ダンジョン17
ダンジョンに入り、一階層を抜け、2階層に進む。
できるだけマップが埋まって無い所を選びながら、しかしできるだけ階段に続きそうな道をカンで選びながら進む。
心配していた死神はもういないようで一安心。
道中出会うガイコツとの戦闘は、「なんとなく楽になった気がする」と言ったところ。
今までも2体までなら苦労せず倒せていたから違いがあまりわからない。
スキルのレベルもまだ低いし、劇的に変わるということはないか。
しばらく進み2階層の真ん中あたり、前回ガイコツが3体いた場所にたどり着く。
今回もこちらに気付いていないようなので、同じように奇襲をかけることにした。
ギリギリまで忍び寄り、ある程度の距離からは一気にダッシュで近づく。
勢いそのままに1体目に体当たりし、その際何となくこの辺かな?と思った場所に足の位置を調整し踏み込む。
するとガイコツは普段以上に派手に吹き飛び、その先にいたもう一体ののガイコツにぶつかった。
流石にぶつけられた方のガイコツは倒せなかったが、隙はできた。
仲間の骨が飛んできたことにより戸惑っているガイコツを他所に、もう一体のガイコツを蹴り倒す。
この時も、以前より軸足がブレずにしっかりと衝撃を伝えれたように思う。
そして残った1体に向き直り構える。
仲間の骨が光の粒となり、ようやくこちらに向かって構えたガイコツだったが、ここまで来たら何もさせるつもりはない。
ラグビーのタックルよろしく、低姿勢から一気にぶつかり転倒させる。
地面に倒れたガイコツは仲間同様、光の粒へと姿を変えた。
光の粒となったガイコツを見ながら、俺はほっと一息をつく。
やはりこの体術スキル、取って正解だった。
2体の時は特に意識していなかったが、3体になるとこちらもいつも以上に集中したのだろう。
また前回と同じような動きをしたこともあって、違いがよく分かったように思う。
レベル1でこれなら、スキルのレベルが上がればもっと達人みたいな動きができるようになるかもな。
3体のガイコツを倒し、探索を続ける。
道中1体だけで出てくるガイコツはいなくなり、2体か3体セットで出てくるようになった。
体術スキルの影響も有り、危険察知が反応することも無く問題なく進んだ。
そしてそのまましばらく進んだ時、今まで見たことのない魔物?を発見した。
色はガイコツと同じで白いが、その体の表面はふわふわとした毛におおわれている。
頭に赤い小さなトサカがついていて、突かれると痛そうなくちばしがある。
………ニワトリ?
一瞬呆気にとられたが、ここがダンジョンだと思い出し気を引き締める。
あんなナリでも魔物だ。多分。
油断していてはこっちがやられる。
しかしあのニワトリ、なんだか動きが妙だ。
やけにそわそわと言うか、不思議な動きをしている。
一応何をされてもいいように慎重に近づいてみる。
向こうもこちらに気が付いたようだ。
「コケッ!?」
襲いかかってくると思って身構えていたが、ニワトリはさっき以上に挙動不審になり、その場をうろうろし始める。
…何だこいつ。
最初はあいつの作戦か何かだと思って警戒していたが、どうも本当にきょどってるみたいだ。
まるでどうしたら良いか分からないとでも言うかのように。
一瞬今のうちに攻撃するかとも考えたが、あの姿を見ているとどうもその気が失せてしまう。
こちらに害が無いようなら、もういっそのこと放っておいて先に進もうかとも思ったが、どうも気になって仕方がない。
とりあえず理解できるかどうかは分からないが声でもかけてみるか。
「おい、そこの…ニワトリ?でいいのか?」
まさか話しかけられると思っていなかったのか、その場でビクッ!っと体を震わせ、ゆっくりとこちらを向くニワトリ。
「俺の言葉が理解できるのか?」
とりあえずそう聞いてみる。
するとニワトリは落ち着きなく体を動かしつつも、わずかに頷いた。…ような気がした。
「今のだと頷いたのかどうかわからん。理解できてるならくちばしで地面を一度突いてくれ。」
そう言うとニワトリは、おずおずといった感じで一度地面を突いた。
こちらの言葉を理解する魔物か。
いや、本当に魔物か?こいつ。
ゲームでも言葉を理解したり、人間に化けたりする魔物はでてくるが、大体ずる賢いやつらがほとんどだ。
しかいこいつはそんな風に見えない。所謂お助けキャラとして仲間になるやつみたいな雰囲気がする。
まあ、それが作戦だったらどうしようもないんだが。
ともかく、この時点でこいつを倒そうという気はすっかり無くなってしまった。
「一応聞いてみるが、お前は何者だ?」
俺の問いにニワトリはコテッっと首をかしげ、そしてひどく落ち込んだ様子を見せた。
何だかいじめてるような感じになってしまったので質問を変える。
「俺はこのダンジョンを探索し攻略することを目的にしている。お前は俺の前に立ちはだかり危害を加えるつもりがあるか?」
ニワトリは大慌てで首を左右にブンブンと振る。
その様子を見て俺は言葉を続ける。
「ならここから立ち去り、俺の前に姿を現さないようにしてほしい。でないと次に会った時にはおまえを倒してしまうかもしれない。」
これから先こいつと同じようなニワトリ型の魔物が現れた時、もしこいつがその近くにいた場合、見た目で分からなければ一緒に倒してしまうことになるだろう。
俺の言葉を聞いたニワトリは非常に落ち込んだ様子で、がっくりとその場に項垂れた。
その様子がやけに人間臭く、まるで魔物と話してるというより普通に人間と話をしているように感じてしまう。
そう考えたら、今の様子はどうも俺がニワトリをいじめてるようにしか見えない気がする。
まあ、周りに見てるやつなんて誰もいるはずないんだが。
しばらくたってもニワトリは動かないので、しょうがなく声を掛ける。
「…もし、もし俺に迷惑や危害を加えないって言うのであれば、一緒に付いてきてもいいが…どうする?」
ほんのわずかの時間でしか関わってないが、情が湧いてしまった。
このまま放っておいて他の魔物にやられてしまうのも目覚めが悪い。
ニワトリの世話なんかしたこと無いし、ましてや今の生活でどうにかできるのかは分からないが。
だが、今の俺の問いかけに目を輝かせて首を縦に振っている姿を見ると、まあいいかと思えてしまう。
こうして俺のダンジョン生活に、奇妙な同居人が増えることとなった。




