別れと宝物
ある日、いつものように目覚めるとミカはそばにいなかった。
いつもは私の目が覚めるまでそばにいてくれるのに。
そして、テーブルの上には書置きが置いてあった。
私の愛するニナへ
いきなりの別れを許してほしい。
理由は書けないが、けっして君を愛していないからというわけではない。
ユナにはここを出て自由になってほしい。
僕を待つ必要もない。
ミカより
「なんで…」
理由は書けないって、自由になってほしいって…。
ミカなしじゃ生きられないのにいきなり別れを押し付けられた私はどうすればいいの?
それから私は彼と過ごしてきた部屋から出ることなく、抜け殻のように過ごしてきた。
なんで自分が生きているのかが全く分からなかった。
本当にこの世から消え去ってしまいたいと思った。
数日たって私は自分のなかの変化に気付いた。
私のなかには新たな命が宿っていた。
今まで抜け殻だった私はその日生きる意味を見つけた。
この子のために、まだ見ぬ私とミカの子を産み守っていこうと思った。
それまで神様なんて大嫌いだったけど、初めて神に感謝した。
このままこの部屋にいてはいけないと思い、次の日荷造りをして外へ出た。
ドアを開けるとそこは『ピュセス』ではなく『モリアーデ』だった。
そして私の家のすぐ近くだった。
ドアを閉めると消えてなくなりもう戻れなくなった。
家の中には高価な宝石が何個も置いてあった。
本当に憎たらしい人…。
子供のために私は裏社会から足を洗った。
裏社会で手に入れた情報と引き換えに公爵家に侍女として雇ってもらえた。
公爵はその情報を使い、例の伯爵を失脚させ極刑にかけさせた。
最初はどうして雇われたのか、何かあるのではないかと思っていたが、公爵ご夫妻は少し前お子様を亡くされたらしい。子を身ごもり、子のために裏社会から足を洗った私を見捨てたくはなかったと後に語ってくださった。
そして…
私は一人の男の子を産んだ。
お世話になっている公爵夫人が名付け親になりたいとおっしゃったのでお願いした。
シエル・オキ=ヴァーブ
ミカと同じ銀髪と翡翠の瞳の元気な男の子だった。
本当にうれしかった。
この宝物のためなら何でも命ですら投げ出せると思った。
本当に幸せ…だった。




