ダンジョン44
結局階段が見つかったのは、あれから少々時間が経ってからだった。
もう少し早ければまだ歩いて帰れるぐらいだったが、割り切ってアイテムを使おうと決めたすぐ後に見つかった。
ままならないものである。
しかし、すでに帰還用アイテムを使うと決めたので、せっかくなので時間いっぱいまで9階を探索して帰ろうと思う。
リコと共に階段を下り、9階へたどり着く
内装は相も変わらず洞窟。
上の階からどんな変化があっても良いように警戒しながら9階の通路を進んでいく。
しかしこの9階、少し進んでみて思ったが、分かれ道が無い。
今のところ多少曲がりくねってはいるものの、ずっと1本道だ。
危険察知も反応が無いので、ここまでは罠も存在していない。
さらにここまで魔物が1体も出てこない。
…9階は何か特殊な階層なのか?
念のためマップを見ながら進むが、どうも道は1本道のまま続くらしく、魔物を表す赤い光点も見えない。
広さ的には上の階層と同じくらいありそうではあるのだが…。
こういった場所で考えられるのは隠し通路とかか?
中にお宝が有ったりするのはゲームでもよくある事。
しかし、俺もリコも対応したスキルは持っていないし、前の世界でそんな技術を持っていたわけでもない。
壁を触りながら進むも、結局は何も発見できなかった。
しばらく進み、そろそろ何もないことに飽きてきたころ、マップ上に変化があった。
場所は丁度、階層の真ん中あたりだろうか。
今俺たちがいるところから1本道でもう少し進むと、丸く開けた場所に着くようだ。
…ダンジョン内で広い部屋……。
何となく嫌な予感がしつつも、他に道が無いのでその部屋を目指し進んだ。
「…あぁ、やっぱり……。」
その様子を見てついため息が出る。
マップで見えていた広い部屋の前にたどり着いた俺たち。
そこで見たものは、部屋中から感じる嫌な空気。そして部屋の中が見えなくなるぐらいの黒い渦であった。
「危険察知がこれだけ反応してるってことは、相当やばいんじゃないか?」
リコと顔を合わせて考える。
この様子、考えられるのは大掛かりなトラップだろう。
例えば部屋に入ったら天井が落ちてくるとか、逆に部屋中が落とし穴とか、床が上にせりあがっていくとか。
他にもモンスターハウスや、俺たちが勝手に10階だと思い込んでいたボス部屋の可能性だってある。
まあ何にしても今日は入るつもりはないから、できれば部屋に入ったら何が起きるかぐらいは調べておきたいんだが…。
だがわざわざ危険を冒してまで調べるつもりはない。
いくら不老不死があるからと言って、ゲームみたいに死に覚えなんかはできればしたく無い。
できるだけ情報を持って帰るために、部屋の外からじっと目を凝らして見てみる。
よく見ると、部屋の真ん中あたりに黒い線が一本走っているように見える。
これはおそらく、部屋の中心まで進んだら発動するという事だろうか?
