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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
1回戦

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5/12

第4話 ナイター突入

 1回表は結局オレのソロホームランだけで終わった。それでも先制して1−0とリード……まだ緊張感覚めやらぬ開幕試合でこれは大きい。


 そしてその裏、神香陵かみこうりょう学園の攻撃が始まる……というか。


「うりゃああ!」


 ズバン!


「ストライク! バッターアウト!」


 うっしゃ! あっという間に2者連続三振で早くもツーアウト。


 さて次は3番……だがここは何とか3人で終わらせたい。


 もちろんその方が勢いに乗れるというのもあるけど、もうひとつの理由としては既に18時をだいぶ過ぎているから。


 空は薄暮に移ろうとしている……もうすぐ照明が点灯するであろうこの時間帯が守備にとって最も危険だ。


 5校連合の中でグラウンドに照明設備があるのは、埜邑のむら工業のみ。こちらへ移動する前に一度だけ合同練習で18時過ぎに体験したけど……慣れたとは言い難いんだよな。


「さあー、どこにでも投げ込んでこいやー!」


 おっと。中距離打者ながらパンチ力もあって俊足の3番バッター、伊里口いりぐちが既に右打席に入ってる。


 なかなか威勢がいいね。じゃあ遠慮なく!


「うりゃああっ!」


「うわあっ! ボールが向かってくる!」


 ズバン!!


「ストライク!」


 確かに内角高めに投げたけど、ちゃんとストライクゾーンのコーナーに収まってるよ。


 でも向かってくるように錯覚するほどの威力があったということで。我ながら今日もストレートが絶好調だ。


 というわけで続けて内角をえぐって、最後は外角低めでトドメを刺す。


「うりゃああっ!」


「2度もビビってたまるかぁ!」


 ガコーンッ!


 残念、当てられちまった。けどショートへのポップフライ……守備が安定している大岡だから問題ない。


「ん……どこだボール!?」


 まさか、と思った瞬間にボトッと打球が地面に落ちた音を聞いてしまった。


「……悪い、ボールを見失った」

「ドンマイ、大岡。まあ、次を抑えれば済むことだ」


 心配が現実になってしまった。次のバッターは三振で仕留めたほうが良さそうだ。


「ランナー出たー! ラッキー!」

「ラッキーついでに逆転と行こうぜぇ〜!」


 くそっ。静まりかけていた相手応援団が盛り返してる。


 それよりも、終わったと思って気持ちが切れちゃったから……上手く立て直せたらいいんだけど。


 そんなイヤな雰囲気で右打席に迎えたのは。


「まぁ〜お手柔らかに頼むよ、オージロウくん! アハハ!」


 何がお手柔らかに、だ。開会式終了直後に聞こえてないと思って大声で喋ってたこと、オレはよーく覚えてるぜ。


 というわけで先にピッチャーとして対戦することになったのは、4番でエースの前宏田まえひろだ


 プロフィールだと身長188センチ……肩幅も広いんでもっとデカく見える。バッティングもパワフルな感じに見えるけど。


 当たらなければ意味がないんだよなあ!


「うりゃああっ!!」


「また内角高め。何とかのひとつ覚えってか!」


 バシィッ!!


 思いっきり引っ張られた! 打球は三塁線を襲って……。


「ファウル!」


「惜しい。まあでも思った通り、どってことなさそう」


 ボソッと言ってるつもりらしいが自声がデカいのか、マウンドのオレにも聞こえてるぜ。 


 それはともかく、やっぱり一旦切れた気持ちが戻り切ってない。立ち上がりってのもあるが球速は151キロ……これでも十分速いけど、相手はもっと速いの想定してるから。


 どうやってもっと気持ちを奮い立たせるか……そうだ、これならどうかな!


「ボール!」


「何だよ! 外に大きく外して、もう逃げ腰かよ!」

「168キロ左腕って聞いてたのに、評判だおれもいいとこだぜ!」

「前宏田〜! もういいからとっととホームラン打っちまえー!」


 きたきた……観客たちのこういう声が集まって、オレの反骨精神と闘争心に火をつけてくれる。


 お前らに、今すぐ目にもの見せてくれるわ!


「うりゃあああっ!!」


「低め……いや違う!」


 ズバンッ!!


