ミカとニナ
一夜明けて、ベッドの中でまどろんでいるとき私は彼へとずっと気になっていた疑問をぶつけてみた。
「それで…あなたは誰?」
「知ってるだろう?ヒカル=モリナガだ」
違う。
だって私の病気は『ピュセス』の科学力では治せない。
もちろん『モリアーデ』の魔術でも完璧には治せない。
どちらも症状を抑えることはできるけど…。
なのに今の私の体は病気なんて初めからなかったかのように健康体だ。
こんなのありえない。
「あなたは“ヒト”ではない。そうでしょ?」
彼は私の言葉を聞いて息をのんだ。
気づいてないと思っていた?
こう見えて私はただの暗殺者じゃない。
私は前世からの記憶を持っていて、
何度も神から命を狙われてきたディスカードの魂脈の生き残りの一人。
気配に聡くないと生き残れなかった。
そんな自分でも規格外だと思える魔女の私の目をごまかせると本当に思っていた?
あなただって私のことに気付いていたでしょう?
「本当のことを言って…真実を知ってもあなたからは離れない」
彼は目を見開いて私のことを見つめ続けていた。
「あなたの名前を知りたい。あなたを、愛する人を名前で呼びたいの…」
あなたは私の名前を呼べるのに私は呼べないなんて不公平でしょう?
いつまでも『あなた』だなんて呼びたくない。
その間に壁があるみたいで、けっして埋まらない溝があるみたいで嫌なの…。
だからあなたの“名前”が知りたい。
「ねぇ…教えてくれないの?」
「名前は嫌いなんだ。嫌いな人が名付けたから…どうせならニナが呼びたい様に呼んで?」
私が呼びたい様に?
何かはぐらかされたけど彼の翡翠の瞳を見ると一歩も引かなそうな感じに見えた。
だから私は考えた。
「じゃあ…『ミカ』なんてどう?」
銀の髪と緑の瞳を持つとされる私の最初の生まれ故郷の天使の名前…。
何故だか彼にぴったりだと思った。
今まで忘れていたその名前がふと頭に浮かんだ。
「おかしかった?嫌ならまた違うものを考えるけど…」
何も反応を返さない彼に気付いて気に入らなかったのかと思い、声をかける。
すると彼は『ミカ』は微笑んだ。
「それでいいよ。今日から僕は『ミカ』だ。改めてよろしく…ニナ」
「ミカ、こちらこそよろしくお願いします」
このとき私は確かにあたたかな“幸せ”を感じた。
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『ふーん、それで名前「すら」知らないんだ』
『何か口調崩れていませんか…』
『気のせいだと思いますよ、母上?』
『ハイ、ソウデスネ』
『それでどうしてこんなにもラブラブなのに別れたりしたんです?』
『…』
『母上?』
『さぁ…?私が知りたいくらいよ。本当になんでかしら?』




