ダンジョン24
次の日、リコの様子は普通に戻っていた。
一緒に朝ごはんを食べ、準備を整えてダンジョンに入る。
現在所有DPは298pだ。
いつも通り1階2階を通過、3階の探索をする。
そろそろ3階の真ん中ぐらいか?
残りMPに注意しつつ探索し、そろそろ中盤かと考えていた時にそいつは現れた。
マップを見つつまだ通ってない道を進んでいると小さな部屋があった。
普段ならばただの行き止まりなのですぐに引き返すが、この小部屋には壁際に小さな箱が置いてあった。
「…宝箱。」
そう、こういったダンジョンにお決まりの宝箱だ。
某ゲームのように赤と金色の派手な箱ではなく木でできた質素な箱だが、一目見た瞬間にこれは宝箱だと直感した。
とりあえず箱に近寄り罠が無いか確認する。
もし何か危険があるならば、危険察知のスキルが教えてくれるはずなので、罠が無いものとして箱を開けることにする。
というか、今まで危険察知のスキルが働いたことが無いからちゃんと反応してくれるかが心配なんだが。割と本気で。
そぉっと箱を開けてみると、中には小さなビー玉みたいなものが入っていた。
手に取ってみると、その玉はいきなり光の粒へと姿を変えて俺の手に吸い込まれるように消えていった。
【 DP10を得た 】
いきなりの事で少し驚いたが、今の玉はおそらくゲームで言うところの使用したら経験値や色んなポイントを得られる類のアイテムだろう。
念のためヘルプで調べてみると思った通りの説明が書いてあった。
宝箱
ダンジョン内に現れる箱
中には様々な物が入っている
ダンジョンの奥に進むほど良いものが入っている
階層問わず、経験値やDPを得ることができる「経験値玉」「DP玉」等が入っている場合もある
経験値玉
ダンジョンの宝箱内に入っていることがある
手に入れると経験値を得ることができる
ダンジョンの奥に行く程得が数値の高くなる可能性が高まる
DP玉
ダンジョンの宝箱内に入っていることがある
手に入れるとDPを得ることができる
ダンジョンの奥に行く程得が数値の高くなる可能性が高まる
何にせよDPが増えるのは嬉しい。
それに宝箱があるとわかったらダンジョン探索も楽しみが増えるな。
武器や防具などが出てくれれば嬉しかったが、まあ贅沢は言うまい。
小部屋から引き返し再び探索に戻る。
マップは埋めつつも一応階段優先で探しているのだが、やはりそう言った時にこそ中々見つからないものだ。
魔物を倒しつつ進み、だんだんMPも少なくなってくる。
マップ上ではおそらく3階の真ん中も過ぎ終盤に入ったところあたりか。
2階では真ん中あたりで魔物の数が増えるという変化があったが3階では無いのか。
そう思いながら歩いていたからだろうか。
次に現れた魔物はガイコツ2体、玉2体の4体のグループだった。
「先ずは二人とも魔法を打って玉をどちらも倒してしまおう。」
お互いに確認し合い、射程範囲に入るとすぐに魔法を発動させる。
風の玉と石の塊がそれぞれ魔物へ向かって飛んで行き、狙われた光の玉は何もすることができず弾けた。
玉がいなくなれば残りはガイコツ2体だけだ。
今のは玉が2体だったから一気に倒せてよかったが、玉が3体とガイコツ1体とかになるとここまで簡単にはいかないだろうな。
そんな事を考えながら残ったガイコツに接近し体当たりで倒す。
リコもステータスが上がったことで、加速してぶつかるだけでガイコツを倒すことができるようになった。
魔物がみんな光の粒になったところで待望のメッセージが届く。
【 経験値6を得た 】
【 6DPを得た 】
【 リコ のレベルが上がりました 】
【 リコのレベルが上限に達しました 】
【 種族 ニワ・トリは進化可能種族です 】
【 進化可能先を提示します 】
【 ●レッサーコカトリス ●ハーピージュニア ●ニワ・トリ(亜種)】
ついに来たか、リコのレベルアップ。
これでリコを進化させることができる。
ヘルプで事前に調べてたから進化が可能な種族なのは分かっていたけど、何に進化するかまでは分からなかったからな。
この中ならレッサーコカトリスかハーピージュニアならステータスも上がるだろうし大分戦力アップになるだろう。
ニワ・トリの亜種は進化と言えるのかどうか分からないんだが…。まあよっぽど変わったスキルとかでもあれば有かもしれんな。
しかし進化先はどうやって選べばいいんだろう。
そう考えていると、その当人と目が合った。
「コケェ…。」
少し沈んだような表情でこちらを見るリコ。
どうしたんだろう。進化できるようになっにも関わらず嬉しそうじゃない。
大分表情を読み取れるようになったとはいえ、まだ完全に分かるわけではない。
こんな表情をしているのに放っておいて進化させる訳に話いかないし………ん?
