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Made In the Revenge  作者: 歩人
第一章 オルジャレノン
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第四話「猟犬」

  暗殺者養成機関(アルフヘイム)


先王ゲオルク・ツヴェルガーが崩御し、第一王子ファウスト・ツヴェルガーが即位。その時、密かに暗殺者養成機関の計画が始動した。


その為に行き場を失った子供を集め、教育したとされている。


そして、四年後に公式設立。大々的な公式発表は無く、一部の政府関係者のみに伝えられた。一般国民がその噂を口にするようになったのは、これよりずっと後に起こる事件の時。




――……




私の前に立つ二人の目は驚きで開いている。そして、驚きの他に畏怖の念も感じ取れた。私が口にした“暗殺者養成機関”の言葉は良いものでは無いから。


「な、何を言ってるんだい…?」

「じょ、冗談が過ぎる、テレサさん。」


頼むから冗談だと言ってくれ…。渇いた笑いから伝わってくる。


「冗談などではございません。暗殺者養成機関ではNo.1172と呼ばれており、腕に刻まれております。…お見せ致しましょうか?」


二人はその表情、その物言いから、真実だと悟った。ラウロは衝撃のあまり立ち尽くしている。


「…いや、いい。」


ルーカスは短く返事をすると準備の続きを始めた。棚に納められていく入荷したばかりの物の中に、銃はない。剣が主流のこの時代、どこへ行っても銃は希少だ。


暗殺者養成機関で育った私は接近戦を得意としている為、どちらかと言えば銃は苦手。銃が希少という事は問題では無かったのだが…。そんな中で私が銃を求めたのは一つの理由があったから。


そして、目当ての物を見付けた。



「ルーカス様、これを一つ追加して頂けますか?」

「…は?いや、テレサさん、それは…。」

「ルーカス様。」

「…。」


私が手にしたものが余程不思議だったようでルーカスは戸惑っていた。そこを私は有無を言わさぬようにもう一度名前を呼び、微笑んだ。


「私が、旦那様の忠犬(いぬ)と呼ばれていたのは覚えていらっしゃいますか?」




――……



あれは私が旦那様の身の回りのお世話を任されるようになってから少し経った頃。




旦那様は忙しいお方で朝は早くから、夜は遅くまで…。デスクワークや様々なパーティー、合間を見て屋敷の者達とコミュニケーションを。重労働という訳では無かったが、常に何かをされていた。


私は少しでも旦那様のお役に立てるよう、必死に忠義を尽くした。寝る間を惜しんで日程の管理、メイドの統括、外出時には共に行き不都合の無いようにした。


その日行われたパーティーも、主催の方や旦那にも同席を許され、いつも通りに同席。そして、いつも通りに隅の方に居た。いつでも旦那様の所へ駆け付けられるように。


そんな時だ。




「忠犬。」




醜く、脂肪に包まれた豚のような男にそう吐き捨てられた。


「犬はいつからパーティーに参加するようになったんだ?」


下卑た笑みを浮かべながら私の前に立つ男。男の周りを見れば似たような男と女が居た。普通なら苛立ちや悲しみ、屈辱を感じるであろうが、私はそんな事は無かった。


何故なら頭の中は旦那様でいっぱいだから。こんな豚のような男に構っている暇など無く、旦那様のみを見続けた。


それが気に食わなかったのか、手にしていたワインを私の頭へ浴びせた。


「あぁ、私とした事が、手が滑ってしまった。」


わざとらしく笑い、更に手を伸ばしてくる。もう少しで私に触れる、何をするつもりだろうか。






「失礼、フォラルダ伯。私の使いの者が何か失礼を働きましたかな?」




旦那様…。いつものように穏やかな笑みを浮かべているが、目の底から伝わってくるのは微かな怒り。


フォラルダと呼ばれた男はぶつかっただけだと足早にその場を離れた。


「大丈夫かい、テレサ。すまなかったね。」


優しい手付きで髪や顔を吹いて下さる旦那様。その後旦那様と私はパーティーの最中だったが屋敷に帰ることにした。


その帰り、あの男はメイドや執事に運が無く、ろくな者と出会っていないと聞いた。要するにただの妬みだ。



――……



「…あぁ。一時の間柄、テレサさんが忠犬と呼ばれたと噂になっていたな。」

「はい。忠犬(いぬ)だなんて…結構じゃありませんか。()が、ご主人様(旦那様)を殺されて次にすることは一つ。仇を狩る事にございます。」


私が握るもの、それは猟銃。


獲物を前に目をギラつかせる私の姿。それは正しく、






                    『猟犬』



To Be Continued...

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