるし、至れりつくせりだなぁ。
「手は・・・動く?」
震えたままの声で問いかけられた。
湯から両手を上げて、にぱにぱと握ったり開いたりして見せた。
てっきり乳児として転生すると思っていたが、意外と大きいな。
4歳・・・5歳かな、子供を持ったことないからわからんな・・・
「足は・・・動く?」
考えている間に次の質問が来た。
思い切りバタ足をしてみる。
湯舟の湯が跳ね上がる。
跳ね上がった湯はおねえさんの頭に降り注がれた。
女性がわなわなと震えだした。
やべ、やりすぎたかな。
と思った途端に体が浮かび上がるのを感じた。
おねえさんは立ち上がって、俺を掲げた。
目の前に女性の白い肌があらわになる。
丸見え!色々丸見えですから!おねえさん、自重して!
俺の心の叫びを無視するように、おねえさんは
くるくると回転しだした。
ぎぃいやぁー。怖いぃぃぃー。
自分の身長の2倍の高さで振り回される怖さたるや。
子供はこれキャッキャッと喜ぶんだろうけど、
25歳感覚の俺には相当怖い。
それに浴槽内でそんなにくるくる回っていたら・・・
ほら、ひっくり返った。
浴槽に大きな水柱が上がる。
水没を覚悟してきつく目を閉じる。
水に落ちる感覚がいつまでもないため、おそるおそる目を開くと、
おねえさんが沈んでいた。
俺を掲げたまま沈んでいたから、俺は水没せずに済んでいる。
すげえな。石川五右衛門か?
おねえさん起きて、溺れちゃうよ!
俺の心の声が届いたのか、おねえさんはがばっと起き上がる。
そのまま俺を抱きしめて声を上げる。
「がんばったね、がんばったね!」
俺はまた豊満な2つの丘に挟まれた。
一体どんな状況だったのだろうか?
「このままじゃいけないわね。お風呂を出ましょうね」
抱きしめられたまま、俺は風呂から出た。
そこからはされるがままで、身体を拭かれ、服を着せられ、
布団に寝かしつけられた。
横ではおねえさんが添い寝している。
自分の右腕を杖に横臥の態勢だ。
左腕は俺をあやすためか、布団の上からポンポンと
俺の胸あたりを優しく叩いている。
天井の板張りを見ながら思う。
一つに屋内の雰囲気は和のテイストが強い、風呂とこの部屋に限れば
そこかしこに木が多く使われている。しかも貧しい感じはしない。
きっちりと大工の手間仕事が見て取れる。
もう一つは添い寝しているおねえさんのことだ。
この世界での俺の母親ってことでいいのだろうか?
お風呂でのことを考えると、何かしら俺にトラブルにあって
上手いこと克服できたってことなんだろう。
天涯孤独で生きてきた俺にとって、肉親との距離感がわからない。
保育士が家族でないと認識したのはいつのころだったか。
そんな俺がおねえさんの家族を演じ続けることができるだろうか。
俺は横をむいた。
そういえばさきほどから胸へのポンポンが止まっている。
おねえさんは腕の杖を外して眠っていた。
どうやら寝落ちしたようだ。
何か掛けてあげたいのが、あいにく俺の布団は
おねえさんの下になっていて動かせない。
どうしたものかと周りを見渡すと、
子供が一人こちらを見ていた。