……進化…させる?
まてまてまて、何を考えてるんだ俺は。
リコは俺の従魔でも奴隷でもない。パーティメンバー、仲間だ。
それなのに俺が進化先を決めるとか違うだろ。何偉そうなこと考えてるんだ。
例え見た目がニワトリでもこいつにはこいつの意志があり考えがある。
それこそ俺より賢いんじゃないかと思えるほど色々な事を考えてるはずだ。
それなのに見た目がニワトリと言うだけでついつい下に見て、あまつさえ自分が進化先を決めるつもりになっていた。
前の世界の会社で部下を自分の思い通りに動く駒だと考える上司がいて、自分は絶対にこうはならないと思っていたのに…。
少し前の自分をぶん殴ってやりたい。
後でリコにきちんと謝罪しないとな。
まだこちらから進化先を指示したわけではないが、あと少し気付くのに遅ければ手遅れな所だった。
自己満かもしれないが落ち着いたら今考えていたことをきちんと話して謝罪しよう。
でなければ俺の気がすまん。
自分の気持ちに整理を付け、改めてリコの方を見るもいまだ浮かない表情で地面を見つめている。
そういえばリコはこのメッセージ、どこまで聞こえてるんだろう。
俺に聞こえているものがすべて同じように聞こえているとは限らない。
何を聞くにしてもまずは確認が必要か。
「リコ、ちょっと聞きたいんだが、今のメッセージは聞こえたか?」
リコは顔を上げ頷いた。
「そうか、俺も聞こえた。俺に聞こえたのは、お前がレベルアップして進化が可能になり、その進化可能な種族名だけ聞いたんだが、お前も同じか?」
再び顔を縦に動かすリコ。その表情はやはり沈んでいるように見えた。
「俺に聞こえたのはそこまでなんだが、他に何か聞こえたり分かることは無いか?どうやったら進化できるとか。」
そう問うと、リコは地面に丸を3つ書き、一つづつ指(羽)差した。
「…どれにするか選択してください、って聞こえたとかか?」
頷く。
「…そうか。」
今ので何となくリコが考えていることが分かった気がする。
おそらくリコは進化してしまうと自分がどうなってしまうのか不安なんだろう。
進化だから自分の意志が別の何かにとって変わられるということはおそらく無いだろうが、可能性がゼロでは無い。
ゼロではない以上どうしてもそのことが頭にチラついてしまい踏み切れないではないだろうか。
それに姿かたちが変わる事によって、自分の精神もそちらに引きずられる可能性だってある。
もし凶暴な姿になれば、本能で凶暴な考えに徐々になっていくかもしれない。
なら今俺がリコにしてやれることは一つだ。
俺はその場にしゃがんで、しっかりとリコと視線を合わせる。
「リコ、進化が不安なのはよくわかる。俺今まで考えたこと無かったけど、もし俺がリコの立場ならすっごい不安になると思う。」
一回言葉を切って、息を吸い込み自分の思いをリコに告げる。
「だから、もしリコが進化したくないならしなくてもいい。もし進化したいなら、何に進化してもいい。俺はお前のパーティメンバーで、そしてお前の仲間だから。お前が何になっても、ならなくても、それでお前を嫌ったり捨てたりなんかしない。だから、安心して自分の将来を選んでくれ。」
今俺にできる事、それはリコを安心させること。そしてリコの背中を押してやることだ。
リコがどんな選択をしても、そしてもし進化したことでリコの人格(鳥格?)が変わったとしても、俺はずっとリコの仲間だ。
その思いを込めてじっとリコを見つめる。
するとリコも覚悟を決めたように顔つきを変え、力強く頷いた。
そしてリコの体が光始め、その全てが金色の光となったところで徐々にその姿を変えていく…。