「ス……ストライク! カウント1−2!」


「なんだあれ! ど真ん中なのにバッター手が出ねえ!」

「161キロ……いきなり10キロもアップしたぞ!」


 ふふふ。驚きのリアクションはいつ聞いても気持ちいいねえ。


 そして前宏田の表情からも余裕が消えた。低めに見えたのがノビてど真ん中……それに反応できなかったのだから当然だけど。


 じゃあトドメと行くか。


「うりゃあああっ!!!」


「真ん中……から高めかぁ!」


 ズバンッ!!!


「ストライク! バッターアウト!」


「来たあぁーー! 168キロ!!」

「完全に振り遅れ……ボールが通り過ぎた後にスイングしてたし!」

「スゲーぞオージロウ! 俺は最初から信じてた!」


 やれやれ、いつもの手のひら返しリアクション……でもやっぱり気持ちいい〜!


 そして続く2回もオレはパーフェクトに抑えたのであった。



 バシィッ!!


「いいぞ中地さん! レフト前にナイスバッティング!」


 3回の表、オレたち5校連合チームは早くも相手先発ピッチャー山野井やまのいを攻略しようとしている。


 2回も下位打線にヒットが出たのだが得点に繋がらず……だがこの回は9番と1番が連続ヒットで無死一二塁。


 基本的に見せ球のストレートは捨ててカーブかスライダーのどちらか、各自が打ちやすい方に絞って狙い撃つことにしたのだ。


 山野井の変化球はどっちも素晴らしいけど……オレたちは予選でもっとスゴいボールを投げるヤツらと対戦してきたから、十分対応できる。


「タイム!」


 神香陵学園がたまらずにタイムを取って、ピッチャー交代のようだ。そして新たにマウンドに立ったのはもちろん。


「うわ、さすがに速い!」


 ズバンッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


「よっしゃ! さすが常時100マイル男、前宏田! 急なリリーフでも安定の160キロ!」

「このピンチをビシッと抑えて反撃ののろしを上げろー!」


 自称してた異名は伊達ではなかった。本当にストレートは160キロを連発したのだ。


 しょーたは残念ながら狙いを絞りきれずに三振を喫した。


 さて次はオレの番。ということで左打席に入ると前宏田がなんか言ってきた。


「オージロウ! さっきの打席でやられた分、まずはここで借りを返すわ! 勢いだけでは甲子園で通用せんというのを見せたる!」


 よっぽど悔しかったらしい。オレは黙って受け流してバットを構える。


「ストライク行くぞ! うらああ!」


 ズバンッ!


「ボール!」


 予告と違う……コントロールが悪いのか騙し討ちなのか。ちなみに球速は161キロ。


 というわけでしばし観察に入る。


「ストライク! カウント2−2!」


 結論としてはコントロールがイマイチ。


 実際に打席に立ってみると『適度な荒れ球』というか、なんか全てど真ん中へ投げてるのが勝手に散らばってるような感じがするんだよなあ。


 つまりは予測困難……それが160キロ超というのだから始末が悪い。


 だけどわかったこともある。まずは……。


 ドスッ!


「ボール! カウント3−2!」


 今のはスプリットだが、変化球はどれも並かそれ以下の切れ味でやはりコントロールもイマイチ。悪いがもう見切った。


 そしてまだ制御しやすい方のストレートだが。


「やっぱりこれで仕留めるのが一番! うらああ!」

 

「うりゃあああっ!!」


 バッシィーーンッ!!


 もう打った瞬間に確信した……レフトスタンド中段にミサイルのように飛んで行く打球をしばし見つめる。


「オージロウくん! 歩かないで走る!」


 古池監督から注意だ。まあ高校球児が確信歩きは反感を買うだけなのでとりあえず走り出すけど。


 間もなく塁審がグルグル腕を回すのが見えた。


「うわああーっ! 前宏田の162キロまで打ち返したー!」

「ぎゃああああーっ! 序盤で4点リード許すなんて〜!」


 スタンドからの歓声……悲喜こもごもの叫びが聞こえてくる。


「そんなバカな……俺の自慢の荒々しいストレートが、こうも簡単に」


 悪いが荒れてるのはコントロールだけ。


 球速は確かに速いがオレみたいなノビはほとんど無くて、十分に捉えられる。


 そしてリリースポイントがバラバラ……まあそれが荒れる原因なんだけど。


 今回打った外角低めに行くであろうリリースポイントが分かっていたので振り抜いただけ。まあ、引っ張りきれなかったのはちょっと悔しいけど。


 などと考えている間にホームイン。もちろんこのあとも油断なくいかせてもらうよ。

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