ショコラは続くよどこまでも
読んで下さってありがとうございます。
BL要素をふくみますので、苦手な方はおやめくださいね。
「ただいま帰った」
アルフォードが重厚な扉、この屋敷の主人の執務室を訪れたのは、夜も更けた月のない夜だった。扉の先には、眼鏡をかけたクレインが、書斎の机で仕事をしていた。予期せぬ訪問者に驚いたように顔を上げてアルフォードを見つめた。
「貴方は――。貴方の帰る家は、こちらではないでしょう?」
大股で近寄るアルフォードにそう言うと、聞いてるのか聞いていないのか眼鏡をとられる。書類仕事をするときは銀縁の眼鏡をかけるようにしているが、日常生活では必要なかった。これほど近づけば、目が悪くても見えるけれど。
アルフォードは、後ろから抱きつき、クレインの抵抗を軽くいなすと、唇を味見する。
横に置いてあるショコラを食べていたのだろう。甘くて、少し酒の味がした。
「お前が寂しがってると思ったんだがな」
お互いの妹と結婚してから、既に半年は立つ。
アルテイル侯爵家の横にグレンリズム伯爵家の屋敷を移したので、いつでも会える距離に近寄った。けれど、クレインはアルティシアとエリアルに遠慮しているのか、アルフォードと屋敷で二人で会うことは避けていた。
「ちょ、ちょっと待ってください……」
「今日は二人ともいないだろう」
アルフォードがいくら強くても、クレインを強姦するわけではないから、激しく抵抗されれば諦めるしかない。だから、嫌がるクレインにアルフォードは懇願するしかなかった。
「俺のことが、嫌なのか――?」
こんなに近くにいるのに、抱きしめているというのに、クレインが遠い……とアルフォードは囁くように寂しいといった。
「貴方は本当に……ズルイ人だ」
アルフォードが願えば、クレインは承知するしかない。
好きなんだから……しょうがない――。
諦めたクレインは、アルフォードの手を引いて執務室から続く寝室へと誘った。
こちらは、仕事で遅くなったときに一人で眠るためのベッドがあって、少しは罪悪感が薄れるだろうかと、そう思ったのだ。
「明日は早いんですから早く終わらせましょう」
クレインの言葉にアルフォードは、怒りとも嫉妬ともなんともいえない感情に支配される。
「そう簡単に終わると、思ってるのか――」
自分だけが求めてるのかと、アルフォードは悄然する。そして、それを払うようにクレインの唇を貪りながら、自分を嘲笑った。
それなら、お前が求めるようにがんばるだけだ……と、クレインに告げる。
声の熱さを感じて、クレインは息を飲んだ。
しまった――選ぶ言葉を間違えてしまったと、クレインは朝になっても離してくれないアルフォードに啼かされながら、がっつり後悔するのだった。
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「エリー? 薔薇の園のしじま読んだか――?」
エリアルは、相変わらず夜寝るのが早い。
もう寝る時間だとわかっていたが、クレインは隣のアルテイル邸に仕事帰りに寄った。
「兄様、もう寝る時間なんだけど」
アルフォードはもう寝室に行っているはずだ。
「知ってる。来るときに灯がみえたからな。もう結婚したんだから、いい加減この話終われって、作者に言っておけ」
「あ、それ置いていかないで。もう見てないんだから」
「情報漏洩もいいとこだ。何でこっちの屋敷のことまで……」
クレインは首を捻った。エリアルの友達が薔薇の園しじまの作者の一人だと知っているからアルテイル邸については、わかるが、何故かグレンリズム邸の構造まで知られてるような中身だった。
ただの偶然だったらいいがと、エリアルに確認に来たのだ。
「私は読んでないけど、お義姉さまは読んでるから……。ちなみにネタの提供はお義姉さまだと思うわ」
この前知り合って、意気投合していたとエリアルが教えると、クレインは珍しく動揺していた。
兄のそんな顔がみれて、なんだか楽しくなって笑ってしまったエリアルだった。
リサがでないとなんか物足りないですね。
アルティシアも見事に『薔薇の園の会』に入会です。散々利用してきたクレインですが、アルティシアに見られるのはショックだったようです(笑)。