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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
1回戦

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6/12

第5話 絶好調

「チクショ〜! 結局全部振り遅れちまった!」


 オレがスリーランを放ったあとに打席に入った阿戸さんが嘆きながらベンチに戻ってきた。


 確かに振り遅れて三振を喫したけど……前宏田まえひろだのストレートはあまりノビてこないし、打てないボールじゃないと思う。


「ドンマイっすよ。次は打てますって」


「オージロウにそう言われても参考になんねーんだよ!」


「悪いけどおれもその意見に賛成。やっぱり160キロは普通じゃない」


 しょーたまで……お前こそオレのボール受けてるじゃん。打つのと捕るのは違うと言っても、と反論しかけたのだが、古池監督が割って入ってきた。


「確かに速いけどさ、目がナイターにまだ慣れてないのもあると思うよ」


「そりゃあ真っ昼間よりも暗いですけど、甲子園は照明もめっちゃ明るいですよ」


「それでも光の当たり方が違うし、距離感がつかみづらくなる。だから慣れるまでは早めにタイミングを取って、前で捉えるくらいのつもりで打ちにいったほうがいいかもね」


「オージロウはそうしたのか?」


「いや、いつも通り引きつけて打ったけど」


「オージロウくんはスイングスピードが段違いだし広角に打てるから……そこは一緒にしないほうがいいと思う」


「はーい」


 なるほど……だからオレも引っ張ったつもりがレフトスタンドに飛んでったのか。


 神香陵かみこうりょう学園は恐らくグラウンドに照明設備あるだろうから慣れてるけどウチは……ということは、やっぱり相手打線をできるだけ三振に仕留めるべきだ。


 目が慣れるまでは、打たせて取ると同じように

距離感が掴みづらくてエラーが出るかも。


 そういうことで行けるところまで全力で飛ばす!


「うりゃあああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


 よしっ! 1回裏途中から5回裏まで13人連続三振でパーフェクトピッチング。


 気持ちいいくらい高めのストレートを振ってくれる……ノビとホップが半端ないのはオレが絶好調の証。


 168キロは出ないけど、決め球は常に165キロを超えてるし、そのたびにスタンドがワァーッと盛り上がるのも快感だ。


 オレは上機嫌でベンチに戻る。しょーたも……と思ったが、記録員としてベンチ入りしている埜邑のむら工業女子マネの鯉沼こいぬまさんが心配顔でしょーたに声をかける。


「ん? どうしたのしょーた、なんか浮かない顔しちゃって」


「いや、なんでもないから、よっちゃん。今日は開会式から選手宣誓やって神経使ったから、そう見えるだけさ」


「……ふーん、ならいいんだけど」


 どうしたんだろう、なんか引っかかるな。


 『よっちゃん』こと鯉沼さんはしょーたとは幼馴染み……彼女が感づいたのであれば、何かあるのでは。


「オージロウくん、この回の先頭バッターでしょ!」


 おっと、監督から注意が飛んできた。すぐにバットとヘルメットを持って打席に向かわねば。


「のん気に打席に入るなんて余裕こいてくれるじゃん、オージロウくん!」


 マウンドの前宏田からイヤミを言われてしまった。まあリードされてるのだからイラつくのも無理はないけど。


 というわけですぐにバットを構える……そして前宏田も間を空けずに投球モーションに入って。


「このボールで気合いを入れ直してやらあ!」


 やっぱり来たか……内角胸元を厳しく突いたストレート!


「うりゃあああっ!!」


 バッシィーーン!!


 若干ボール気味だったけど……予測できてたから全力で振り抜いた。


 またちょっとタイミングがズレたのか、打球はセンター後方、というかちょっとレフト寄り。


 浜風に流されてバックスクリーンの横まで行っちゃったけど、無事にスタンドイン!


「ま、またストレートをあっさりとホームランに……!」

「前宏田の自己ベスト163キロでも通じねえのかよー!」


 これで5点リードに変わった。


 オレは序盤ほど気持ちが入ってないので淡々とベースを回ったけど、前宏田だけでなく神香陵の選手たち、そしてスタンドの応援団が落胆しているのが感じられてなんだか申し訳ないような……。


 だけど勝負事だから。それを覚悟で出場してるはずだし、変に手を抜くのも失礼だ。


 そして続く阿戸さんも。


 グワッシィーン!


