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初めての面接の時、緊張で屁を連発したのはいい思い出(落ちた)前編

初っ端長いので分けます。


 十年前、エベレストの七合目付近でダンジョンが発見される。

 ある登山家チームがビバークにと入った洞穴がそれだった。

 彼らは洞穴に入ってすぐ、違和感に気付く。

 何かがおかしい。

 思いのほか奥まで続くように見えるその穴の入り口で、チームの面々は意見が割れる。つまり奥まで調べようと言う者と疲れたから休もうと言う者だ。

 実際得体の知れない洞穴に、このよくわからない違和感。何と言うか、拭えないのだ。違和感が。本能が訴えかけてくるというか・・・

 しかし休まないといけないのもまた事実。ここまでチームの内三人がリタイアせずに来れている。これは凄いことであり、それだけエベレストというのは過酷な環境なのだ。なんせ休むのにも体力を使う。ここで無駄な動きをするというのはそれ即ち死を意味する。

 結局三人は、入り口付近に特に動物の足跡等も見当たらないということで、捜索ではなく休むことを決意した。

 拭えない違和感と寒さ、そして外にごろごろ転がっていると言われる供養もされていない人の死体。それら全てが体力気力をゴリゴリ削る中、三人は身を寄せ合い、チョコレートを一口齧る。少し休んだらすぐに出発しよう。誰が発言するでもなく、それは三人の共通意見であった。

 生憎と外は雲脚がよくない。吹雪く前に次の避難場所をと、誰かが発言したその時、洞窟の奥から違和感の正体が姿を見せる。正確には違和感の一部でしかないのだが、この時の三人にそれを知るすべはなかった。


 ユニコーンだ・・・


 誰ともなく放たれたその言葉を聞く者はいない。三人が三人とも、そのあまりの美しさに見惚れていた。

 額に聳え立つ、まるでダイヤででも出来ているんじゃないかと思わせる荘厳な一角。

 毛並みは雪よりも白く、美を詰め合わせたような芸術的筋肉。

 体の周りにはなぜか、オーロラが発生している。息をするのも忘れるとは正にこのことだろう。


「ブルルルルルル・・・」


 ユニコーンの声にハッと我に返った一人が、咄嗟に持っていたカメラのシャッターを切ったことを、誰が責めようか。


「ヒヒ――――ン!」

 突然のシャッター音とフラッシュに驚いたのだろう、ユニコーンが前足を挙げて嘶く。

 なぜか、言葉が通じるとでも思ったのか、シャッターを切った者がユニコーンに弁明する。


「あ、いや、すまない、驚かせるつもりはなくてその、あ、あまりにも奇麗だったからつ——」


 ぼひゅっ


 唐突だった。反応できなかった。瞬きをする間に目の前のユニコーンは消え失せ、音のした方へ振り向くと、ダイヤを思わせるその奇麗な角は血に染まり、手足頭の吹き飛んだ仲間の肉片が突き刺さって持ち上げられていた。

 彼は他の者より少しだけ前に出ていたのだ。運が悪かったとしか言いようがない。


「———わ、わあああああああああああああ!!!!」


「!!!、ばかっ———」


 カメラを持った男が、錯乱し絶叫するもう一人の仲間に振り向くが、その時にはもう、血に染まった角に、新たな肉片が仲間入りした後だった。


「!!!!!?!??!?、!」


 最後の一人となった彼は、今にも叫び出しそうな口を必死に抑えつけ、震える足に喝を入れる。


(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい)


