ダンジョン29
ついに4階にやってきた。
こんなに早く次の階に来れるなんて、やったぜ!
無理やりポジティブに考え、沈んだ心を追い出す。
3階までは階が変われば新しい種類の魔物が出てきたり、一回で出てくる数が増えたりと何かしらの変化があった。
おそらく4階でも同じだろう。
気を引き締めなおして探索を開始する。
と言っても、二人とも残りMPが少なくなっている為、一回だけ戦闘を行って帰るつもりだ。
「リコ、とりあえず一回戦闘したら拠点へ帰ろう。」
そう言うとこちらを向いて頷いてくれる。
一緒に並んで4階を進んでいく。
4階も見た目は1~3階と同じ、洞窟タイプだ。
5分ほど進むと、4階で初めての魔物と遭遇した。
パッと見ガイコツが3体。3階と同じ…?
いや、よく見るとガイコツの内1体が剣のようなものを持っている。
「武器を持ってるか…」
ここで初めて武器を持った魔物が出てきた。
今まで俺は武器を使わずにここまで来た。
理由は、いい武器を使おうと思ったらDPが足りないし、何より今まで出てきたガイコツは体当たり一発で倒せたからだ。
もし最初のガイコツがもっと倒すのに苦労していたならば、もっと早くに武器やそれに関するスキルを取っていたかもしれないが、それがなくても倒せるならわざわざDPを消費する必要もないと思ったからだ。
早めにスキルを取っていればスキルレベルも上がったかもしれないが、スキルを取れるだけDPが貯まった時はまだ取る必要ないと思ったし、何より体術スキルを取ったからそれ以上必要はないだろう。
しかし武器を持った敵が出てくるなら話は別だ。
俺がもし武術の達人であれば大丈夫なのかもしれないが、基本的に武器を持った相手に素手で相手するならある程度実力差がないと相手にならない。それが木刀などとは違い真剣ならばなおさらだ。
よく剣道三倍段という言葉を聞くが、あれは実際に三倍の段が必要という訳ではないらしい。
ただリーチに差ができるので、それぐらいの技術は必要だという話らしい。
実際には空手と剣道、それぞれ同じ段の人が戦ったとしても、その時のコンディションや戦略、その他色々な要素も関係してどちらが勝っても可笑しくないらしい。
高校時代の空手部の同級生が言っていた。
まあ、空手が弱いって思われるのが嫌だったから話を盛った可能性もあるが。
何にしても俺には武術の心得なんかないから、素手で相手しようなんて思わない。
体術スキルのおかげで体の動かし方がマシにはなっているが、この先の事も考えるとこの辺で武器スキルを取った方がいいだろう。
色々と考えている間に向こうもこちらに気づいたようだ。
「リコ、まずは剣を持ったやつを魔法で倒してくれ!」
頷いて風魔法を放つ。
風の玉はまっすぐに剣を持ったガイコツへと進んでいき、ガイコツの体の中心にぶつかって弾けた。
魔法のぶつかった場所はその場で光の粒に姿を変え、足など離れたところは身体を維持できなくなったことによりその場で崩れて、同じく光の粒へと姿を変えた。
「よし、あと2体!」
そう言って残るガイコツに向かってダッシュで近づく。
残りはただのガイコツが2体、今まで通り何も問題ない。
ガイコツとの距離があと僅かとなったその時、頭の中に妙な違和感というか、猛烈に嫌な予感がして体に急ブレーキをかける。
目の前のガイコツに黒い渦のようなものを幻視し、只々近づきたくないという気持ちが大きくなった。
身体に猛烈な負担を掛けつつも何とか踏みとどまった俺の目の前を、一筋の白い線が走る。
「コケーッ!!」
リコが後ろから悲鳴のような鳴き声を上げる。
「大丈夫だ!!」
俺は自身の無事をリコに伝え、目の前のガイコツを見る。
俺に攻撃を仕掛けてきたガイコツのその手には短い刃物、ナイフが握られていた。
最初の剣を持ったガイコツに注意を向けすぎて、短いナイフに気づかなかったようだ。
一旦バックステップで距離を取り、後ろから合流してきたリコに指示を出す。
「あのナイフを持ったやつに魔法を頼む!」
リコはすぐさま風の魔法を発動し、ナイフを持ったガイコツにぶつけた。
剣を持ったやつと同じように、魔法の一撃に耐えられず光の粒へ姿を変えるガイコツ。
残った1体は慎重に近づき、ナイフなど武器を持っていないことを確認して体当たりで倒した。
【 経験値7を得た 】
【 7DPを得た 】
「ふぅ、4階からは武器を持ったのが出てくるみたいだな。」
戦闘後、あたりに危険が無い事を確認しほっと一息つく。
さっき感じた猛烈な嫌な予感、ガイコツに黒い渦が見えた気がしたが、おそらくあれが危険予知のスキルの効果なんだろう。
確かにあれがなければ、ただのガイコツと思い込んで体当たりをしようとしたところにナイフでカウンターを食らうところだった。
……今まで発動したことないからすっかり忘れてた。ゴメンよ。
心の中で感謝しつつ、とりあえず4階の敵の確認はできたので3階に戻り、残りMPが少ないのでそのまま拠点へと帰ることにした。
