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ダンジョン攻略物語  作者: ノジー・マッケンジー
50/52

ダンジョン49

本日は4話連続投稿です。

こちらは2話目。

10階にある重厚な扉の前に2人して並び立つ。

…緊張で手が震えてきた。


こんな恰好悪いところリコに見せるわけには…。


何とか震えを止める為反対の手で押さえようとしたその時、俺の震える手を柔らかいものが包み込んだ。


「…大丈夫、あれだけ頑張ってきたんだもん。私たちなら大丈夫…でしょ?」


そう言ってリコがこちらを見つめてくる。


その手は俺の手を優しく握ってくれている。

手から伝わる暖かさで若干緊張が解けると同時に、また気を使わせてしまったと自分を情けなく思う。


しかし少し落ち着きを取り戻したことにより気付いてしまった。



よく見ると、リコも震えている。



どれだけしっかりしていたとしても、やはり恐いものは恐いだろうし緊張だってするだろう。


それに気づいた俺は、思わずリコを抱きしめてしまっていた。


「あっ…。」


思わず「やっちまった!?」と思ったが時すでに遅し。

もうこうなったらなるようなれだ!


「ありがとう、リコ。そう、あれだけ頑張ってきたんだ。きっと大丈夫に決まってる。絶対に、絶対に二人で乗り越えよう!」


抱きついた勢いで一気にまくしたてる俺。

いきなりの事で若干戸惑っていたリコだったが、俺の言葉に小さく「うん…。」と返事をし、その手を俺の背中にまわしてくれる。







しばらくの間そうしていたが、どちらからともなく、だが若干名残を惜しむように離れる。

目の前には顔を赤く染め、はにかんだ表情でこちらを見つめる美少女。

おそらく俺も同じような顔をしてるのだろう。


何だか非常に甘酸っぱい空気が周りを漂っており、そのまま身を委ねてしまいたい気持ちがどんどん大きくなっていくが、ここへ来た目的はこの扉の向こうへ進むことである。


心を鬼にして必死でこの気持ちを抑えこみ、当初の目的を果たすために気持ちを切り替える。


「もう震えてないな。」


「…うん、ありがとね。」


抑えても抑えてもあふれ出そうなこの気持ちは、此の扉を突破した時に取っておくとしよう。

俺たちは同時に扉に手を振れ、勢いよく押し開けた。





























そこは何もない、真っ白な空間だった。

辺りを見回しても何もない…。

この真っ白な世界に1人だけ取り残されたような、そんな感覚を味わい思わず大声を出そうとした瞬間に、世界は開けた。


そこは自分が元いた世界。

岩に囲まれたダンジョンの中ではない。

空には澄み渡る青空と暖かな日差し。

辺りを見渡せば、程よく均等に配置され、緑濃い葉っぱを茂らせた木々。

そして所々汚れているが基本的には白い、四角い建物。


そう、ここは私が通っていた学校だ。


ふと視線の先に良く見知った顔が映る。

よく見知ったどころではない。最近は見れなくなったが、毎日のように鏡で見ていた顔だ。


そこへ二人の男が近づいてくる。



ああ、これはあの時の…。


直感的にそう感じた。




男はそのよく見知った顔、つまり私にしつこく話しかけてくる。

声は聞こえないがよく覚えている。

確か最初は一緒に遊ぼうって誘われてんだけど、断ったらしつこく迫ってきて…。



男はついに私の手首を掴み強引に引っ張ってきた。

しかし私が抵抗した為バランスを崩し、たまたま後ろにあったロッカーの角で後ろ頭をぶつけ、結局救急車で運ばれることになってしまった。

学校側や大半の人は不幸な事故だと言ってくれたが、一部の人間は私のせいだと陰口を叩く人もいた。


嫌な事を思い出させてくれる…。そう思っているとまた風景は変わり、今度は街中の風景を映し出した。

今回もさっきと同じく私がナンパされたのを断った時の映像だ。

この時は助けてくれようとした人とナンパしてきた人が取っ組み合いの喧嘩になって、最終的に警察沙汰になっちゃったんだよね…。



この後も、何とも懐かしく自分でも忘れていたような過去の映像を見せられ続けた。

一貫してその内容は、私にも非があるような内容に仕上がっている。

ちなみにこの空間に入ってきてから体の自由が利かない。

まるで、過去から目を逸らすなとでも言っているかのように。



つまりこれはアレだ。精神的に揺さぶってきてるな。

そう思っていると今度は、辺りが最近見慣れた岩の壁へと変わった。

終わった?と思っていると岩の壁からもう一人の私が現れた。しかもニワトリの姿で。

どうやらもう少し続くらしい。



もう一人の私はこれまでの出来事を再現するかのように動き、そしてそれに合わせ守さんまで現れた。

2人のやり取りを見て、さっきまでの映像で少し荒れていた私の心が少しづつ穏やかになっていくのを感じる。


「…もし、もし俺に迷惑や危害を加えないって言うのであれば、一緒に付いてきてもいいが…どうする?」


ああ、懐かしい…。

私たちの共同生活はここから始まったんだ。

感慨深くその様子を見ていた私だったが、次に私が発した言葉を聞いて飛び上がるほど驚いた。


「……フフッ、やっぱり男ってちょろいわね…。」




 …………え?

