母上様への手紙 ーー母親様、ロリコンがいます(ペンで消した跡)
初めての手紙形式です。
サラリと読めます。(・ω・)
母上様、ロリコンがいます。
(ペンで消した跡)
すみません。
一行目から書き損じましたが、紙がもったい無いのでこのまま書きますね。
猛烈な暑さが続きますが、母上様いかがお過ごしでしょうか。
とはいえ、活火山の所為でそちらは一年中暑いのであまり関係は無かったですね。
俺は魔王様の護衛として日々仕事に励んでおります。
常々疑問に思っているのですが、何故敵わないと分かりきっているのに魔王様の命を狙う者が多いのでしょうか?
自殺したいのならば何処か他所でして欲しいです。
お馬鹿さんな人たちに、他人の仕事を増やしてはいけませんと、剣でお話する毎日です。
母上様、その魔王様の事でご相談があります。
その前にこの手紙を読んでいる場所は自室で一人で読んでいますよね?
万が一の為に読む前に結界を張って頂けると助かります。
これは俺と宰相様しか知らされていないトップシークレットなのです。
大丈夫ですよね?
俺は母上様を信じますよ。
実は魔王様の番が見つかりました。
大事なのでもう一度書きます。
魔王様の番が見つかりました。
そうです。
仕事を放っぽり出し、ボイコット(ペンで消した跡)
仕事の合間の息抜きも必要と、空に出れば飛龍の大群を虫を追い払うように片手ではたき落とし、海に行けば刺身が食べたいと神龍を生け捕りにし、地下に行けば飲み比べでドワーフ族を潰し何故か領土を増やす、歩く傍迷惑生物もとい、あの大魔様にです。
因みに、あれ?魔王様に護衛要らないんじゃあ、と一瞬思いましたが、無職になるので深くは考えていません。
あの魔王様に、
番が見つかりました。
しかも、何と。
…母上様、結界の強度は大丈夫ですね?
周りも大丈夫ですね?
何と人族なのです。
母上様の驚愕したお顔が目に浮かぶようです。
大事なのでもう一度書きます。
何と人族なのです。
しかし五万歩ほど譲ってそれも良しとします。
過去には前例もありますし、飛龍の様に知能の低く意思の通じない者が番よりはマシと思う事にしています。
問題はその後なのです。
4歳なのです。
4歳の幼女なのです。
4歳の人族の幼女なのです。
魔王様は、お若く力に満ち溢れ、外見も同性の俺が見惚れる程の美丈夫ですが、お年は今年で9532歳。
4歳の幼女と9532歳。
犯罪です。
しかも番様にデロンデロンなのです。
この手紙に書くのは憚れますが、兎に角あの人族などオモチャと断言していた魔王様が、座れば膝に乗せ、歩けば肩に乗せ、片時も離さず食事も給仕する徹底振り。その鼻の下が伸びた顔と言ったら。
幼女を愛でる魔王様。
仕事を放っぽり出しかまい倒す魔王様。
入浴やトイレにまで付いて行こうとする魔王様。
(三行ペンで消した跡)
母上様、俺は魔王様を然るべき所へ訴えるべきなのでしょうか?
番様はいいのです。あの方は魔王様を優しい(笑)お兄さんとして懐いていますから。
問題は魔王様の方です。
番相手とは言えまだ4歳の幼子。
幼子を欲にまみれた目でみるんじゃねえよっ!!(ペンで消した跡)
人族とはいえ、まだ幼子。
流石にロリコンの餌食、(ペンで消した跡)
流石に魔王様に食われるのは目覚めが悪いと、俺と宰相様で阻止していますが、その所為で蓄積される疲労により、無意識に剣の柄に手を置いている自分が怖いです。
同じく宰相様も、時折り奇声を発し発狂したかの様に頭を搔きむしる為に、艶やかな御髪が傷んでその内ハゲが出来るのでは無いかと戦々恐々の毎日です。
母上様。
ロリコンでもコロリと死ぬ毒はありませんか?(ペンで消した跡)
このままでは俺はストレスでどうにかなりそうです。
何か良いお知恵はありませんか。
返信は最速☆グリフォン速達便でお願いいたします。
勿論着払いで構いませんので、早く早く早くお願いいたします。
貴女の息子より。
◎◎◎
母上様、お手紙ありがとうございました。
ケ・セラ・セラ。
良い言葉です。
周りが騒いだ所で、なる様にしかならないのですね。
正直、お待ちしていた手紙が二ヶ月後に届いた挙句、ケ・セラ・セラの一文しか無かったので目が点になりましたが、博識な宰相様が意味を教えてくれ納得しました。
一瞬でも、面倒くさいから適当に返信してきた、と思ってしまった親不孝な息子をお許し下さい。