辺りを見回すと、他に黒い線が引いてあるところは無い。
部屋中が黒みがかって見えにくいが、どうやら床は全体が真っ黒にはなっておらず、まるで色んな所に落とし穴が空いてるかのようにポツポツと濃い部分があるようだ。
そして天井を見上げてみると、こちらには特に濃い場所は無いように見える。
つまり、おそらくこの部屋は中央の黒い線のところまで進むと何かしら発動し、その何かしらは特に濃く見える床の部分から発動する、と考えてよいだろう。
とりあえず今自分が確認したことをリコに告げることにする。
危険察知が最大限に働いており、今見えた状況から考えるとおそらくこの部屋は…
俺の言葉を聞いて少し難しい顔をして考え込んでいたリコだったが、結論が出たのか、一旦拠点に帰ろうと提案してきた。
俺としても今からこの部屋の中に入る気は無い為、素直にリストから帰還用アイテムを交換してそれを使用する。
某ゲームの移動魔法のように、天上に頭をぶつけることも無く、無事に拠点に戻ってこれた。
まぁ、感じとしてはポータルで移動するのと同じ感じだからな。
さて、無事に帰ってきたところで、9階について人化したリコと話をする。
「あの部屋ってやっぱりアレだよね…。」
「ああ、あれだと思う。」
「「…モンスターハウス。」」
息ピッタリである。
おそらく床に見えた黒く濃い場所、あそこからモンスターがポップするのではないだろうか。
「あそこがモンスターハウスだとして、問題は扉が閉まるかどうかだよねー。」
「そうだな。後は出てきたモンスターを放置したらどうなるかとかか?」
あの部屋がモンスターハウスだった場合、何点か確認しておきたい点がある。
1つはリコが言ったように、中に入ると出てきた魔物を全滅させないと外に出られないタイプかどうか。
次に、もし閉じ込められなかった場合に、一度出現した魔物がどういった扱いになるのかだ。
閉じ込められるパターンの場合、おそらく数多く出てくるであろう魔物を全滅させることができるだけの力が無いといけない。
そして、閉じ込められないパターンの場合はさらに、俺たちが部屋から出たら魔物が消えるパターンと、そんなことは関係なく通路まで追いかけてくるパターンが考えられる。
部屋の外まで魔物が出てくる場合、無事逃げ切ったとしても次に9階に行ったときにその魔物たちがずっと残っているのかどうかも気になる。階段の下にうじゃうじゃといたら嫌だ。
色々と話はしたが、結局のところ実際に試してみないと分からないということで、何が起きても速やかに行動できるようプランを考えておく。
最初は部屋の中心のちょっと前あたりからダッシュかな?
閉じ込められない場合、戦わずして向こう側に抜けれる可能性もあるし、もし閉じ込められたとしても、部屋の真ん中で戦って4方から攻撃されるより壁に背を向けて戦った方がよっぽど安全だ。
閉じ込められなかった場合は、一旦部屋を出て魔物が向かってくるかの確認。
向かってきたとしてもこちらが扉の外側で戦えば、部屋の中と違い1対1で戦えるだけのスペースしかないし。
後は臨機応変になるようになるかな?
とりあえず、夕食を食べながら9階の対策を立て、明日の予定を決める。
9階までは最短で進み、部屋の前で休憩。全回復したら突撃、だな。
夕飯を食べ終えシャワーを浴び、ある程度雑談をして就寝。
明日は今までで一番気合を入れていかないとな。
次の日。
コンコン
「守さん、朝だよー。」
扉の向こうからリコの声がする。
今さらながら、大事な日にはふざけずに普通に起こしてくれるんだよな。
扉越しに返事をして、ベットから起き上がり大きく伸びをする。
自分の頬を叩き気合を入れ直して寝室の扉を開けた。
さあ、今日も頑張ろう!
リコと朝食を食べ準備を整える。
ポータルを使いダンジョンの5階へ降り立ち、マップを見ながら最短ルートで9階へ進む。
道中はできるだけMPを節約し、向こうが気付いていないようなら戦闘を避け別の道を使いながら進んだ。
時間にして大凡2時間半ぐらいだろうか。
拠点を出発して、9階の広間前までたどり着いた。
「よし、じゃあしばらく休憩にしよう。」
そう言って床に座り込みリストから水などを取り出す。
ここまでMPは使用をできるだけ控えていた為、そこまで長時間休憩しなくても全回復できるが、やはり初めての事で二人とも緊張しているので、気持ちが落ち着くまで少し長めの休憩にした。
しばらくして、MPも全回復し、気持ちも落ち着いた。
これ以上時間を延ばしても良くないだろう。
心を決めて、リコと一緒に部屋の中へと足を踏み出す。
予想していた通り、部屋に入ってすぐには何も起こらなかった。
しかし慎重に少しずつ歩を進め、ついに部屋の中央、危険察知で黒い線が見える前までやってきた。
一旦線の直前で止まり、大きく息をつく。
そして、
「よし、行くぞ!!」
リコと共に一気に走り出す。
さあ、ここからが勝負だ!




