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ダンジョン攻略物語  作者: ノジー・マッケンジー
48/52

ダンジョン47

拠点に帰り、モヤモヤをはきだすように大きく息をつく。


よく考えれば、結果として俺が望んでいた通りのパターンのはずだ。

困るような話ではない。

ただあのタイミングで罠が復活していたことについて、帰還の羽を使わないと行けなくなり残念に思っただけだ。

よし、気持ちの整理完了。


「…まもるさん…、大丈夫?」


リコが心配そうに聞いてくるので、安心させるよう笑いながら大丈夫だと伝え、これからの事について一緒に考える。



先ず、部屋のトラップが復活した件についてだが、あのタイミングで罠が復活したということはおそらくトリガーは現れた魔物をすべて倒すことと見ていいだろう。

そして魔物は他の階層に移動できない。

つまり、罠を発動させてすぐに階段へ逃げ込めば、比較的安全に経験値やDPを稼げるという事だ。

というか、10階の安全地帯から魔法を打てば無傷でなんのリスクも無く倒すことが出来そうだが…、そんなに甘くは無いか?

リコの考えでは、魔物が通れなかった地点はおそらく階層の境目であり、もしかしたら俺たちの魔法も階層を跨いでは届かない可能性もあるかもとの事。

まあ、いままでの事を考えると、そんな抜け道があるとは考えにくいよな。

だが念のため一度試してみる必要はありそうだ。


9階の話はこのくらいにして、次は10階の扉についてだな。

満場一致(2人しかいないが)であれはボス部屋ということになった。

これで違ったら肩透かしもいいところだ。

問題は中にいるであろうボスがどれだけの強さを持っているかだ。

今のレベルで勝てるなら問題は無いが、流石にそう簡単にはいかないだろう。

出来ればもっとレベルを上げて、余裕をもって立ち回れるぐらいになってから挑戦したい。

慎重すぎる様に思えるかもしれないが、初見で何も情報が無いので慎重すぎるぐらいがちょうどいいと思う。

となると、しばらくはレベル上げになるが、丁度良く魔物は近くに沢山いる。

できればモンスターハウスの中でバッタバッタと魔物を全滅させれるぐらい強くなりたいところではあるが、まぁある程度レベルが上がり自分が納得できればボスに挑戦してみることにしよう。