後、精神的に追い詰められていたとはいえ、同じ内容のものを何通も送ってしまい申し訳ございませんでした。
慣れとは怖いものですが、この二ヶ月で以前よりは精神的苦痛も少なく、俺も宰相様もこの言葉を胸に、お二人を生暖かく見守っています。
それと、同封のヘアトリートメントありがとうございました。宰相様が素晴らしいと大変喜ばれ、今度お礼に是非とも城へお招きする様にと言われました。
社交辞令でしょうが、田舎者にそこまで言って頂けるなんて嬉しかったです。
そうそう最近、ちょっとした事件がありました。
村にも通達があったと思いますが、戦が中止になった理由です。
あれは番様の、「ケンカはメッ!なのよ」から始まったのです。
近々、人族の大国に戦争を仕掛ける手はずが整えられ、後は魔王様の指示を待つばかりだったのですが、番様のお言葉に、「ケンカはメッ!だよなぁ〜☆」などと馬鹿野郎(ペンで消した跡)、魔王様がのたまいやがり戦を中止しやがったのです。
因みにこの時、心の中で愛剣を振りかざし何度ロリコンを滅多刺しにしたかわかりません。(ペンで消した跡)
一番の被害者は細かく調整を進めていた宰相様ですが。
ここだけの話ですが、鞭をギリギリと音が鳴るまで握り締めていた宰相様が怖かったです。
しかし問題がありました。
母上様もご存知かと思いますが、人族への戦は血の気が多い者たちの、血抜きというか娯楽を意味しています。
それが中止となれば暴動は必至です。
まあ暴動自体は魔王様がペイッと片付けてしまうのでしょうが、王都が壊滅するのは困ります。
悩む俺たちを救ったのは意外にも番様でした。
番様曰く
とーなめんとをすればいいんだよ、と。
すっごい宝物や金色でピカピカのコインや怖そうな人たちがいっぱい、と話は要領を得ませんでしたが、要約すると何でも人族には丸い場所(訓練場でしょうか?)で戦い、そこで勝ち上がってきた戦士たちが一対一で戦い、優勝した者が王に宝物を貰うという事らしいのです。
人族も偶には役に立つと思いました。
これならば血の気の多い馬鹿者どもを大人しくでき、魔王の座を狙う愚か者どもを黙らせ、序でに観戦料まで取れる、正に一石三鳥だと宰相様がほくそ笑んでいました。
そこへトラブルメーカー、もとい番様が協力を申し出たのです。
番様曰く
「クッキーなら作った事あるの!」
魔王様曰く
「凄えじゃないか!流石は俺様の番だなっ。
よし!お前らクッキーを優勝商品としろ!寧ろ他の奴にはやらん。俺様が食う!」
母上様、あの時俺が殺意を持っても仕方がないと思いませんか?
もういいですよね?俺我慢しましたよね?
いえ、番様はまだ幼子です。
全ての責任はあの馬鹿野郎にあります。
母上様直伝の毒で、(全てペンで消した跡)
因みに番様の作られた優勝商品は、例えるなら俺が幼い頃遊びで作ってた、ネッチョリした泥団子に色は紫のマーブル模様。ほんのり焦臭が混じり合った謎の物体X。
用意した材料は、バターと卵に小麦粉と砂糖。
どの過程で紫色が混じったのかは不明です。
結果は母上様もご存知の通り、何のハプニングも無く魔王様の圧勝で終わりました。
付け加えるなら、優勝商品になった謎の物体Xですが、クッキーと認識した者は一人もおらず、逆に凄いアイテムと勘違いした大勢の者たちが殺到して予定より大規模なものになった事と、異常状態無効のスキルをお持ちの魔王様が番様の作られたクッキーを食べた瞬間、真っ青な顔で大量の汗を流されていた事ぐらいでしょうか。
いい気味です。(ペンで消した跡)
番様には振り回されましたが蓋を開けて見れば、態々人族の国に行かなくてもストレスを発散できる新しい行事が追加され、国庫も潤い、序でに馬鹿者どもを減らす事も出来たいい事づくめでした。
この手紙を書いている今も番様は、呑気に口の中に焼き菓子を詰め込んでいます。
だらしのない顔のロリコンに汚染されていた空気が(ペンで消した跡)
頬袋を膨らませたハムスターの様な姿に、周りの空気が和んでいます。
絆された訳ではありませんが、番様を名前で呼んでやってもいいかな、と考えたりしています。(ペンで消した跡)
長くなりましたが、まだ暑い日が続いております。くれぐれもご自愛ください。
貴女の息子より。
追伸
宰相様の髪が荒れてきましたので、またヘアトリートメントを送って頂けると助かります。