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第一王子

第一王子、レイナルド視点です。

俺の名前はレイナルド・アルフォート。この国の第一王子だ。

この外見と、この地位のせいで知らぬ者など、この国にはいないと思っていた。あの一言を聞くまでは…



暇潰しに城下へお忍びで出かけようとしたところ、あの令嬢がいた。

この国の第三王子のランに暴言をはいた珍しい令嬢が。

咄嗟に声を掛けると、なんとランに用があるみたいだった。

俺は面白半分、親切半分でランの所まで連れて行こうとする。

そこであの一言が令嬢の小さい口から発せられた。

『あの、勝手に入っていいんですか?』

ここは俺の城。普通に出入りできるに決まっている。それなのに、この令嬢は聞いてきたのだ。

え?まじで知らないのか、この俺を。

驚いた。この国の、ましてや令嬢なのに俺のことを知らないとは。

しかも、ちゃっかり手も繋いでいるのに顔色一つ変えないとは…

ハッと気付くと令嬢が不安そうにこちらを見ていた。

「あぁ、いいのいいの。」

俺は悟られないように満面の笑みでそう返した。

目的の場所に着くと相変わらずランは寝ていた。

ランはこの場所が好きだ。ランの母親…サオリ・ミカミが自ら愛した、このバラ園が。

ランの近くまで行くと、俺たちの気配に気付いてか直ぐに目を覚ました。

俺は令嬢を客だと前にやり、どんなラブラブシーンを見せられるのかとワクワクしていたのだが、令嬢は『お礼』という包みをランめがけて放り、さっさと出て行ってしまった。

ざーんねんだな。

折角、可愛い異母弟に春が来たと嬉しく思ったんだがな。

「何だそれ?開けてみろよ」

お礼に何処の店のクッキーか、ワクワクしながらランが包みを開けるのを待つ。

ランが包みを開けると、ふわっと良い匂いが香った。

「なんだこれ…美味しそうだな」

「あぁ」

よく見れば店の名前が何処にも無い。

「まさか、手作りか?」

「だろうな…店に売っているのを見たことがないしな。」

まさか令嬢がお礼に手作りクッキーを渡しにくるとは。しかも食べてみたら美味いレベルだった。

「おい、何が入ってるのか分からないんだぞ、食べていいのか?」

「これは食べないと損だぞ?」

口に入れると程よい甘さが広がりこんがりと焼けたサクサク感が何とも言えない美味しさを味合わせてくれる。

俺の勧めに漸く手作りクッキーに手を伸ばしたラン。

「美味しいだろ?」

「まぁ、人並みにはな」

そんな素っ気ない態度を取りつつ、パクパクと頬張る姿が微笑ましい。

「そういえばラン、あの令嬢にお礼をされることをしたのか?」

「んー、夜会の帰りに賊に襲われていたのを助けた」

「へぇ、珍しいな」

ランが人助けなんてな。

「助けたっていうか、助けても、何も言われてないけど。まぁ、暇だったし」

「へぇ、ますます気になるな。あの令嬢…」

何だろう…特別美人って訳でもないし、特殊な力があるわけでもない。

ただ、会う度に心が惹かれていく気がしてならない。

それに、男に関心のない令嬢っていうのも新鮮で、こちらを向かせたくなるしな。

「今度、あの令嬢を王城へ招待しようぜ?もっとゆっくり話してみたい。」

「はーーーーーーー。別にいいが、面倒なことになるなよ」

「分かってるって」

「俺はもう寝る。今度こそ起こすな」

「はいはい、またなー」

俺はひらひらと右手を振り、執務室へと帰った。

これから楽しくなりそう。と、密かな期待と喜びで机に頬杖をつき、意味を含んだ笑みを見せる程に。


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