…可能性は低いけど、扉の向こうにボスがいないってことだってありえるがな。



という訳でこれからの予定が決まった。

先ずは9階層でレベル上げ。

最悪、前回と同じように何度かに分けて倒せばいいし。

最初は時間かかっても、繰り返してレベルが上がりMPが増えれば戦闘時間は短くなっていくはず。

で、ある程度レベルが上がったらボス部屋に挑戦だな。




ある程度の予定が決まり、そろそろいい時間になるところだったので、今日の探索は終わりにしてゆっくり休むことにした。


いつものようにシャワーを浴びて夕飯を食べ、リコと雑談。

DPの貯まる量を予想して、リストを眺めながらあれやこれやと話をする。

そして話も一区切りついたところでそれぞれ部屋に戻り就寝。


明日からは形は違うけどもまた周回作業になる。

頑張っていくとしよう。
















◆◆◆



「まったく!面倒な事をしてくれたもんだ。」


「本当です。死ぬなら一人で勝手に死んでくれればいいものを。わざわざあんなものを残していくとは。」


「そうそう、おかげでもみ消すのに苦労しましたよ…。」


ココはとあるビルにある一室。

そこにはスーツを着た男が3人おり、その内1人は見るからに高級品と分かる机に肘を置き、これまた高そうな椅子に腰をかけている。


「まさかあんなところにまで遺書を残しているとは…。見つけたのが私でなければ大変な所でしたよ。」


「うむ、これを明るみに出されるわけにはいかんからな。」


先程から男たちの話題に上がっている遺書。

この中にはとある会社の内情が事細かに書かれている。

特に特定の人物に関する事柄、勤務状況・仕事内容・社内環境などがまるで日記のように綴られている。


「は~、しかしよくもまぁこんなにきちんと書き残したもんですねぇ…。」


3人の内、猫背で身長もそう高くない男がそう言った。


「そんなもん書く暇があるぐらいなら、もっと仕事を押し付けてやるべきだったわ!」


さらに、体格はがっしりしているが、頭は半分以上頭皮が見えている男が続ける。


「まあそう言うな。幸いなことにマスコミはうまく撒けたようだし、以後も対処の方よろしく頼むよ。」


「「はい、わかりました。」」


椅子に座った男より指示を与えられ、猫背の男と髪の毛の薄い男は共に部屋から出ていった。





「…やれやれ…だな…。」


2人の男が部屋から出ていった後、残されたのは椅子に座った男と机の上に鎮座している書類の束。


「…残念ながら、君の望みはかなえられない。どんなに足掻こうが、たとえ命を懸けたところで、君の出来る事なんてたかが知れてるんだよ。」


まるでその書類の束に話しかけるかのように、もしくはその先にある何かに語り掛けるかのように男は言葉を発し、その書類の束を部屋の隅で存在感を放つ大きな機械の中へと放り込んだ。


これは彼の持つ処刑道具。

彼にとって都合の悪いもの全てを処分する死刑執行人。

今もまた、1人の男を処刑すべくその機会は動き始める。

機会に入れられた彼の人生はその中で粉々に砕かれ、最初から存在しなかったかのようにこの世から消え去った。


男の命を懸けた最後の一撃は、わずかなところで巨悪に届かず、その役目を果たせぬまま永遠の眠りにつくこととなった。


そしてその思いは2度と届くことは無い…。




















○○月××日

部長に怒られる。

お前は会社に必要ないと言われるが、当然の如く日付が越えるまで残業させられた。

必要ないんじゃないのかよ。

ちなみに部長は定時で上がっていった。


○○月×△日

今日は昨日残業したことを怒られた。

時間内に仕事が終らないのは俺の要領が悪いからとの事。

だが昨日の残業は、部長が5時直前に仕事を押し付けてきたのが原因だ。

腹立つ。


○○月□□日

今日は部長のミスを押し付けられた。

俺には全く関係のない内容だったのに、たまたま部長と目があった為お前のせいだと罵られた。

結局尻拭いの為徹夜で残業。

部長は当然定時で帰って行った。

ちくしょう。


○○月□×日

徹夜で仕事をしたことを怒られた。

電気代がもったいないだとさ。


○○月□△日

今日も部長に怒鳴られる。

原因は花粉が酷いからだそうだ。

もう意味が分かんねぇ。


○×月××日

……………………。


○□月□△日

……………………。


□○月×○日

……………………。




……………………。

……………………。

……………………。

……………………。




××月××日

もう限界だ。

この会社は腐っている。

叩けば叩くだけホコリ、いやノミやダニも大量に出てきそうだ。

毎日毎日残業残業。

1日20時間勤務なんて当たり前。

当然残業代なんてものは出ない。

いや、噂では部長以上は残業代が出てるらしいが…あいつら残業してるところなんて見たこと無いんだが。

どうせ会社の金で飲みに行って、それを業務の一環と言って残業代くすねてるんだろう。

世間一般のイメージではうちの会社は結構給料良いように思われてるようだが、それはあくまで上の方の人間だけ。

俺たちぺーぺーはいくら身を粉にして働いたところで給料が上がりやしない。

あ、一応上がってたか。勤続年数で1年につき100円。

…書いてて悲しくなってくるな。

手取りだって、時給にして計算するとその辺でバイトでもしてた方がよっぽど良いぐらいの額しか貰えてないし、その上給与詳細を見ても、何に使われるのか分からない積立金やら何やらで相当引かれてる。

さらに噂では積立金なんてものは一切無く、上の連中の飲み代に消えてるとかなんとか。


よくもまあ、こんな大きな会社にこれだけの大きな闇を今迄隠し通せたなと思うよ。

自分でもよくここまでブラックな会社に勤めてこれたと褒めてやりたい。




…でもそれももうおわりだ。




俺の命と引き換えに、この会社の闇は世間へと知られることになる。

今まで耐えてきた分、最後に一矢報いてやるよ。














最後に、この日記を読んでる人へ。

これは私の遺書でもあります。

この日記とは別に勤務状況やその他諸々を纏めたデータも残しております。

今回の私の自殺で会社の闇が明らかになり、2度と私のような人間が生まれないことを願います。


××月××日

檀上 守



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