出会い
私の初恋は下町に住んでいた燃えるような髪と瞳を持つ男の子。優しくて私よりも弱くて、何だが頼りない男の子だけど、温かくて安心できた幼馴染み。アレン・シリウス
アレンとは11歳の時に私が王都に引っ越してしまい、今まで会っていない。
彼は今、何をしているんだろう…
「それにしても、豪華…」
軽やかな音楽が流れ、色鮮やかなドレスを纏う貴族令嬢様達(美人)。
白が貴重の天井は高く、夜のはずなのに明かりが凄い。料理も凄い(あ、あれ美味しそう)
そんな事を思い現時報告を誰かにしているのは私、ニコ・メイリス。
身長、体重共に普通。茶髪に黄緑の瞳。つい最近まで庶民でした。
まぁ、庶民から貴族になるっていう在り来たりな人生ですが、只今人生初の夜会舞踏会アーンド王城に来ております。
至って目立たないドレスを着て、料理コーナーへレッツゴー。
食べる気満々で来ましたけど何か?
祖父母に料理でつられて来ましたけど何か?
さっさと食べて家に帰ろうとしたら料理コーナーの所から黄色い声が聞こえてきた。
「レイ様よ!」
「ラン様が珍しく夜会に来てらっしゃってるわ!」
「はぁぁ~、お美しい…」
令嬢様達は口々に言っているがそんなに人が集まると料理が取れない。
邪魔だなぁ…
人と人との間をすり抜けて料理が目の前にきた時だった。
ドンっと誰かにぶつかった。
「っと…ごめんなさい。」
咄嗟に謝る。すると、多分ぶつかった人物の口から舌打ちが聞こえた。はぁ!?
「ちょっと、舌打ちするほどでもないでしょ?」
私は舌打ちに対する抗議をするべく相手の顔を見やる。
かなり上の方を見ないと見えない相手の顔はどこまでも黒い漆黒の髪と瞳を持っている整った顔だった。珍しい色…
その漆黒の瞳が私を映した。
「私に堂々とぶつかる時点で無礼に値するのでは無いか?」
頭上から聞こえたのは低い声…私とぶつかった男の声…ん?てかこいつ、無礼とか言いやがった?
「何が?…何が無礼なのよ!大体、貴方達が道を塞いでいるのが悪いんでしょ!」
男の片眉がピクッと上がった。
「…お前、私を知らないのか?」
「知らないわよ!」
「ならば教えてやろう、私はこの国の第三王子だ。」
「王子?この国の王子は謝ることも出来ないのね!失礼するわ、御機嫌よう」
胸くそ悪いったらありはしないので早くこの場から立ち去った。
何が王子よ!王子ってだけで威張っちゃって、本当あんな男みたいな奴は大っ嫌い!
私は心の中であの第三王子とか名乗る男を罵倒しながら念願の料理コーナーへと多少荒くなっている足を進めた。
その姿を見ている第三王子と第一王子。
「いいな。あの子」
第一王子が小声で言った。
「お前の目は節穴か、あんなじゃじゃ馬な令嬢の何処がいいんだ」
若干、溜め息混じりに腹違いの兄を横目で見やる第三王子。
「従えたくなるだろ?」
フッと意味の含んだ笑みを残し第一王子は第三王子の肩を叩き、令嬢達の方へ向かった。
「面倒だな…」
何に対する面倒なのか、第三王子は後ろ頭を掻きながら兄のいる方へ渋々向かった。
そんな王子達の話など聞こえてない、いや、聞く気の無いニコはマイ皿を片手に持ち豪華な料理を山盛りに積み上げて、ゆっくり食べるべく外の庭へと足を浮きだたせベンチを目指す。
ベンチの前まで行くと、ベンチには先客がいた。
「…誰?」
先にベンチを陣取っているのは…と言う言葉は呑み込んだ。
「あのー…こんなところで寝てたら風邪を引きますよ?」
てか、寝るなら他所で寝ろ、私は座って食べたいんだ。
私の声に気付いたのか、俯きで寝ている男性が薄らと目を開けた。私は男性の瞳をみると息を詰まらせた。
「…っ、オッド、アイ…」
右目が浅葱色で左目が緋色となんとも目を奪われる男性、色素の薄いふわふわな髪も全てが神秘的だった。
「心配してくれて有難う。だが、俺のことは気にするな」
と、そのまま寝ようとする神秘的な男性。
私はそれを阻止する。
「ちょっ、私は心配してるんじゃ無くて、このベンチで座って食事がしたいの!」
「そうか。」
そうか。と言いながら一向に動こうとしないので強行突破をさせていただく。
俯けで寝ている男性の背中に勢いをつけ座ったのだ。
「ゔっ」
相手の顔が苦痛で歪む。
「貴方が退いてくれないので此処で食べます。」
「お前はそれっでも令嬢か…」
「お生憎、令嬢になったのは最近ですので、オホホ」
私は尚も神秘的な男性の背中に座りながら右手を口に添えて上品に笑う。
「分かった、退ける。退けるから一先ず降りてくれ」
降参とばかりにベンチを叩く神秘的な男性に勝った!という表情で降りる。
漸くベンチへと腰掛け、豪華な料理ちゃん達を召し上がっていた所…
「あの…何で座るんですか?」
神秘的な男性が何の許可もなく私の横に座ったのだ。まぁ、共同だから許可も何も無いけども、いやいや、普通は何処かに行くでしょ!どんだけこのベンチが好きなんだよ!
と、いう目で見ていると、オッドアイの瞳と目があった。
「いや、別にこのベンチが好きとかでは無いが…」
「えっ!?」
私の考えていることに答えをくれ、咄嗟に驚きの声が出てしまった。
超能力者か!テレパシーか!ふんっ!受けてたとうでは無いかっ!はっーっはっはっは!
「ぶはっ!クックックッ」
突然、神秘的な男性が吹き出した。
へぇー…
「貴方、絶対笑ってる方がいいわ」
私がそう言うと男性が息を詰まらせ、下を向いた。
変な事を言ってしまったかしら…と少し不安になるが、下を向いた男性がごにょごにょと言っている。聞こえづらい
「ん?」
「…だ、から…」
「うん。」
「ぁ…ぁりがとぅ…と言ったんだ」
と、私を横目で見やる顔が密かに…
ちょーーーーーーっと待てぃ!何だ?何だんだ!あの、ガチ照れ顏はーーーー!いゃ、待って待って、可愛い…とか、思っちゃったりして…
ジーッと、見つめてしまう。しかし、綺麗な手に遮られた。
「あまり見るな。」
綺麗な手により視界が遮られたが男性の息を吐く音がしたのと同時に綺麗な手が離れた。
「もう照れてないのね」
少し残念そうに言ってしまった。まぁ残念なんだけど…顔は元の綺麗で神秘的な顔に戻っている。
「一時的だからな、そう何度も赤くなりたくない。」
「それもそうね」
男性の言葉にフフッと微笑む。
何となく良い雰囲気になったと思ったら、上から私を呼ぶ声が聞こえた。
「ニコちゃーん、そろそろ帰りましょう。」
「お祖母様が呼んでるわ。また会えるといいわね。それじゃあ」
料理を平らげた空っぽのマイ皿を持ち、男性に挨拶をしてお祖母様の元へ小走りに急ぐ。
そんなニコの後ろ姿をオッドアイの瞳で見ている男性…
オッドアイの男性は自分にあのような態度をとったニコに何やら思いついた様子で薄らと笑った。
「ニコって言うのか。道理で俺の事を知らないはずだ。俺を知らない女か…」