今日はりんごですか? 栗ですか?
読んで下さってありがとうございます。
活動報告で書いた小話です。こちらにまとめることにしました。よろしく☆
「好き……」
アップルパイの中身のりんごを突いて、エリアルの声が可愛らしくそう言う。
もう一度聞きたいので、モンブランの栗の部分を差し出すと、目を輝かせる。
「栗もね、大好き☆」
いいだろう、モンブランの栗だろうと、ショートケーキのイチゴだろうと、俺は差し出す! そして、頭の中で編集するのだ。『大好き☆』だけをリピートだ。
「でもね、一番大好きなのはアルフォード様!」
顔が崩れるのは、許して欲しい――。
「エ、エリアル。私のことは? 私のことは好きじゃないの?」
恋人達の囁きを邪魔するのは、何故か男ではなく女だ。エリアルの親友のリリスが焦ったようにエリアルに詰め寄る。
「リリスのことも大好き! リリスは?」
俺には聞いてくれないのに、リリスには尋ねるのかと、ちょっと妬ける。
「私もエリアルのこと大好き~~~!」
きゃーといいながら抱き合ってる。うらやましいが、そこは十二歳も離れた恋人のことだ、我慢……我慢……と忍の字を心で清書する。
「あ、聞かなくてもわかってるけど、俺は?」
リリスの恋人のハールが聞く。この三人は幼馴染だ。もしか、ここで「ハールも大好き!」 とかエリアルが言えば、俺は今すぐにでも腰の剣に手を伸ばすだろう。大丈夫、苦しませることはない。一瞬であの世だ――。
俺の殺気を感じたわけでもないだろうに、ハールは少し震える。
「ハール? ん、ああ、好き好き……そこのカーテンの柄くらい好きよ」
ハールは「やっぱりな~。もう、そのどうでもいい感がたまらないわ」と、アルフォードのはわからない世界の言葉を発した。
エリアルの口から好きと言う言葉がでながら、何故だろう俺の手は動かないし、このハールという青年が少し怖くなる。王宮では、隣国の大使達の世話役とか交渉役を務めているというが、もしかして凄腕なんではないだろうか。
「ハール様、エリアルに好きって言われたいんですか?」
リリスの瞳にうっすらと涙が浮かぶ。ハールが慌てて「そんなわけないじゃないか」とか「リリスが好きっていってくれたらそれでいい」とか言いながら、リリスをなだめようとするが、エリアルはハールのほうを向いていたリリスの顔を自分の方に向かせて、そっと眦を拭ってあげた。
「リリス、可愛い」
「エリアル、大好き……」
ハールが絶望的な顔をする。それを横目で見て、エリアルはフフッと笑う。
一番の強敵はリリスではないだろうか……。
アルフォードは、肩を落とすハールの肩を叩いて、そっと励ます。が、そのハールを蔑むような瞳にすら魅了される自分は、もう帰れないところまできてるのかもしれない……と、モンブランの土台を食べながら思うアルフォードだった。
私はモンブランもアップルパイもショートケーキも大好きです☆
活動報告にあった三話を順にアップするので、連投になります。迷惑にならないように夜中に予約投稿しますね。