第6話 2回戦の試合直前
「な、なんじゃこりゃあ!!」
1回戦の翌日の午前……練習は午後からなので、チームメイトたちとホテルのロビーでくつろいでいたのだが。
自由に読んでいいように置いてある新聞のうちの一つ、とあるスポーツ新聞の一面の見出しを見て、オレは絶句するしかなかった。
「えーと、『【甲子園】開幕試合で衝撃の4打席連続本塁打 5校連合・オージロウ 次も普通に打てる 早くも5打席連続宣言』ってオージロウさんのことがド派手に書いてあるです」
「ちょっと! わざわざ大声で読み上げるのやめてくれよひょ〜ろくくん!」
「オージロウ! お前がこんなビッグマウス野郎だとは、今まで知らなかったぜ〜!」
「調子に乗って思わず本性現したってか」
「さすがは『連合チームの怪物二刀流』! 言うことが俺たちとは違うわ!」
「いや、オレ、インタビューでこんなこと言ってねえよ!『打てるといいな〜』って、それだけしか!信じてくれよみんな!」
「もういいじゃん、この方がおもろいし!」
「次の試合、相手ピッチャーの反応が楽しみだなぁ〜!ギャハハハ!」
コイツら他人事だと思って……それになんか、他のお客さんの視線がオレに向けられてる気がする。いや実際どうだか分かんないけど、そう感じてしまうんだ。
オレはもう、いたたまれない気持ちになっちゃって、その日は練習とメシと風呂以外は部屋に引きこもらざるを得なかった。
くそっ……もし将来プロ野球選手になったら、このスポーツ新聞だけはインタビュー拒否してやるっ!
そうそう、古池監督に連れられて近くの病院で左手を精密検査してもらったしょーただけど。
骨自体は異常がなく、正式に親指の突き指で全治一週間と診断が出た。
一週間か……次の試合がまさに7日後。長いと思っていた待機期間が、なんか一気に短く感じられる。
でもまあ、相手の方がもっと長く待つことになるから調整が大変だろうな。
次の2回戦の相手は、実は抽選会の時点で決まっている。49の代表校のうち最後に登場する高校……抽選の時点では開幕試合の勝者が相手とだけしかわからない、あの抽選枠だ。
その名は赤石高校……出場校の中でも数少ない公立高校で数十年ぶりの出場という、いわゆる古豪ってやつ。
かなり昔……まだ『全国中等学校優勝野球大会』だった時代に甲子園で伝説的な試合をしたことがあるってことで高校野球マニアには有名らしいけど。それは令和の世で試合するオレたちにとっては昔話に過ぎない。
それよりも問題なのは相手のエースだ。地方大会では投打において、ほぼ一人の力で勝ち抜いてきたといっても過言じゃない成績を残している。
つまりそれだけ強力なピッチャーだってこと……ああ、早く対戦してみたい。
というわけで、次の試合に向けての練習はそのエースへの対策が中心となる。
◇
そんなこんなであっという間に一週間が過ぎた。
で、相手エースへの対策だが……正直なところ不十分な練習しかできなかった。
まず、そのエースが投げる球種の中にウチの投手陣の誰もが投げていないものがある。
投げ方も独特なので、ボールの軌道を再現することも難しい……しょーたができうる限り真似をしてバッピを務めてくれたけど、球速も球威も違いすぎる。
まあ、あとは実際に見てその場で何とか対策を立てるしかない。
あと不安材料としては、やはりしょーたの左親指。テーピングでグルグル巻きにして補強してるけど……この前みたいにずっと全開で投げるのは難しいかも。
まあ今日は3試合だけで夕方の部が無くて、ウチは幸か不幸か真っ昼間の第3試合なのでナイターになる可能性はゼロ。打たせて取る組み立てで行こうかな。
そして今、オレたちは甲子園球場入りした。
試合開始までの待ち時間、室内練習場で調整させてもらえるので早速向かったのだが、そこでオレたちを待ち受けていたのは……。
「やあ〜、しょーたく〜ん、久しぶり。まさか五次浦たちを倒してここまでたどり着くなんて……悪運だけはホント強いよね〜、昔からさあ〜!」
「……オージロウ。春の練習試合での借り、ここでキッチリ耳揃えて返してやらあ」
多岐川第三高校の木崎と津々木マイクのコンビであった。といってもコイツら仲良しってわけじゃなさそうだけど。
しょーたに絡んできた方が木崎で、しょーたにとって中学時代のチームメイトかつ因縁の相手でもある。五次浦も同じくで、オレたちはヤツのいるチームを地方予選決勝で破ったのである。
そしてオレに絡んできた方が津々木。190センチ超の大型右腕でバッティングも得意の外角打ちが非常にパワフルな男だ。
「お前らなんでここにいるんだよ。第2試合が出番のはずだろう?」
「それがさあ、第一試合のテンポが遅いうえに延長に突入しちゃって」
「……だがそろそろ終わるみたいだ。俺たちは丁度行こうとしていたところだ」
「そうか。じゃあ頑張れよな」
「……そっちこそ。次こそは叩きのめしてやるから覚悟しておけ、オージロウ」
そう、お互い勝ち抜けば3回戦で当たることになる。しょーたも木崎と再戦と決着を誓い合ってオレたちは別れた。
◇
「大変だ! えらいことになったぞ、オージロウ! しょーた!」
「どうしたんだよ田白、血相変えて走ってきて」
「それが……多岐川第三が負けた! 今まで無名の高校……青懸巣学園に!」
ま、マジか……あんなに強い奴らを……その青懸巣学園にはいったいどんな選手たちがいるというんだ!?
<あとがき>
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