拠点に帰り、色々と相談したいこともあるのでリコのMPが回復するまで待つ。
時間もお昼となっていたので、その間に食事の準備をする。
現在所有DP200p。
食事で18p使って残り182p。
…やはり一回贅沢をすると人間ダメだな。
お米が食べたくてしょうがない。
しかし今のDPでは勿体なくて駄目だ。
もう少し稼げるようになれば食事の改善をしよう。
そう考えると、食事だけでなく生活自体ももう少し改善はしたいよな。
俺一人ならまだ良かったが、リコが人間の女の事分かったからにはもう少しいい生活をさせてあげたい。
その為にはDPを稼がなくてはいけないが、稼ぐためにはここから先は武器が必要になるしまたポイントが少なくなる。
ムムム…
どこかに某メタリックなプルプルみたいに、経験値やDPががっつり手に入るような魔物はいないだろうか。
そんなことを考えつつリコと一緒に食事をとり、しばらく休んでいるとMPが全快したようだ。
白い光に包まれてリコが人間の姿になる。
にしても、リコが人化した時のこの格好、やけに肌色が多くて目のやり場に困る。
胸や腰など大事な場所にはニワトリの毛のような白いフワフワを纏っているのでいいが、そのほかの部分は基本肌色である。
擬人化した鳥のコスプレしている、ちょっとエッチなお姉さんみたいなイメージでおへそも丸出しだ。
腕や足にもフワフワがあり、何とか肌色面積を少なくする為頑張ってくれているが焼け石に水状態。
まあ本人はそこまで気にしていないのか、特に恥ずかしがる様子もないが…
俺の気にしすぎか?
「……あの…、流石にそんなにジロジロと見られると恥ずかしいんだけど…。」
おおっと!心を読まれた!?
…いや、ただ単に俺の見すぎか。
「す、すまん。と、とりあえず今日の事について話をしようか。」
視線を逸らし無理矢理話題を変える。
微妙にジト目を向けつつも、時間に限りがあるのは確かなので話題変更に乗ってくれる。
「そうだね、守さんはやっぱり武器スキルを取るつもり?」
「ああ、ここで取らない選択肢は無い。」
「じゃあそれは後で選んでもらうとして、立ち位置としては守さんが前衛で私が後衛もしくは中衛って感じでいいのかな?」
「ああ、4階ではリコは基本魔法でサポートを頼む。まあできる限りMPは温存はしておきたいが。」
「うん。じゃあそんな感じでいこう。後、これは私の勝手な考えなんだけど、4階はできるだけ早く抜けて5階に行ってみない?」
「ん?それは別にいいが…、何か理由でもあるのか?」
特にその理由が思いつかず聞いてみる。
「うん、あくまでもしかしたらの話だけど、ダンジョン系のゲームって大体ある程度の階層にポータルが置いてあるでしょ?そういうのって5階とか10階みたいに切りのいい階層にあることが多いから。」
リコの考えでは5階にポータル(転送機)がある可能性が高いとの事。
その理由として、現在1階から2階、また2階から3階を最短距離で進んだ場合に掛かる時間は、大体1階層につき3~40分なので、1階から4階までノンストップで進んだとしても1時間半~2時間掛かかることになる。
往復で計算すると、行って帰るだけで4時間弱掛かってしまうことになる。
このダンジョンにポータルがあるという事を前提に考えた場合、10階までポータルがないとすると単純計算で1階から10階まで片道約5時間。往復で10時間かかってしまう。
ここでの生活の肝は拠点でDPと物を交換する事である。
そう、普通ならば拠点に戻らないとDPの交換はできない。
ならばもし10階層までポータルがないならば、8階・9階あたりは時間が気になって探索がままならなくなってしまうだろう。
まあ、最初からポータルなんて存在しねぇよ!って事なら話は別だが、このダンジョンのシステムを考えると無いとは考えにくい。
つまり、もしこのダンジョンにポータルやそれに準じたものがあるとするなら、5階にある可能性が高いという訳だ。
「もちろんゲームよりの考えだから、あくまで可能性の一つって事ね。」
確かに期待しすぎて無かった時のガッカリ感はキツイので、あったらいいなぐらいの気持ちでいこう。
ちなみに俺はメニューのスキルと拠点のメニューがリンクしてるため、ある程度ならダンジョン内でも同じことができる。
なのでダンジョン内で食事をして、一日中探索することも可能だが、やはりゲームとは違い肉体の疲労もあるのでそれをする気は今のところ無い。
数値的なことを見てもMPは拠点でないと回復しないし、魔物が近くにいる場所で休憩するのと安全な場所で休憩するの、どちらが良いかなんて考えるまでもない。
「じゃあとりあえず、4階は階段を見つけることを最優先にして進んでいこうか。」
リコの言葉に真面目な顔で頷きつつ考える。
…俺、一応今までも毎回そのつもりで探索してきたつもりなんだけどな…。