 後退る彼の位置を音で把握するユニコーン。どうやら目の前でぶら下がっている元仲間だった物たちが邪魔なようだ。幸いに、と言っていいものかは判らないが・・・

 幸いと言えば、ここは入り口付近。抜けそうな腰を後ろへ傾け、そのままくるっと反転し、倒れこむように出口へ駆ける。


「ブルルルルルル・・・」


 先ほどまで見惚れていた自分を叱りつけ罵りたい。その元凶たるユニコーンはというと、角に刺さった肉を邪魔そうにブンブン振るが、根元まで刺さっていて少々まごつく。


「フウッ!!フウッ!!フウッ!!フウッ!!」


 出口までほんの数歩だというのに息が切れる。この一歩が千里ほども遠い。とても鍛え上げられた登山家とは思えない。それ程の異常事態なのだろう。

 緊張のあまり、半ば競歩気味に出口へと辿り着いた時、背中で爆発が起こる。


「!!、、、ッッ、、!、?、、ヵッ、、ハァッ、、!?!!?!」


 何が起きたか分からない。突然の衝撃と無重力感。ゴロゴロと転がっていく視線の先にユニコーンを捉える。

 邪魔な肉片を取るのが面倒になったのだろう、そのまま突っ込んできたはいいものの、狙いを外し、しかしその衝撃波で自分は吹き飛ばされたのだと理解した。


「ヒヒ――――――――――――ン!!!」


 先の衝撃で角が顕になった獣が、山を転がり落ちる自分を一瞥する。

 それはまるで、どちらが獣か解らなくなる、とても理性的で冷めた瞳だった。


(・・・助かっ、た、?)


 山を転がり動けない自分を確認すると、ユニコーンは洞穴の奥へ引っ込んでしまった。


 正に奇跡といえるだろう。

 その後、吹雪き始めた山路で、偶然通りかった別の登山チームに救援を呼んでもらい、彼は一命を取り留める。

 凍傷と背骨の骨折、全身の打ち身は酷いものがあったが、意識ははっきりしており、記者がユニコーンの写真を見ることになったのは、あの悪夢のような出来事からおよそ五日経ってのことだった。


 はじめは何を馬鹿なと、人死にが出ているのに不謹慎だ、いや彼はまだ錯乱状態と言っていた者達も、そのうち考えを改めざるを得なくなる。


 世界各地でダンジョンが頻発し始めたのだ。


 それは一日に数ヵ所、もしくは数日に一ヵ所というペースで、地震と共に現れた。

 洞穴型、塔型、城に地下道。後に確認出来ただけでも千件を超える。

 何だこれと興味本位で中に入った者で、生還した者の言を聞くに、どうやら化け物の巣窟だというにわかには信じがたいことも、世界中で起これば阿鼻叫喚だ。


 しかしその状態も長くは続かない。

 化け物が外に出てこないのだ。

 そして偶然生還した者が、中で金や鉄を拾ってきたと言う。

 これには各国も待ったをかける。もしやこの奇妙な現象は金になるのではないか、と。


 さらに極め付けは《ステータス》の存在だ。


 誰が言ったか「ステータスオープン」

 それも一人ではない。

 何人もの人間が《ステータス》を表示させたと言うのだ。

 ステータスの存在は主に、ネットを通じて瞬く間に全世界へと拡散される。

 起こりは特に日本が顕著であった。世界が恐慌に陥ろうとする中、まったくサブカルチャーの猛者共には頭が上がらない(敬礼


 こうして世界は激動の時代へと躍進する。

 中でもステータスの存在に各国は震撼した。戦争が起きるぞ、と。

 検証の結果、化け物を倒せばLvが上がり、身体能力が向上。おまけにスキルだ。

 スキルはLvアップ時に獲得するSpで各自の選択できる項目から獲得するか、もしくは自身の経験により獲得できる。

 このスキルの効果が凄まじいもので、例えば硬化系のスキルをとればミサイルに耐え、諜報に向いたスキルをとれば、育てなくとも一流スパイが量産された。

 各国はこれを受け、人材の育成に躍起になり、国間の睨み合いは熾烈を極める。

 結果、先進国を筆頭に、探索者と呼ばれる職業が『当たり前』となるのに二年と掛からなかった。


 探索者の基本理念は『自由!稼げる!自己責任!』

 国としては実力者を野放しにすることは適切でなかったが、ダンジョン発生から国家資格樹立までの一年での法の整備、改正、特に遺族への補償等どうするかというのは間に合わず、それよりも逸早い資源回収と人材の育成に重きを置いたが故のこの探索者理念は、自然と各国で共通し、人間の浅ましさを露呈した。

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