両想い
それから私は警察に引き渡されることなくそのまま最初に目覚めた部屋に監禁された。
犯罪者には似つかわしくない豪華なしかし窓が一つもない部屋だった。だから時間がどれくらいたったのかもよくわからなかった。でも部屋内を歩きまわることは許された。
まぁ、鎖で両手両足を繋がれていて自由はなかったけど。
そして彼は時々私を見に来た。ちゃんといるかどうかの確認で…ついでに少しの世間話。主に例の伯爵についての話だった。
そして、その日がきた。
私はまだ両親が生きていた幼いころから心臓を患っていてあまり丈夫ではなかった。
普段は定期的に自らの魔力を使って疾患を軽減しているけど封印具のせいでそれができなかった。
私は心臓に痛みを感じ胸を押さえ…そして血を吐いて床に崩れ落ちた。
目を覚ますと今度は天蓋が見え、縛られていなかった。
私は豪華な天蓋付きのベッドに寝かされており、枕元には彼がいて寝息を立てていた。
しばらく何があったのかわからなかった。
彼は私のことを自分を狙ってきた暗殺者だと思っているはずなのに何でこんな隙をみせているの?
まぁ殺す気なんて少しもなかったけど。
なんとなく彼の頭を撫でていると目を覚ましたのか彼の体が少し動いた。
その動きに思わず手を引っ込めようとしたがその手は別の手につかまれ戻すことができなかった。
「起きたのか…苦しいところはないか?」
その言葉に私は首を横に振ることしかできなかった。
心配してくれているの?どうして…
「倒れているニナをみて心臓が止まるかと思った」
だからどうして?
「目が覚めて本当によかった…」
そう言って彼は私を強い力で抱きしめてきた。
その腕と体は暖かくて懐かしい気がした。
もう絶対に感じられないとあきらめていたぬくもりだと思っていたから自然と涙が出てきたことも不思議には思わなかった。
小さな嗚咽を漏らすと彼は気づいて顔を覗き込んできた。
「どうかしたのか…ニナ?」
その声には私を心配する気持ちがうかがえてまた更に涙があふれてきた。
「あたたかい…わたし、あなたのことが好き、大好き」
そして私は彼の胸に顔をうずめ、抱きしめた。
「僕もニナのことが好きだよ…愛している」
「…本当に?」
涙を流しながら私は問うた。彼の言葉が、気持ちが信じられなかった。
私は誰にも表立って言えない生業をしている女で彼はどんな人からも称賛される男で…私はそれを変装して彼のそばにいたころに知っていた。
「本当だよ。目隠しを外して君の紫銀の瞳を見た途端に恋に落ちた…一目ぼれとか運命とかそれまで信じていなかったけど確かに感じたんだ」
そう言って彼は私の涙を唇で拭いていった。
彼の唇を目元に感じると私は思わず瞼を閉じて、そして顔が恥ずかしさで赤くなった。
そんな赤くなった私をかわいいと言って彼は言葉を続けた。
「もう君を離したくない。どこにも行かせたくないと本気で思っているんだ。今までこんなに誰かから離れたくないって思えるような人には出会ってこなかった」
「私もあなたにはずっとそばにいてほしい。離れてほしくない。本当に大好きなの…」
そして私たちは唇を合わせ、一夜を共に過ごした。
-------------------------------------
『ほぉ…』
『何か怖いですよ…』
『ここで俺ができたわけですね』
『え、どうだろ…?その後も結構一緒に過ごしたからなぁ…』
『なんでここで愛が生まれたのかさっぱりなのですが…』
『それこそ「運命の出会い」ってヤツ?』
『全然意味が分かりません』
『息子よ。愛とは理屈ではないのだ』
『なに劇みたいに言っちゃっているのですか、母上』
『息子よ。もう少し頭やわらかくしようか』




