表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/61

できるかな、はてさて

会合はお開きとなって、俺は厩の壁に腰を下ろして考え中。

目の前ではバンとファブリカが、かあさまに稽古をつけてもらっている。

ファブリカは大層嫌がったが、にこにことしたかあさまに引きずられる様は

ドナドナの歌を思い起こさせた。


バンがいつもどおり、空に舞った。

完全に慣れてしまった自分が怖い。


さて、整理してみよう。

ファブリカに職人を紹介するためには、メルカトさんに商売のアイデアを

提供する必要がある。

ただし武器と思しきモノは禁止。


蒸気機関、アルキメデスポンプ、電球、発電機・・・

前世の記憶を使ってって、あんまり知識がない。

発電機に至っては、作り方も原料も良くわからん。


かーみーさーまーって、ここで頼るのは間違っているよな、うん。

『聞かんのかい』という神様のつぶやきが聞こえたような気がするが

スルーする。


時間もあまり掛けられない。

製造や証明に半年も1年も掛けていては、ファブリカに悪い。

それほど時間を掛けずに、新しいアイデア・・・か。


お約束のリバーシって手もあるが、遊戯系を望んでいる空気じゃないんだよな。


お、今度はファブリカが宙を舞った。

あの巨体を投げるんだ。

っていうか、明らかに投げたいだけだよね、かあさま。


あ、鳥に当たりそうになった。

容赦ないな。あの高さではいつもの藁山では・・・

ああ、特別でかくしてあるのね。


ん、鳥・・・鳥ねぇ。


俺は助清っている2つの藁山の小さいほうへ向かう。

丁度バンが頭を抜いて、子犬のように頭を振って藁を払っていた。


「お、どうした?」

バンが俺に気づいた。

俺は身振り手振りで説明する。


「なるほどな、じゃあ巣箱を作ろうか」

相変わらず理解力が半端ない。

そこからバンが動き出す。


ファブリカを藁山から引きずり出し、俺の作りたいものを説明。

設計をさせている間に、トウマとカナメを呼んで材料調達を依頼。

倉庫のある木材を引き釣り出す。


トウマが力に任せてカット、カナメが細かい部分を数る。

ファブリカの指示に従って組み立てる。


俺は喋れないし、ファブリカはコミュ障レベルの小心者、

コミュニケーションに難があるが、そこはバンが上手いこと立ちまわる。


あれ、いつの間にかヨウゼンが作業に加わっている。

バンが頼んだの?

自分から入ってきたって、まぁいいか。


日が傾いたら、作業終了。

朝が来たら、作業再開。

数日かけて完成した。


先端のない円錐形の巣箱棟。

鳥が1羽入るケースが円状に繋がった2段構成。

地面との設置部分にはケースがないが、これでいい。


「じゃあ、鳥を捕まえないとな」

バンが次の作業を指示する。


鳥とはいっても雀でもカラスでもいい訳ではない。

鳩、できればカワラバト希望。


前世の鳩は、町中で我が物顔でポッポーいっているが、

この世界では狩猟対象でもあり、そう簡単には見つからない。

そもそも高層部に巣を作るから、人里で見るのはレアだ。


偶然の遭遇を期待していたら、時間がいくらあっても足りない。

ここは神様の力を借りるしかない。


神様のナビに基づいて村中を探索。

見つかることは見つかるが、捕まえられない。


大きな虫取り網のような道具を作ってみるが、

兄弟4人でかかっても、全く捕まらない。

焦れたカナメが弓を取り出したので、慌てて止めた。


数回の失敗を経て、一度休憩がてら家に戻ると、かあさまが出迎えてくれた。

胸に何か抱いている。


鳩だ!

かあさまが鳩を抱いている。


全員でとり囲んで、疑問と羨望のまなざしを向ける。

かあさまは俺たちのリアクションにご満悦のようだ。

「巣箱に入れましょうね」


鳩はきょろきょろしているが、全く逃げる様子がない。

水と餌を入れた巣箱に鳩を入れると、バンが疑問を口にする。


「どうやって捕まえたの」

「手で」

かあさまが事もなげに言う。


まっさかぁ、とトウマが呵々と笑う。

「あら、本当よ」

かあさまがぷぅ、と頬を膨らます。


もう一回やってみてもいいわよ、というかあさまの言葉に従って

俺たちは5人で鳩探索を再開した。


神様のナビがあるので、10分ほどで鳩は見つかった。

かあさまは俺たちに動くなと指示したうえで、鳩に向かって歩き出した。


無造作に歩ている様に見えるが、なんともいえない違和感を感じる。

鳩は背後から近づくかあさまに全く気が付かない。


鳩に手が届く位置まで行くと、流れるようにしゃがみこんで、

包むように鳩を両手で捕らえた。


鳩は、なになに、という感じできょろきょろしているが抵抗はしない。

そのままお持ち帰りする。


その後、かあさま方式を4人で試すが、誰も上手くいかない。

そらそうだ。

ここが前世であっても上手くいく気はしない。

焦れたカナメが弓を取り出したので、慌てて止めた。


気を取り直して、かあさまに鳩捕獲をお願いする。

サーチアンドキャッチを繰り返して、

ほどなく全ての巣箱は鳩で満室となった。


さあ、ここからスタートだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