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7 哲学者たちは狼狽える

ほんの十分ほど真西へ進めば「犬耳の宿・営業中」の看板が見えてきた。分かりやすいネーミングだ。

周囲には多くの宿屋があり、日が落ちるにつれて鎧を纏った兵士が増えてきている気がする。成る程、前線であるだけ兵士が多く駐屯しているのか。義勇兵なんかがこの辺りの宿屋で寝食を満たしているのかもしれない。

祭の提灯のような街灯に淡い橙色の明かりが灯っており、やすらぎ空間といった雰囲気が流れている。

そんな宿激戦区のような場所で、他店が「風呂食事ベッド付き!」や「バタービール プリン体ゼロあります!」の広告を出しているのに対し、ここ「犬耳の宿」の店先には他とは少し違い「国民登録もできます!」の文字が躍っていた。


「国民登録・・・」


何となくあの馬鹿かみさまの言わんとすることが分かった気がする。

俺たちはほんの数時間前異世にやってきた純日本人だ。この世界で国民として認識される証明書など持ち合わせていない。

日本で言えば保険証を作るようなものなのだろう。確かに必要だ。あの「ばかみさま」も役に立たないことはない。


「すみませーん」


からんとどこか古風な喫茶店のごとき音色を響かせながら恐る恐る室内へ足を踏み入れる。


ほぼ木製のパーツで揃えられた部屋はまさに知る人ぞ知るカフェといった(おもむき)ではあるが、中華風の食欲をそそる香りが漂っているため一杯の珈琲を頼むような場所でないことを感覚する。

客も少なくない中奇異の目を向けられつつ4人でカウンターまで歩くと


「はいはーいっ」


元気な声と床を叩くスリッパの音が響く。


カウンターの奥から犬耳の少女がエプロンの裾で手をぬぐいつつやってくる。すごい本当に犬耳だ。


「あの、国民登録ってのがあるって聞いたんですが」

「ええ、できますよ!そちらの方達もご一緒にですか?」


後ろ。怜音(れのん)、柳洞寺、奏の3人を見据える。


「ああ、お願いします」

「でも珍しいですね、成人近くなってから国民登録なんて。たいてい生まれてすぐに行うものなんですが」

「えっと、いや、両親の都合で」


まさかさっき異世界に来ましたと言える訳がない。

犬耳の娘は特に気にした様子もなく、カウンターに据え置かれた箱のようなものを操作し、ウィンドウを開いている。この世界の住人はみんなこの近未来的なPCの様なものを使えるのだろうか。


「ご両親の都合なら仕方ありませんね、親は皆尊敬すべき方達ですから」

「・・・そうですね」


「べき」というのが気になる。この世界では親は皆尊敬に値するという規範があるのだろうか。そういえばあのばかみさま(・・・・・)が「この世界の人は疑うことを知らない」みたいなことを言ってた気がするが関係あるのだろうか。


「はい、完了しました!皆様のステータスをお送りしますのでウィンドウを開いてください」

「ええ!?いつの間に!?」

「レノン様ですね!その質問に答える義理はありません!あなた私のプライバシーにまで触れてこようとしてませんか?これだから女は。訴えますよ!」

「すごい辛辣!」


怜音が見えない壁にぶち当たったみたくおろおろする。

確かに驚きだ。いつの間にかステータスとられてた事も犬耳娘が女性相手に毒舌な事も。


「さあ、ホンダユウ様!あなた様のステータスご覧になってください!」


猫なで声で急かしてくる。犬耳なのに猫なで声・・・ふふ、面白くもなんともないわ。


「えっと、じゃあ・・・」


ウィンドウを開き「通信」と書かれたボタンを見つける。


「それを押してください」

「分かった」


怜音を慰め終えた柳洞寺と奏も俺に倣う。


ぽんと心地よい音がしてファイルが届く。


「おお、これがステータスか!」

と俺がRPGっぽさに感動している中背後では


「ああああああああ!?ウイルスがあああああああああ!」

「IDパスワード盗まれたのですうううううう!」

「ひゃ、え、何かの請求が、あの、来ちゃったんですけど・・・」


阿鼻叫喚の様子だったがきっとこの犬耳娘さんは何にも関わっていないと信じたい。

【ホンダ ユウ】Lv.1 ステータス

HP 50/100    体力 193/200

MP 2/100          魔力 500/500

ATK 23/100         攻撃力 20

DEF 41/100         防御力 20

TEC 30/100         魔法攻撃 100

LUC 70/100         魔法防御 20


優「これが俺のステータスか・・・てかこの謎の空間はなんだ」

怜音「何か作者が本編で触れきれなかった部分にがんがん触れていく空間だって」

柳洞寺「都合の良いことこの上ないのです」

奏「ま、まあまあ」

優「それで?作者はどこだ?俺たちはここで何をすれば良いんだ?」

怜「作者は来てないし、駄弁でも繰り広げておけば良いんじゃない?」

奏「そ、それだともったいない、ような・・・」

柳「じゃあせっかくですしステータスにでも触れるのです。ホンダ ユウさんのステータスですね・・・えっと、ホンダ ユウって誰なのです?」

優「俺だよ!」

奏「本当だ・・・知らない、人ですね」

優「俺だよ!」

怜「てかあんた誰?」

優「俺だよ!死線を潜り抜けてきた仲間だぞ!忘れんな!」

怜「いや、あそこのハンガーのはさみ部分をかちかち鳴らしながら近寄ってくる緑のおじさん」

優「誰だよ!」

柳「あ、この辺りでこの茶番も終わりのようなのです」

優「いや、あのおっさんどんどん迫ってきてんぞ!」

奏「まさか作者とかでは無いと思いたいのですが。では今回はこの辺りで」

怜・柳・奏「「「ぐにゃにゃーい!」」」

優「い、いやああああああああ」


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