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老け顔は年とってから若く見られるらしいね

帰り道は大げさにいえば、ちょっとしたパレードだ。

ヨウゼンが先導して、ファブリカが後についていく。

ファブリカの肩にはバンが乗り、バンの肩には俺が乗っている。

肩車に肩車を重ねた形だ。


帰り道に肩車を提案したのはバンだ。

ただファブリカを連れて歩いては、悪いようにも解釈できる。

悪人として引っ立てられているとか。


そこで肩車をして歩くことで、ファブリカが無害であることを

多くの人に見てもらうという訳だ。


狙いは当たった。

少し歩くと、行きでは家に閉じこもっていた子供たちも、

興味につられて、家から顔を出し始めた。


またその親もヨウゼンがいるからか、警戒を薄めいく。

しばらく歩くと、結構な数の村人が遠巻きで俺たちを見ている。


「ソータ、手でも振ってやれよ」

バンの声は棘がある。

上に乗りたかったのね。

仕方ないじゃん。俺じゃバンを支えられない。


ファブリカの足がピタリと止まる。

見てみると、2人の幼児が彼の足にまとわりついている。

肩車がしてもしいらしい。

彼にとっては初めての体験なのだろう、完全にフリーズ状態だ。


慌てて幼児の親と思しき大人たちが引き剥がしにかかる。

俺とバンは目を合わせて、ファブリカから飛び降りた。


「乗せてもらえよ」

バンが子供たちに声を掛ける。

周りの大人は困惑げにヨウゼンに目を向ける。

ヨウゼンは保証する、と言わんばかりに大きく頷く。


ファブリカは俺に促されて、一人の子を肩車した。

肩車された子はご満悦できゃっきゃっと声を上げる。


俺たちはまた歩き始めた。

見物人たちの距離感はかなり縮まり、子供たちは

ファブリカの後についてくる。

肩車の順番待ちのつもりなのだろう。


先頭を歩くヨウゼンはあえて歩みを緩めた。

おかげでスピードは大幅に遅れたが、並ぶ子供たちは

全員ファブリカの肩に乗ることができた。


最後の一人が乗り終わるころ、家が見えてきた。

この頃には、近隣の村人まで野次馬で集まっている。

子供たちは誰も帰ろうとせず、ファブリカを取り囲み

抱っこや肩車をねだっている。


結局、日が沈む頃までファブリカが相手をして

ヨウゼンが解散を宣言することで終了となった。

子供を食べるとかいう噂は、完全に払拭できたようだ。


「任務完了だな」

バンがドヤ顔だ。確かに手を振る子供たちの姿をみると、

効果はバツグンだ、と言わざるを得ない。


とはいえ辺りはどっぷりと日が暮れて、これから話をするのか?

と思っていると、ヨウゼンがファブリカに声を掛けた。

「今日はうちに泊まりなさい」


今日は食事をしながら、簡単な話をして、明日はメルカトさんに

あってもらうという段取りにしたい、ということだ。


「いいだばか?」

ファブリカ、こっちに聞くんじゃない。

手のひらをヨウゼンへ向けて、聞く向きを変えるよう促す。


「よろしい、でだばい・・ございですか?」

しどろもどろになりながら、ファブリカがヨウゼンに問いかける。

ヨウゼンは笑いを噛み殺しながら、「もちろん」と答えた。


家ではかあさまが食事の準備を終えていた。

今日の食卓は、いつもより賑やかだ。


「これは、凄いわねぇ。」

ファブリカの弓を見て感心しきりなのは、かあさまだ。

弦を引いては離し、反動で弓が震える音を何度も繰り返しては、

賞賛の声を上げる。


「色々な部材を組み合わせているのねぇ、何で張り付けているのかしら?」

掲げて見てみたり、寄って見たりと弓を色々な角度と距離で見ている。


「ちょっと今から撃っていいかしら?」

「かあさま、いい加減にしてください」

かあさまの興奮がピークに達した頃、カナメの不満もピークに達していた。

「これは私が見るように言われたものです!」

カナメが声を上げると、かあさまはしゅんとして、動きを止めた。

しおしおとカナメに弓を手渡した。


「他のものは作れないのかな、剣とか槍とか」

直接攻撃派のトウマが問いかける。

少しためらって、ファブリカが弱弱しく首を横に振る。

「鍛冶はやったことがないだば・・・」


「興味はあるのかい?」

がっかりと首を落としたトウマをついで、ヨウゼンが問う。

ファブリカは目を輝かして、ブンブンと首を縦に振る。


「ではメルカトには、教えてもらえそうな鍛冶職人を口利いてもらおうか」

メルカトはファブリカのコップに自らの酒を注いだ。

「村に職人がいるのはありがたい。子供たちにもいい経験になるしね」

と続けて、ファブリカに飲むように勧める。


『あ、それは・・・止めたほうが・・・いい・かな』

神様から歯切れの悪い声が聞こえる


彼は素直にコップの中身を飲み干した。

おお、いい飲みっぷり・・・

と思った瞬間、彼は盛大にひっくり返ってしまった。


あまりに予想外に動きにメルカトの動きが止まっている。

かあさまは素早い動きで、ファブリカに駆け寄ると、彼の首筋に手を当てる。

その後安心したように一息つくと、ペチペチと頬を叩く。

「大丈夫?お酒飲むの初めて?」

彼はゆっくり頷いて応える。


「ちなみになんだけど・・・」

バンが首をひねりながら問いかける。

「あんた、年いくつ?」


「・・・じゅう・・さん・・さい・・ぐぅ・・」

なんとかそれだけ答えると、そのまま眠ってしまった。


未成年かよ!

しかも13歳って!


全員の目がヨウゼンに向かう。

ヨウゼンは、これまでに見せたことがないほど狼狽していた。

「すまない、流石に13歳とは考えもしなかった」


ヨウゼンのあまりな正論に皆シンクロして頷くしかなかった。

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