護りの巫女
宵闇に
浮かぶは雪の
白きこと
大地も森も
輝きつれよ
ごつごつした岩肌に、冷たく乾いた風が吹き付けている。高い山々に囲まれた禮瑙山は、裾野に拡がる小さな村を守るようにそびえていた。
禮瑙山は、古くから村人達に崇められている。余所者は、村人達に追い返され、村人の知り合いであっても山に近付くことさえ許されないほどに大切にされていた。
そんな山に、幼い少年がたった一人で登ろうとしていた。転んだり引っ掛けたりして、少年の体は傷だらけだ。霧がよく立ち込めるこの山は、傷だらけの少年の体温を奪っていく。
「寒い」
ガタガタと震える少年は、春先の暖かさに薄着をしてきたことを後悔していた。山がこんなに寒いなんて知らなかったんだもんと、心の中で言い訳してみても今更遅い。
それでもしばらく登っていると、だんだんと木がまばらになり、とうとう小さな草が生えているだけの岩場になった。岩場は、頂上に向かってほとんど垂直に続いている。
「じいちゃん、真っ直ぐに登るんだよって言ったのに・・・」
登山口からここまで、道はずっと真っ直ぐだった。村の人に見つからないように、なんとかここまでやって来たのに、願いを叶えてくれるという巫女のお話は、本当にお話だったんだろうか。
夕陽に照らされた長い影が、少しずつ闇に溶けていく。手足は冷えきり、歯はガチガチと震えて全く閉じてくれない。
気付けば、少年は寒さより眠気と戦っていた。
(眠ったらダメなんだよね)
テレビの人が、そんなことを言ってような気がする。けれど、少年の瞼はどんどん重くなっていく。
どこかから、線香の匂いがする___そこから、少年の意識は一旦途切れた。