私、そんなこと考えてなんか…



うろたえる私を見てもう一人の私はニヤッと笑った気がした。




それからすぐに場面は変わり、私たちの過ごしてきた日々が映し出されたがその度にもう一人の私は、私が思っても無い事ばかり口にした。

その視線は最初私に向けられているのかと思っていたが、微妙にずれている気がする。


一瞬気付かなかったが、一つの可能性にたどり着いた時、私の体に電流が走った。

まさか!と、そう思い動けない体を懸命に動かそうとするも体は一向に動かない。

せめてもと精一杯まで視線を横にずらすと…



そこには守さんが立っていた。




今までのを全部見られてた!?

それに気づいた時、私は底知れぬショックを受けた。


私のあんな姿を…、一番見てほしくない人に…


体が動かないままにショックに打ちひしがれている私の前に、今まで私たちの行動をなぞってきたもう一人の私が近づいてくる。



「ふふふ…、これが本当の私…。」


もう一人の私は私を横目でちらっと見ると、そのまま守さんの前に移動した。


「他人を傷つけて、私って罪な女…。でもそれは私が可愛いのがいけないの…。」


彼女はその手を守さんの顔に近づけながら続ける。


「みんな私の外見につられて寄ってきて、そして不幸になっていくの…。」


まるで悪役ヒロインのようなセリフと、その役に酔ったかのような演技で、その手が守さんの頬に触れる。


「ねえ、あなたもそう思うでしょ…?」


否定しようと必死で声を出そうとするけど、体が動かないだけじゃなく声も出ない。

彼女はは私の表情を見て満足そうな顔をし、そして守さんから一歩下がり、振り返って背を向ける。


「でも…、あなたもバカな人。こんな私につかまって世話焼いたりなんかしちゃって。私はあなたのこと都合のいい男にしか見てないのに…。」


一人クスクスと笑いながらこちらを向き、


「ね……、幻滅…したでしょ?」


そう守さんに尋ねた。




もうやめてよ…!私の姿でそんなこと守さんに言わないで!!

そんなこと言ったら…、あんなの見せられたら守さんだって私のこと……



そう思うと心が苦しくなって、つらい答えが返ってくることを予想しつつも守さんの顔を見ずにはいられない。


「…ほら、何とか言いなさいよ。」


彼女の言葉で声が出せるようになったことに築いたのだろう。

守さんはその口を開いた。


「………なるほど。お前はこれがリコの本当の姿だと言うんだな。」


もう一人の私はその口を三日月に歪めながら答える。


「そうよぉ。これが本当の私。あなたのこともただの便利な道具にしか思ってない…、これが偽りのない本心よ。」


「そうか…。」


この後に続くであろう言葉に耳を塞ぎたくなるが、あいにく体は全然動かない。

しかし、せめてこれから受けるであろうショックを少しでも軽減しようと防衛本能が働いたのだろう。

私は強く強く目を瞑る。





「……ふむ…、で、それがどうした?」













………………え?







 ◆◆◆◆◆


「……ふむ…、で、それがどうした?」


俺はリコの偽物にそう言い放った。

偽物は相当驚いているようで、その視線は何度も俺とリコの顔を往復する。


「…え?な?何を言ってるの!?あれだけ私の悪いところを見てきてそれで、それがどうしたって…なんでそんなことが言えるの!?」


隣で本物のリコも驚いたような顔をしているが…、まあ今は目の前の魔物が優先か。


「何でってそりゃ…、一言でいうと幼いんだよ。」


言うかどうか悩んだが言ってしまった。

こうなりゃとことん行くしかない。


「さっきの映像、おそらくリコの実際の過去なんだろう?確かに相手は怪我をしていたがそれは完全に不幸な事故だ。これをリコのせいだと言ってくる奴はよほど周りが見えてない子供でしかない。それにリコの姿で散々俺とリコを罵ったつもりだろうが、俺からしたらそんなもの全然かわいいレベルなんだよ。教えてやろうか?社会に出たら腹の中が真っ黒な人間がうようよいるんだぜ?」


しゃべりだしてしまったらとまらない。

俺の剣幕に若干偽物が引いてる気がするが…まぁ構うまい。


「息をするように嘘をつく人間。人を貶める才能が天才的な人間。そして自分の手は汚さずに保身に優れ、他人を駒扱いして平気で蹴落とすような人間。そんな奴らの巣窟で何年も働いていた人間を舐めんなよ?」


ついでに今朝あんな夢を見たせいで溜まっていたイライラをぶつける。


「それに誰しも100%善人なんていないんだよ。もし自分は善人だって言うようなやつがいたら、そいつほど信用できない人間はいねえ。俺だって聖人君子じゃないんだ。当然リコのことをエロい目で見ることだってあるし、妄想したことだって何度もある。」


そこでいったん一息つき、さらに言葉に力を込めて偽物に告げる。


「それは誰でも通る道だし誰もが心に持ってるものだ。その程度の事でリコのことを幻滅したり軽蔑したりなんかするはずがないんだよ!」




俺の言葉に数秒ほどあっけにとられたような顔をしていた偽物だったが、その後その表情を苦々しそうなものへと変えた。





「………あーあ…、あんた、つまんないよ…!」


さっきまでの映像と違い、今度は本物の岩の壁があたりに現れる。


「せっかく精神を壊してあたしの玩具にしてやろうと思ったのに…。もういいさ、それならあんたたちを殺してあたしの操り人形にしてやるよ!」


そういうと偽物はその体に黒い霧をまとわせその体積を大きくしていく。

そして霧が晴れたときそこにいたのは、たくさんの触手が生えた物体の上にかろうじて女とわかる体の上半身がくっついている異形の怪物だった。




これがこいつの本当の姿か…。

ならばここからが本当の闘いだ!

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