 目が慣れたのか、内角低めのスプリットをカチ上げてレフトフェンス直撃の2塁打。


 続く田白にもタイムリーが飛び出して1点追加。失意の前宏田はこの回限りで降板となったのである。



「ストライク! バッターアウト!」


 回は既に終盤の7回裏。


 オレは相変わらずの絶好調で連続三振を18に伸ばした。


 次に右打席に迎えるのは4番の前宏田……降板後はレフトに入って打線に残っている。


 とにかく1点返したい、そんな目をしている相手にオレは容赦なく166キロのストレートを投げ込んで……あっという間にツーストライク。


 そして最後のボール!


「うりゃあああっ!!」


「くそっ! 当たれ〜!!」


 ガコッ!!


 バットに当たった……いやかすっただけか。


 ボールはそのままズバンッ!! と、しょーたのミットに収まった。


「ストライク、バッターアウト!」


 ふう。最後はファウルチップで仕留めた……遂に19人連続三振達成! ひゃっほう!!


 と浮かれている場合ではなかった。


「ぐ、ぐああっ……!!」


「しょーた! 左手をどうしたんだ!!」


 右手でミットの上から左手を押さえて痛がるしょーた。


 慌ててベンチまで連れて行って、その後は鯉沼さんが救護室へ連れて行って……急にどうしちゃったんだよ!?


 しかしオレは8回表の先頭バッター。心配だが行かねばならない。


 そして4打席連続ホームランもかかっている。ダメ押し点にもなるし、とにかく狙っていこう。


 ピッチャーはもう1人の控えピッチャー西にし。強気に内角を攻めるピッチングが持ち味らしい。


 ということでオレの狙いは……早速来た!


「うりゃああっ!!」


 バシィーン!! とライトポールへと打球が向かっていく。


 内角から更に食い込んでくるカットボールを身体の回転を使って弾き返した……までは良かったが。


 芯より少し根元側で捉えた上に浜風で押し戻され……ちょっと足りないかな?


「あ゙あ゙〜! または入っちまうよ〜!」

「行ったあーっ! 4打席連続ホームラン!!」

「オージロウぉぉぉーーっ!!」


 ギリギリのスタンドイン……だがここは素直に喜んでおこう、心のなかで。


 そして8回裏からはオレが降板してわだちくん、大岡と継投していく。


 100球超えたからってのもあるけど、今日のオレのボールは勝崎さんには難しい……しょーたでないと。


 轍くんは残念ながら緊張もあって2失点。だけど8回は最後まで一人で投げ抜いた。


 9回もアンダースローの大岡が順調にアウトを重ねていき……。


 ズバンッ!!


「ストライク、バッターアウト! 7−2で5校連合チームの勝利!」


 最後は得意の浮き上がりながら曲がるスライダーで空振り三振で締めた。


「いやったあああーっ! 連合チームが強豪私学を破ったああ!」

「まさに、今日は歴史的な勝利の日だ!」

「優勝を狙うはずが、まさか1回戦敗退なんて……」


 試合終了は20時過ぎで開始時よりは観客が減っているが、そうと感じさせないざわめきと歓声が球場を包んでいる。


 まあ、はっきり言って番狂わせだろうから仕方がないけど。


 そして整列と挨拶……最後に相手チームとの握手でオレの正面は前宏田。


 どうしよう……オレはいいけど、向こうは勝てると思ってた相手に完敗して不貞腐れてるかも。


 オレは無言で恐る恐る手を出す……すると。


「……スゴかった。俺らの分まで勝ち上がってくれよな」


 しかめっ面で強めの握手ではあったが、余計なことは言わずに勝利を称えてくれた。


 オレも素直に『はい』とだけ短く返してから離れる。


 それから校歌斉唱……今回は御野ヶ島高校が流れる。


 離島で年々生徒数が減少しており、2度とこんな機会は無いかもしれない、ということで最優先になったのだ。


 そうそう、しょーたは恐らく親指の突き指という診断でひと安心。それはいいが、やはり鯉沼さんが指摘した時点で左手が痛いのを我慢していたとのこと。


 古池監督からは注意を受け、明日は一緒に精密検査を受けに行くそうだ。


 最後にインタビュー。しょーたは無理なので結局オレが受けることに。


「今日の試合、4打数4本塁打の大活躍でした。2回戦の第一打席では5打席連続ホームランがかかることになりますが」


 いきなりそれかよ。そんなの考えてなかったし、とにかく無難に答えておこう。


「まあ、打てる……といいんですけど。そう思います」


 なんかパッとしないけど、こんなもんかな。


 そのあとの質問も当たり障りなく返して……。


 全てが終わってホテルに帰り着いたのは21時過ぎ。


 それから風呂入って晩メシ食って……そのあとは何かする力も残ってなくて、オレたちは即座に就寝したのであった。

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は3月9日(月)の予定です

よろしくお願いします

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